ハイブリッド/パブリッククラウドの時代がいよいよ来ようとしている。ハイパーコンバージドインフラで成長してきたNutanixは、これにどう関わっていくのか。CEOのラジブ・ラマスワミ氏に直接聞いた。
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「HCI(ハイパーコンバージドインフラ)」というジャンルを開拓してきた企業にNutanixがある。2009年の創業以来、同社を率いてきたディーラジ・バンディ氏が2020年に退任、競合するVMware出身のラジブ・ラマスワミ(Rajiv Ramaswami)氏がCEO(最高経営責任者)に就任した。
ハイブリッド/パブリッククラウドの時代を迎えようとしている中、Nutanixはこれにどう関わっていくのか。@ITでは2022年1月、ラマスワミ氏にインタビューし、VMwareやパブリッククラウドとの競合・提携などについて聞いた。今回はその前編をお送りする。
――Nutanixが創業以来、シンプルで使いやすいクラウド基盤を追求してきたことは理解している。その一方で、 ハイブリッドクラウド基盤の構築という点では、VMwareと同じような道をたどってきたという表現もできる。あらためて、NuranixにできてVMwareではできないこととは何か。
ラマスワミ氏 4つの点で差別化をしている。
第1はデータ管理機能だ。 私たちはデータを管理する分散基盤をいち早く作ってきた。 これはとてもユニークだ。構造化/非構造化、あらゆる種類のデータを、 オンプレミスやクラウドに保存し、管理できる。
現在は、その上にマルチクラウド対応のデータベースサービス機能を提供している。これができているのは当社しかない。
第2は、あらゆることをシンプルに行えるということだ。企業向けのIT製品は、非常に複雑なことが多い。当社は「全てワンクリックでできる」ということを信条にしてきた。
私たちには引きずる過去はなかった。最初から、全く新しいソフトウェアによる一体型のプラットフォームを作り上げた。このため、根本的にシンプルに使える基盤になっている。これは私たちにとってのDNAであり、いまではハイブリッド/マルチクラウドプラットフォームに進化した。これを将来にわたって引き継いでいく。
第3は、顧客にとっての自由と柔軟な選択肢にある。さまざまなハードウェアで動作し、複数のパブリッククラウド上でも動く。ハイパーバイザーもVMwareのESXi、当社のAHV、Hyper-V、KVMが選べる。その上にクラウドネイティブなソフトウエア群(コンテナ基盤)を動かせる。 Red Hatとは強力なパートナーシップを結んでいる。
従って、どんなソフトウェア群を使いたいのかを、顧客の側で選ぶことができる。当社はそれを、喜んでサポートする。
一方で、シンプルさや柔軟性にもつながることだが、サブスクリプションライセンスを提供している。単一のサブスクリプションライセンスを、どこにでも適用できる。しかもライセンスは(オンプレミスとクラウドの間などで)完全に移行可能だ。ライセンス期間は1年、3年、5年と、自由に選択できる。
こうした自由度と柔軟性は、とてもユニークだ。
第4は「ネットプロモータースコア(NPS)」(注:顧客ロイヤルティーを計測する指標)の高さにある。現在当社には、2万以上の顧客がいる。また、四半期ごとに約700社増えている。NPSの数値がいいということは、顧客が私たちの製品を使うことで、良い体験ができているということを意味する。
――そうはいっても、昔ながらのVMwareユーザーとパブリッククラウドの双方から挟まれてしまう危険性は常にあるのではないか。
ラマスワミ氏 いい質問だ。だが、いま話したような当社の差別化要因が、GartnerのHCIに関するマジック・クアドラント調査で、5年連続してリーダーに分類されたことにつながっていると思う。
TCO(総所有コスト)にも優れている。2万社以上のうち52〜53%が、当社のハイパーバイザーであるAHVを選択している。これで分かるように、当社は顧客に対して魅力的な選択肢を提供している。
VMwareユーザーにも、まだまだ三層アーキテクチャで運用しているところが多い。 こうしたところに対して、 TCOの高い、シンプルでモダンなソフトウェア定義型のプラットフォームを提案し、運用のサイロを打破する手伝いをしている。
一方、パブリッククラウドについてはどうかということだが、ますます多くの企業がパブリッククラウドを利用し始めている。 そこで当社は、パブリッククラウドをシンプルに使えるようにすることに力を入れている。
顧客は、Amazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azureのアカウントを持ってさえいれば、その物理サーバ上にNutanixのソフトウェアを自分でインストールできる。ライセンスは1つなので、対応するどのパブリッククラウドにも自由に構築できる。使い道は、ITシステムのクラウド移行からディザスタリカバリ、季節的な変動への対応など、大きく広がっている。
当社はパブリッククラウドと共存する。
パブリッククラウドに既存のITシステムを容易に移行できるようにし、新たなITシステムを構築するのも楽にする。また、ますます多くの企業が複数のクラウドを使うようになっている。私たちはプライベートクラウドと複数のクラウドにまたがる基盤となれるようにしている。
――あなたが前任者のパンディ氏から継承していることは何か、変えていこうとしていることは何か。
ラマスワミ氏 ディーラジは、正直かつ謙虚でハングリーな組織文化を根付かせた。また、顧客第一主義に基づくデザインファーストの考え方とシンプルさを当社に植え付けた。こうした点は将来にわたって引き継いでいきたい。
一方、これからは、サブスクリプション化(注:Nutanixはパンディ氏の時代から、ソフトウェアのライセンス形態につき、買い切りからサブスクリプションへの移行を進めている)への道のりを完了し、さらに事業をスケールさせることに焦点を当てていく。これは複雑なビジネスの移行プロセスだが、 かなり進んできた。
現在は、契約更新をとても容易なものにするということに取り組んでいる。 消費者向けのサブスクリプションサービスと同様の容易さを実現したい。買い切りライセンスを購入した顧客の契約更新も、容易にできるようにしたい。
第2に、ハイブリッド/マルチクラウドの基盤企業として、製品ポートフォリオを拡充していきたい。HCIからハイブリッド/マルチクラウドプラットフォームへの進化を引き続き進める。
第3にパートナーシップの強化がある。
過去10年、ニュータニックスはほぼ独りで歩んできたといえる。 しかしあなたが指摘したように、この市場には「巨人」とも言える存在がたくさんいる。その一部は当社と競合するが、協力する企業もいる。
顧客が使いたいのはソリューションだ。ソリューションは、多くの場合、優れた企業が製品を持ち寄って、共同で届けなければならない。また、使いやすくなければならない。
サーバではHPやLenovo、日本企業などとの連携がある。Red Hatとも新たに提携した。 Citrixとのパートナーシップも正式なものになった。AWSやAzureとの連携も引き続き進める。
私たちが顧客に価値を提供し、成長するためには、こうしたパートナーシップが必要だ。
――いま、製品ポートフォリオの強化についての話があったが、どんな機能を考えているのか。
ラマスワミ氏 当社のコアプラットフォームは、リリースごとに進化を続ける。 大企業における企業規模の導入に焦点を当てた機能も投入していく。
最近発表した新機能の1つに、「データレンズ」がある。これは、ハイブリッド/マルチクラウド環境でのデータガバナンスが図れるというものだ。
もう1つの重要な取り組みに、マルチクラウド対応のデータベースサービス、「Nutanix Era」がある。Oracle DatabaseやPostgreSQLといったデータベースエンジンのマルチクラウド環境での導入や運用を、従来よりはるかに簡単にするものだ。
エコシステムも進化する。最新の例で言えば、Red Hatの全レイヤーにわたる製品が、当社のプラットフォームで認定されている。このため、顧客はRed Hatの製品群を、安心してニNutanix上で動かすことができる。
AWSとの連携はしばらく前から続いている。本番で使うユーザーも増えてきた。Azure上での提供についてはプライベートプレビュー段階だが、まもなく正式提供を開始する予定だ。
――パートナーとの連携では、どのようにワンクリックの体験を実現しているのか。
Red Hat の例でいえば、ワンクリックでNutanix基盤上にOpenShiftを導入できるようにすることから始め、関連するツールもワンクリックでの導入を可能にている。
もう1つの例はハイブリッド/マルチクラウドだ。同一のソフトウェア基盤をオンプレミス、AWSのベアメタルサーバ、Azureのベアメタルサーバに容易に導入できる。導入すれば管理も同じ、全ては同一だ。(パブリッククラウド運用のために)人を訓練する必要などない。
ハイブリッド/マルチクラウドは、運用モデルとして考えるべきだ。シンプルで自動化され、アプリケーションを顧客がどこで動かしたいにしても、機動的にできる手法が必要だ。 私たちは運用モデルとしてのハイブリッド/マルチクラウドを推進していく。
(後編に続く)
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