「プライバシー保護連合学習技術」で不正口座の早期検知が可能に NICTらが実証実験で確認検知精度80%以上を達成

NICTは不正送金検知の実証実験を実施し、被害取引の検知精度向上や不正口座の早期検知を確認した。NICTが開発したプライバシー保護連合学習技術「DeepProtect」によって、不正送金の検知精度80%以上を達成した。

» 2022年03月14日 08時00分 公開
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 情報通信研究機構(NICT)は2022年3月10日、不正送金検知の実証実験を実施し、不正送金の被害に遭った取引(被害取引)の検知精度が上がったこと、不正送金に悪用された口座(不正口座)を早期に検知できたことを確認したと発表した。

 実証実験はNICTのサイバーセキュリティ研究所セキュリティ基盤研究室と神戸大学、エルテスが5つの銀行(千葉銀行、三菱UFJ銀行、中国銀行、三井住友信託銀行、伊予銀行)と連携して実施した。

個人を特定できない情報をやりとり

 NICTらは今回の実証実験を行った背景を次のように説明する。

 「最近は金融犯罪手法が複雑化、巧妙化しており、それへの対策の一つとしてAI(人工知能)を用いた不正取引の自動検知システムの導入が検討されている。だが単独の金融機関では十分な量の学習データを用意することが難しく、個人情報を含む金融取引データを金融機関外に持ち出すことができないため、これまでは複数の金融機関が協力して学習させることもできなかった」

 この課題を解決するのが、NICTが開発した「連合学習技術」と暗号技術を組み合わせたプライバシー保護連合学習技術DeepProtectだ。各金融企画で構築した機械学習モデルのパラメーターを「中央サーバ」に集めることで高い精度で不正送金を検知できるという。

画像 被害取引検知のイメージ(提供:NICT

 DeepProtectの特徴は「各金融機関のデータから導き出された統計情報だけを集めること」だ。データそのものは取り扱わないため、そこから個人の情報を識別できなくなっている。NICTらは「こうした仕組みで、機密性の高いデータを外部に開示することなく、複数の組織で連携して多くのデータを基にした機械学習を可能にした」としている。

「個別」と「連合」の組み合わせで検知精度向上

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