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» 2022年03月31日 05時00分 公開

「私たちのことを話題にし続けて」 ウクライナのエンジニアが今、日本の皆さんに伝えたいことGo AbekawaのGo Global!〜緊急特別編(1/3 ページ)

ウクライナのキエフでIT企業を営み、自身もITエンジニアであるCyril Samovskiy(キリル・サモフスキー)さん。爆破された空港を避け、渋滞する避難の車列を離れ、南へと向かったキリルさん一家は今どこで何をしているのか。キリルさんから日本の皆さんへのメッセージ動画付き。

[取材・文:阿部川久広(Go Abekawa), 構成:鈴木麻紀、中村篤志,@IT]

 国境を越えて活躍するエンジニアにお話を伺う「Go Global!」シリーズ。今回は、2020年にもお話を伺ったウクライナの起業家Cyril Samovskiy(キリル・サモフスキー)さんに緊急インタビューを行った。ウクライナの現状は、キリルさんや会社のメンバーの安否は、そしてキリルさんたちが日本のみんなにしてもらいたいこととは――。

 聞き手は、アップルやディズニーなどの外資系企業でマーケティングを担当し、グローバルでのビジネス展開に深い知見を持つ阿部川“Go”久広。

空港は爆破 家族と犬を連れて命からがらのキエフ脱出

阿部川“Go”久広(以降、阿部川) キリルさん! お元気ですか?

Cyril Samovskiy(キリル・サモフスキー、以降キリルさん) 正直、今はその質問にどう答えればいいやら……。私は悪夢から何とか逃れていますが、キエフ(ウクライナ語で“キーウ”)では早朝から深夜まで、ニュースでご存じのような恐ろしい事態から人々が逃れられない状況が続いています。それもこれも全て人生で初めてのことばかりなので、単なるあいさつにすらどう答えたらいいのか迷ってしまう状況です。

画像 大変お疲れの様子でしたが、インタビューに答えてくれました

阿部川 戦禍のさなか、お時間をいただきありがとうございます。今現在どこにいらっしゃるのですか。

キリルさん 今はスロバキアの首都、ブラチスラバにいます。初めからここに来ようと思っていた訳ではなく、「たどり着いた」といったところです。親類縁者や友人もここにはいません。

 いつキエフに戻れるのかは全く分かりませんし、3人の子どものうち2人は学校に通っている年齢ですから、もしこの戦争が数カ月にわたって続くことになれば、今後の暮らしをどうしていくかを考えなければなりません。スロバキアの方々はとても親切にしてくれますし、素晴らしい土地です。長くここにとどまるとすると、スロバキア語なども学ばないといけないと思っています。

阿部川 いつ、スロバキアに移動なさったのですか。

キリルさん 2022年2月24日です。早朝に妻の弟から「ロシアの攻撃で戦争が始まったから、すぐ逃げよう」と電話がかかってきました。キエフ近郊のヴァスィリキーウ空港は既に爆撃で使えなくなっており、すぐにでもまた爆撃機が街に飛んでくるかもしれない状況でしたから、急いで妻と子どもたちと犬を連れて逃げ出しました。

 車で市街へと抜けようとしましたが、40万人以上の人々が同じことを考えていたので渋滞で身動きが取れません。たくさんの車が道路で立ち往生していて、これではロシア爆撃機の絶好の標的になると思ったので、南に進路を変えました。

 ありがたいことに燃費の良い車に乗っていたので、ガソリンスタンドに寄る必要はありませんでした。多くの人は満タンにして走ろうとしていたので、ガソリンスタンドにも車が群がっていました。キエフ東南のチェルカッスイにいる親戚と連絡を取り合い、空いている家に身を寄せました。

 3日ほどそこに滞在しましたが、避暑地用の施設だったので暖房がありませんでした。私たち家族はコートを着たりフードをかぶったり毛布にくるまったりしてお互いを温め合いましたが、一番下の子はまだ1歳ですし、他の子供たちも少し体調が悪くなってきました。爆撃が近くまで迫ってきていたこともあり、国境を越えないといけないと思いました。

 越境のための法的な手続きは詳しく知りませんでしたが、私が1人で国境を越えたいと申し出てもダメだったようです。どうやら戦時下での特別な措置があり、3人の子どもの父親であったことが幸いして、国境を越えられました。

 600キロ程度の道のりですが、時速100キロで走るわけにはいきません。さらに随所に検問所があって、その度に時間を取られました。2日間かけてようやくハンガリーの国境までたどり着き、スロバキアまで来ました。

 今は道路も全て破壊されて原野を通過しなくてはならず、1時間で5キロ程度の移動がせいぜいです。ですから状況はさらに悪いでしょう(インタビューは2022年3月24日に実施)。ウクライナ国内で一応は安全な場所にいる人もいれば、キエフを離れたのにさらに危険な地域にいることを余儀なくされている人もいると思います。

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