「私たちのことを話題にし続けて」 ウクライナのエンジニアが今、日本の皆さんに伝えたいことGo AbekawaのGo Global!〜緊急特別編(3/3 ページ)

» 2022年03月31日 05時00分 公開
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私たちのことを忘れずに、話題にし続けてください

キリルさん ウクライナ政府は、世界への広報活動を通じて、素晴らしい支援を私たちにしてくれていると思います。

 スロバキアではYouTubeで「ロシア」と検索すると、膨大なプロパガンダ動画が出てきます。ずっと前にロシアを出てきてロシア語以外が話せない人々は、この動画を見ます。動画は(ウクライナ侵攻は)キエフの人々のために行ったと言っています。キエフでナチスによる占拠が行われているので、そこから人々を救うのが今回の侵攻だと。お互いがお互いを、誤解から憎んで殺し合っているのです。

 ウクライナから遠く離れた世界の人々の方がむしろ、ここで何が起こっているかを十分理解しています。ウクライナは被害者であり、ウクライナが仕掛けた戦争ではない、と。そのような人々の言葉やスピーチが世界に広がること、1人が5ドルを私たちに届けてくれること、これらの全てが私たちにとってかけがえのない支援です。国際社会によるサポートがなければ、私たちは降伏するしかなくなります。ウクライナの軍隊は英雄ですが、武器や義援金がなければ活動を続けられません。

阿部川 日本時間の昨晩(2022年3月23日)、ゼレンスキー大統領が日本政府と国会議員に対してオンラインでスピーチをし、日本政府のロシアに対する措置を高く評価するとともに、日本の対応に謝意を表してくれました。日本は引き続き、ウクライナへの支援を続ける意向だと思いますし、私個人はそのことを誇りに思っています。

 ここからは日本の読者に対して、メッセージをいただけますか。

キリルさん やってみます。日本語はまだまだ下手なのですが(笑)。

 (日本語で)こんにちは! 私は、キリル・サモフスキーです。ウクライナでITビジネスを、世界中の顧客に向けて営んでいます。2年前に日本に向けたビジネスを開始し、現在は売り上げの10%を占めています。

 ビジネスの面でも、そして文化的な面でも日本の方々から多くを学びました。またこの混迷した戦争状態の中で、日本がウクライナに対して多くのサポートをしてくれていることも理解しています。全てのウクライナ人を代表して、またこの戦渦によって恐れ、悲しみ、死者を目の当たりにしている全ての人々を代表して、日本の方々に心からのお礼を申し上げます。日本がアジアで、また多くの世界の大国に対して、積極的な対応を促してくれているリーダーシップにも心から感謝します。

 その人道的な、また経済的な援助やサポートに対して、日本の方々に、そして私どものクライアントにもお礼を申し上げます。この暗黒の時間が過ぎましたら、必ず恩返しをしたいと思っています。日本の方々の真摯(しんし)なご対応を決して忘れません。ありがとうございます。(日本語で)ありがとう。数週間、あるいは数カ月後には、祖国を守り再建していけると信じています。そして友人である皆さんにお会いしたいと思います。

阿部川 ありがとうございます。どうぞお気持ちをしっかりとお持ちください。

キリルさん 私は明るい未来を信じています。戦争はじきに終わると思いますし、永遠に続く安全がウクライナに訪れることを願っています。戦車なんかに屈することはありません。この戦争は終わらないといけませんし、祖国を守らなければなりません。これは単なる地域紛争ではなく、もっと大きなものです。必ず終わらせないといけないものです。

阿部川 これは世界的な問題ですし、私たちの問題でもあると思います。いつもウクライナのことを思っております。私たちにできることがあればどうぞお知らせください。

キリルさん 日本はいつも私たちと一緒にいてくれます。あなたもいつも一緒にいてくれています。感謝しています。どうぞ私たちのことを忘れずに、話題にし続けてください。それがとても重要です。この数週間、ウクライナのニュースが少なくなっているように思います。人々は毎日亡くなっています。どうぞこの戦争のことを語り、話題にして、社会に知らせてください。

インタビューを終えて 〜Go’s thinking aloud〜

 一見元気そうで安心はしたが、随所で見せる表情にかげりが見てとれた。無論、肉体的というよりも、精神的な疲弊だ。

 一体何ができるのだろうとためらう私に、「私たちのことを話題にし続けてほしい」と答えてくれた。ためらった末に何もアクションができないのは愚の骨頂だが、少なくとも思い続けることも意味があると教えられた。また大きな声でなくとも、語り続けることも恐らく意味があり、そのために私はここにいる。ウクライナのIT企業経営者の苦境と、その矜恃(きょうじ)と、日本への感謝の気持ちが伝えられれば、まずは第一関門通過か。では第二関門は、どうする。

阿部川久広(Hisahiro Go Abekawa)

アイティメディア 事業開発局 グローバルビジネス戦略室、情報経営イノベーション専門職大学(iU)教授、インタビュアー、作家、翻訳家

コンサルタントを経て、アップル、ディズニーなどでマーケティングの要職を歴任。大学在学時から通訳、翻訳も行い、CNNニュースキャスターを2年間務めた。現在情報経営イノベーション専門職大学教授も兼務。神戸大学経営学部非常勤講師、立教大学大学院MBAコース非常勤講師、フェローアカデミー翻訳学校講師。英語やコミュニケーション、プレゼンテーションのトレーナーとして講座、講演を行う他、作家、翻訳家としても活躍中。

編集部から

「Go Global!」では、GO阿部川と対談してくださるエンジニアを募集しています。国境を越えて活躍するエンジニア(35歳まで)、グローバル企業のCEOやCTOなど、ぜひご一報ください。取材の確約はいたしかねますが、インタビュー候補として検討させていただきます。取材はオンライン、英語もしくは日本語で行います。

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