Cloudflareとオープンソースコミュニティー、W3Cの新コミュニティーグループ「WinterCG」を共同で創設ブラウザ以外のJavaScript環境の標準化を目指す

CDN大手のCloudflareはVercel、Shopify、オープンソースプロジェクトの「Node.js」と「Deno」それぞれの主要コントリビューターと共同で、W3Cの新しいコミュニティーグループ「Web-interoperable Runtimes Community Group」(Web相互運用性JavaScriptランタイムコミュニティーグループ:WinterCG)を創設した。

» 2022年05月27日 15時00分 公開
[@IT]

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 CDN(Content Delivery Network)大手のCloudflareは2022年5月9日(米国時間)、Vercel、Shopify、オープンソースプロジェクトの「Node.js」と「Deno」それぞれの主要コントリビューターと共同で、Web技術の標準化団体W3C(World Wide Web Consortium)の新しいコミュニティーグループ「Web-interoperable Runtimes Community Group」(Web相互運用性JavaScriptランタイムコミュニティーグループ:WinterCG)を創設したと発表した。

 Cloudflareはサーバレスプラットフォーム「Cloudflare Workers」を手掛けており、Node.jsはサーバサイドJavaScript実行環境、DenoはJavaScriptとTypeScriptのランタイム環境だ。Cloudflareはプレスリリースでこれらを「3大JavaScript環境」と呼び、WinterCGの活動がこれらの環境の統合につながり、未来のエッジコンピューティングの標準を作ること、そして開発者に柔軟性と選択肢を提供することが可能になると述べている。

既存のW3Cコミュニティーグループとの違い

 W3CサイトのWinterCGのページによると、WinterCGは、Webのプラットフォーム機能やAPIの開発に焦点を当てた既存のコミュニティーグループやワーキンググループの活動を、非Webブラウザベース実装の特定のニーズに焦点を当てることで、補強することを目指している。

 「Web Incubator Community Group」(WICG)や「Web Hypertext Application Technology Working Group」(WHATWG)といった既存のコミュニティーグループは、いずれも「ブラウザまたは同様のユーザーエージェントで実装される」機能を明確に対象としている。

 だが、WinterCGは、バックエンドサーバ、サーバレスコンピュート、IoT、コマンドラインツールといった環境(基本的に、ブラウザ以外の全て)における同じ機能の実装に焦点を当てるという。

 Cloudflareはブログ記事で、「こうした既存グループは、開発環境としてのWebの標準化されたAPIと機能を、長い間先頭に立って開発してきた。だが、設立目的に従って、Webブラウザの特定のニーズのみを考慮してきた。そのため、これらのグループが開発した標準に準拠すると、Webブラウザと同様でない環境への最適化は容易なことではない」と説明。こうした影響を示す一例として、Streams標準の非ブラウザ実装の一部が、同等のNode.jsストリームやDenoリーダーの実装と比べて格段に低速であることを挙げ、その主な原因は、この標準のAPI仕様にあると述べている。

 さらにCloudflareは、次のように説明している。「Cloudflare Workersのようなサーバレス環境、あるいはNode.jsやDenoのようなランタイムには、Webブラウザとは無関係な幅広い要件、問題、懸念事項があり、その逆も同様だ。この食い違いのため、そしてさまざまな仕様の開発時にこれらの違いが明確に考慮されなかった。そのため、非ブラウザのランタイムに、実際には多様な環境で共通する機能が、独自のカスタムソリューションとして実装されるに至っている」

Webブラウザ以外のJavaScriptベース開発環境にフォーカス

 WinterCGは、Webブラウザ以外のJavaScriptベース開発環境における標準APIの相互運用可能な実装に焦点を当てる。さらに、スタック全体の任意の場所にデプロイされる全てのWeb環境の共通要件について議論および推奨する場を提供することで、この状況を変えようとしている。

 ただし、WinterCGが単独で標準化を進めるわけではない。WinterCGで生まれた新しい仕様のアイデアは、まずW3CとWHATWGの既存の枠組みで検討され、できるだけ広範な意見の一致が図られる。

 だが、他の環境(Cloudflare Workersなど)で必要な機能がWebブラウザでは特に必要でない、あるいは無関係であることが明らかになった場合、WinterCGは独自の仕様を推進できる。この仕様には、「確立されたWeb標準と意図的に衝突するものや、互換性がないものは導入しない」という制約が課される。

 WinterCGは既に、最小限の共通API、Web暗号化ストリーム、サーバ用fetch()のサブセットに取り組み始めているという。

開発者にとってのメリット

 Cloufflareは、WinterCGの活動によって、非ブラウザ環境を考慮したWeb標準の策定が進めば、開発者はCloudflare Workers、Deno、Node.jsを使って、標準セットに準拠したコードを書いて実行し、これらの間で簡単かつシームレスに移行できるようになり、アプリケーションを書き直す必要がなくなると述べている。

 さらに、Web API標準によって、開発者は以下のことが可能になると説明している。

作業に最適なツールやフレームワークの使用

 コミュニティーから提供されるツールや統合機能をさまざまなランタイムにわたって簡単に利用でき、作業に最適なツールが使える。

サーバ側のコードを書くための統一アプローチの実現

 プラットフォーム特有の微妙な違いがなくなり、さまざまなプラットフォームを学ばずに済むようになる。このため、開発者は機能に集中し、より良いコードを提供しやすくなる。

技術ニーズの変化に応じたアプリケーションの移行

 アプリケーションのニーズが時間とともに進化、変化しても、コードを大規模に書き換えたり、ベンダーを増やしたり、切り替えたりする必要がない。

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