コロナ禍で顧客からの問い合わせに対応するコンタクトセンターの重要度が増している。そこで活躍しているのが、パブリッククラウドを利用した新型のコンタクトセンターだ。素早く構築できるのか、料金はどうか、音声の品質に満足できるのか、他のクラウドサービスとの連携は容易なのか、テレワークに適しているのか。「Amazon Connect」や「Genesys Cloud CX」の導入事例を分析した。
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オムニチャネル化、リアルタイムな音声認識とAI解析など、顧客からの問い合わせをサポートするコンタクトセンターの技術進歩はすさまじい。クラウド化のトレンドはコンタクトセンターでも例外ではなく、その機動性の高さと豊富な機能は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)下での在宅コミュニケーター実現にも適している。
リアルな対面による取引からネット上での取引への移行は、コロナ禍以前から進んでいたが、コロナ禍は電子商取引(EC)への移行をさらに加速させた。そしてECが多くなるほど、唯一の顧客接点であるコンタクトセンターの重要性が高まっている。
コンタクトセンター自体の在り方は変化しつつある。コロナ禍対策で「密」を避けながら、人材を確保する手段として「在宅コミュニケーター」が注目されている。今回はクラウド型コンタクトセンターの代表格である「Amazon Connect」と「Genesys Cloud CX」を取り上げ、クラウド型コンタクトセンターの実力がどこまで来ているのか、明らかにする。
筆者は特に在宅コミュニケーターに関心がある。クラウド型コンタクトセンターによる在宅コミュニケーターは、音質に対する要求が高い日本人に受け入れられるだけの品質を満たしているのだろうか。この点にも注目したい。
Amazon ConnectはAmazon Web Services(AWS)が提供するクラウド型コンタクトセンターだ。図1に示すように極めてシンプルな構成で、コンタクトセンターの基盤だけでなく電話回線もクラウドで提供されるため、ネットにつながったPCとマイク付きヘッドセットがあればコンタクトセンターを始められる。
ACD(Automatic Call Distribution):着信呼自動分配システム。オペレーターの待機時間の長さ、スキルなどによって優先順位を付けて着信をオペレーターに分配する
CTI(Computer Telephony Integration):電話システムとコンピュータシステム(業務システム)の統合
WebRTC(Web Real-Time Communication):電話、ビデオ会議などのリアルタイム通信で使用するWebブラウザの機能
IVR(Interactive Voice Response):自動音声応答システム。用意された音声メッセージによる自動応答、プッシュされた番号による受電の振り分けなど
Amazon Connectで提供される電話番号は図1にある通り、050/03、フリーダイヤル0120/0800だ。03は住所が東京にあることが条件になる。IVRやACDといったコンタクトセンターの主要機能を備えているだけでなく、音声通話とチャットをシームレスに使えるオムニチャネルも可能だ。
コミュニケーターのPCに必要なのはWebブラウザだけで、ソフトウェアのインストールは必要ない。サポートされているWebブラウザは「Google Chrome」と「Mozilla Firefox」だ。「Microsoft Edge」やモバイルブラウザは使えない。
PCが1台あればコンタクトセンターを始められるというものの、導入や運用の実際はどうなのだろうか。日本事務器(本社:東京都、社員数《NJCグループ》1238人《2021年3月期》、ITソリューションサービス事業)は、2021年からAmazon Connectと「Salesforce」を連携させた、先進的なオムニチャネル・コンタクトセンターを運用している(図2)。
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