2022年6月30日から、Azure ADでパスワードレス認証をユーザー自身でセットアップ可能にする「一時アクセスパス」が一般提供されました。これは、従来のAzure AD多要素認証のセットアップとは別の新しい方法であり、Azure AD参加デバイスのセットアップ時やパスワードレス認証方法の回復にも使用できます。
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「Azure Active Directory(Azure AD)」で新たに利用可能になった「一時アクセスパス(Temporary Access Pass、TAP)」は、Azure ADの管理者が組織の新規ユーザーや既存ユーザーに割り当てることができる、有効期限(既定は1時間)付きの一時パスワードです。
ユーザーは割り当てられたTAPを期限内に使用して、AzureポータルまたはAzure AD参加中のWindowsデバイスにサインインし、FIDO2セキュリティキーやMicrosoft Authenticatorアプリ、「Windows Hello for Business」など、パスワードレス認証方法のセットアップを開始し、完了することができます。
つまり、「一度もパスワードを入力することなく、強力な認証方法を利用できる」ということです。ユーザーが既存のパスワードレス認証方法を紛失したり、忘れたりした場合でも、管理者がもう一度TAPを割り当てることで、これらの認証方法を回復することができます。
Azure ADでTAPを利用可能にするには、まず「TAP認証方法ポリシー」を有効化する必要があります。それには、Azure ADポータル(https://aad.portal.azure.com/)に管理者としてサインインし、「セキュリティ」の「認証方法」にある「認証方法」ブレードを開きます。
「認証方法|ポリシー」が開くので、「一時アクセスパス」をクリックして全てのユーザー、または特定したユーザーやグループに対して有効にします(画面1)。「Configure(構成)」タブに切り替えると、有効期間やTAPの長さのポリシーを詳細に変更できます。
管理者は、TAPを割り当てたいユーザーのブレードを開き、「認証方法」を開いて「+認証方法の追加」をクリックします。認証方法として「一時アクセスパス」を選択し、「追加」をクリックすると、TAPと有効期限が表示されるので、TAPを控えてそれをユーザーに伝えます(画面2)。
ユーザーは以下のURLをWebブラウザで開き「自分のサインイン」ポータルにアクセスして、自分のAzure ADユーザーIDとTAPを使用してサインインします。その後、Azure ADの組織で利用可能なパスワードレス認証方法を選択してセットアップします(画面3)。
Windows 10/11をセットアップ中にAzure AD参加を行う場合は、Azure ADの組織アカウントのIDを入力すると、TAPの入力が要求されるので(TAPが割り当てられている場合)、TAPを使用してサインインし、その後、Windows Hello for Businessのセットアップに進みます(画面4)。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP 2009 to 2022(Cloud and Datacenter Management)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
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