長らくWindows OSに標準装備されてきたInternet Explorer(IE)。その「寿命」は各種サポートの終了時期に左右される。Windows OSごとにIEのサポート終了時期を分かりやすく図示しつつ、見えてきた「終わり」について解説する。
この記事は会員限定です。会員登録(無料)すると全てご覧いただけます。
これまでのWindows OSには、Webブラウザとして「Internet Explorer(IE)」が標準でインストールされてきた。そして、ユーザーが直接使うWebブラウザに限らず、さまざまなアプリケーションがHTMLファイルなどを表示する際のコンポーネントとしても、IEはよく利用されてきた。
そのIEの「寿命」が(一部を除いて)もうすぐ尽きようとしていることはご存じだろうか? 過去にWindows XPやWindows 7でよく話題に上った「サポート終了時期」が、IEにもやって来るのだ。
本Tech TIPSでは、Windows OSごとに、サポートされているIEのバージョンおよびその終了時期が一目で分かるように図で表してみた。さらにネットサービスによるIEサポート終了の動きや、IEから他のWebブラウザへの移行に関する記事などもまとめている。IEからの「脱出」計画に役立てば幸いだ。
Windows 10 HomeやPro、Pro Education、Pro for WorkstationのIEサポート終了時期は以下の通りだ。
上図の緑色のバー(横棒)は、IEの開発および提供元であるMicrosoftによって定められているライフサイクル上のサポート期間を表す。
OS | IE | サポート終了日 |
---|---|---|
Windows 10 バージョン1507 | IE11 | 2017年5月9日 |
Windows 10 バージョン1511 | IE11 | 2017年10月10日 |
Windows 10 バージョン1607 | IE11 | 2018年4月10日 |
Windows 10 バージョン1703 | IE11 | 2018年10月9日 |
Windows 10 バージョン1709 | IE11 | 2019年4月9日 |
Windows 10 バージョン1803 | IE11 | 2019年11月12日 |
Windows 10 バージョン1809 | IE11 | 2020年11月10日 |
Windows 10 バージョン1903 | IE11 | 2020年12月8日 |
Windows 10 バージョン1909 | IE11 | 2021年5月11日 |
Windows 10 バージョン2004 | IE11 | 2021年12月14日 |
Windows 10 バージョン20H2 | IE11(ブラウザとしてのIE) | 2022年5月10日 |
Windows 10 バージョン20H2 | IEモード | 2022年5月10日 |
Windows 10 バージョン21H1 | IE11(ブラウザとしてのIE) | 2022年6月15日 |
Windows 10 バージョン21H1 | IEモード | 2022年12月13日 |
Windows 10 バージョン21H2 | IE11(ブラウザとしてのIE) | 2022年6月15日 |
Windows 10 バージョン21H2 | IEモード | 2023年6月13日 |
Windows 10 Home/ProのIEサポート終了日 |
上記の図や表の「ブラウザとしてのIE」は、単体で動作するWebブラウザアプリとしてのIE11を指している。そのサポートは2022年6月15日に終了する(以前は2025年10月終了だったのが前倒しされた)。
それ以後は、ブラウザとしてのIEの起動ができなくなる。IEの実行ファイルである「iexplore.exe」を実行しても、代わりにMicrosoft Edgeが自動的に起動するようになる、とのことだ。「サポートが終わってもこっそり使えるから大丈夫」ということは通用しない。これは重々踏まえておく必要がある。
上記の図や表の「IEモード」は、Microsoft Edge内でIE専用ページを表示可能にする機能だ(詳細は後述)。ブラウザとしてのIE11のサポートが終わった後も、IEモードのサポートは継続する。IE専用ページを利用できるようにする、いわば救済策の本命といえる機能だ。
この他、「MSHTMLエンジン」「Trident」「IEコンポーネント」と呼ばれる、IEでWebページの描画などを担うソフトウェアパーツについても、IEモードと同様、Windows OSのサポート終了までサポートが継続される。
Windows 10 Enterprise/EducationのIEサポート終了時期は以下の通りだ。Enterpriseエディションについては、「半期チャネル(SAC: Semi-Annual Channel)」を対象としている(Enterprise LTSB/LTSCについては後述)。
OS | IE | サポート終了日 |
---|---|---|
Windows 10 バージョン1507 | IE11 | 2017年5月9日 |
Windows 10 バージョン1511 | IE11 | 2017年10月10日 |
Windows 10 バージョン1607 | IE11 | 2019年4月9日 |
Windows 10 バージョン1703 | IE11 | 2019年10月8日 |
Windows 10 バージョン1709 | IE11 | 2020年10月13日 |
Windows 10 バージョン1803 | IE11 | 2021年5月11日 |
Windows 10 バージョン1809 | IE11 | 2021年5月11日 |
Windows 10 バージョン1903 | IE11 | 2020年12月8日 |
Windows 10 バージョン1909 | IE11 | 2022年5月10日 |
Windows 10 バージョン2004 | IE11 | 2021年12月14日 |
Windows 10 バージョン20H2 | IE11(ブラウザとしてのIE) | 2022年6月15日 |
Windows 10 バージョン20H2 | IEモード | 2023年5月9日 |
Windows 10 バージョン21H1 | IE11(ブラウザとしてのIE) | 2022年6月15日 |
Windows 10 バージョン21H1 | IEモード | 2022年12月13日 |
Windows 10 バージョン21H2 | IE11(ブラウザとしてのIE) | 2022年6月15日 |
Windows 10 バージョン21H2 | IEモード | 2024年6月11日 |
Windows 10 Enterprise/EducationのIEサポート終了日 |
前述のHome/Proエディションと同様、Windows 10 Enterprise/Educationでも「ブラウザとしてのIE」と「IEモード」でサポート終了期限が異なる。「ブラウザとしてのIE」は、遅くとも2022年6月15日にはサポートが終了する。
Windows 10 Enterpriseのうち、「LTSB」「LTSC」(Long-Term Servicing Branch/Channel)と呼ばれる長期サポート版でのIEサポート終了時期は以下の通りだ。
OS | IE | サポート終了日 |
---|---|---|
Windows 10 Enterprise 2015 LTSB | IE11 | 2025年10月14日 |
Windows 10 Enterprise 2016 LTSB | IE11 | 2026年10月13日 |
Windows 10 Enterprise LTSC 2019 | IE11 | 2029年1月9日 |
Windows 10 Enterprise LTSC 2021 | IE11 | 2027年1月12日 |
Windows 10 Enterprise LTSB/LTSBのIEサポート終了日 |
Enterprise LTSB/LTSCの場合、「ブラウザとしてのIE」「IEモード」ともにWindows OSのサポート終了までサポートが継続される。
2021年10月にリリースされた「Windows 11」では、既に「ブラウザとしてのIE」が利用できなくなっている。[スタート]メニューなどにIEのショートカットは登録されておらず、IEの実行ファイルである「iexplore.exe」を実行しても、代わりにMicrosoft Edgeが起動してしまう。
一方、IEモードについてはWindows 10と同様に利用できる。サポート期限もWindows OS本体と同じで、2022年6月15日以降も利用できる。
2022年6月15日以前でも、Windows 10からWindows 11へアップグレードしたり、Windows 11プリインストールPCにリプレースしたりすると、その時点でブラウザとしてのIEが使えなくなるので注意が必要だ(細工をすれば実行できなくもないが)。何らかの理由からWebブラウザとしてのIEが必要な場合は、Windows 11へのアップグレードは行わない方がよいだろう。
Windows 8以前はOS自体のサポートが終了しており、IEもサポートが終わっている。Windows 8.1については、OS本体と同じく2023年1月10日でIEのサポートが終了する。
OS | IE | サポート終了日 |
---|---|---|
Windows 2000 Professional | IE5 | 2010年7月13日 |
Windows 2000 Professional | IE5.5 | 2005年12月31日 |
Windows 2000 Professional | IE6 | 2010年7月13日 |
Windows XP | IE6/IE7/IE8 | 2014年4月8日 |
Windows Vista | IE7/IE8 | 2016年1月12日 |
Windows Vista | IE9 | 2017年4月11日 |
Windows 7 | IE8/IE9/IE10 | 2016年1月12日 |
Windows 7 | IIE11 | 2020年1月14日 |
Windows 8 | IE10 | 2016年1月12日 |
Windows 8.1 | IE11 | 2023年1月10日 |
Windows 2000/XP/Vista/7/8/8.1のIEサポート終了日 |
Windows ServerのIEサポート終了時期は以下の通りだ。
OS | IE | サポート終了日 |
---|---|---|
Windows 2000 Server | IE5 | 2010年7月13日 |
Windows 2000 Server | IE5.5 | 2005年12月31日 |
Windows 2000 Server | IE6 | 2010年7月13日 |
Windows Server 2003 | IE6/IE7/IE8 | 2015年7月14日 |
Windows Server 2008 | IE7/IE8 | 2016年1月12日 |
Windows Server 2008 | IE9 | 2020年1月14日 |
Windows Server 2008 R2 | IE8/IE9/IE10 | 2016年1月12日 |
Windows Server 2008 R2 | IE11 | 2020年1月14日 |
Windows Server 2012 | IE10 | 2020年1月31日 |
Windows Server 2012 | IE11 | 2023年10月10日 |
Windows Server 2012 R2 | IE11 | 2023年10月10日 |
Windows Server 2016 | IE11 | 2027年1月12日 |
Windows Server 2019 | IE11 | 2029年1月9日 |
Windows Server, version 1809 | IE11 | 2020年11月10日 |
Windows Server, version 1903 | IE11 | 2020年12月8日 |
Windows Server, version 1909 | IE11 | 2021年5月11日 |
Windows Server, version 2004 | IE11 | 2021年12月14日 |
Windows Server, version 20H2 | IE11 | 2022年8月11日 |
Windows Server 2022 | IE11 | 2031年10月14日 |
Windows ServerのIEサポート終了日 |
前述の通り、市場の大部分を占めるWindows 10 Home/Proでは、2022年6月15日で「ブラウザとしてのIE」が実質的に使えなくなる。だが、それより前に「インターネットブラウザ」としてのIEの実質的な寿命は尽きようとしている。
例えばWeb版Twitterは、IEを全くサポートしておらず、IEで開こうとすると、自動的にMicrosoft Edgeで表示されてしまう。同様にGmailやDropbox、Apple、Instagram、YouTubeといった著名なサイトも、Microsoft Edgeへ自動的に転送され、IEでは全く利用できない。
IEを開発してきたMicrosoft自身が同社のネットサービス「Microsoft 365(Office 365)」で、IEのサポートを2021年8月17日に終了済みである。
Microsoft以外のネットサービス事業者からすれば、「開発元のMicrosoftが自身のネットサービスでIEのサポートを止めようとしている」「さらに他社にもIEからMicrosoft Edgeへの移行を支援している」「こうした理由から、弊社のサービスでもIEのサポート継続は難しい」といった理由を主張しやすい状況でもある。
CMS(コンテンツ管理システム)として大きなシェアを占める「WordPress」も、2021年7月リリースのVer.5.8で、IEのサポートを終了した。そのため、WordPressで構築されているWebサイトでも、IEでの閲覧をサポートしない(動作を保証しない)傾向が強まっているようだ。
以上のように、2022年6月よりもっと前にIEのサポートを終了させる動きが増えている。なぜ、このように急がれているのだろうか?
Google ChromeやMicrosoft Edge、Mozilla Firefoxといった主流のWebブラウザ(モダンブラウザとも呼ばれる)は、自動アップデート機能を備えている。そのため、エンドユーザーは新たに追加されたWebの機能や技術を速やかに利用できる。ネットサービス事業者は、こうしたWebブラウザの最新機能を活用して、より短い期間で新機能を追加したり、全く新しいサービスを開発したりしている。
一方、IEは新機能の追加が停止されて久しく、前出の主流Webブラウザと比べると著しく機能が不足している状態だ。結果として、主流Webブラウザと同様にIEをネットサービスに対応させようとすると、IEに足りない機能を独自に実装したり、IEでも実行可能な古い手法で実装するように変更したり、といった作業に多大な手間がかかる。
手間はコストに跳ね返るので、IE対応を続ける場合、ネットサービス事業者はその分のコストをユーザーの利用料金や広告収入などから賄う必要がある。つまり、IE対応はサービスの無償提供をより難しくさせるし、フリーミアムモデルの無償範囲を狭めるデメリットがある。そのため、多くのネットサービス事業者にとって、できることならIE対応は止めたいのが本音だろう。
それでも、IEのユーザーが多ければ、IEに対応するメリットはあった。しかし、最近ではIEのシェアは大幅に下がっている(特に海外では顕著だ)。加えて、前述のようにMicrosoft自身もIE対応を止めるのであれば、それを機にもっと多くのネットサービス事業者がIE対応を止めてしまう可能性は高いだろう。
以上のように、IEをまだ使っているユーザーは急いでサポート終了の対策をする必要がある。どうすればよいのか?
他のWebブラウザでも利用できるページやアプリ、サービスばかりなら、前出の主流Webブラウザのいずれかに移行しよう。
もちろん、他のWebブラウザへの移行は面倒であるし、慣れ親しんだIEと比べて使い勝手は変わる。だが、主流WebブラウザならIEからブックマークなどを移行する機能は標準装備しており、その作業は難しくない。また、使い方やノウハウを解説する記事などもインターネット上にたくさんある。主流Webブラウザのユーザー数も増えていて、質問できそうなユーザーが身近にいる可能性も高くなってきている。そのため、使い方が分からなくても、たいていはすぐに解決策を見つけられるだろう。
Windows 10の場合、移行先として最も手軽なのはMicrosoft Edgeだろう。最新の更新プログラムを適用しているなら既にインストール済みで、すぐ使えるからだ。
最もシェアの大きいGoogle Chromeに移行するなら、以下の記事集を参考にしていただきたい。
企業内システムにIEでしか利用できないWebアプリが残っている、あるいは行政機関などのIE専用サービスを使わざるを得ない(原稿執筆時点においても、地方自治体の入札システムなどに、IEでのアクセスが必須になっているところが多い)、といった場合は、移行先候補の筆頭にMicrosoft Edgeが挙げられるだろう。
これは先に触れた「IEモード」という、Microsoft Edge内でIE専用ページを表示する機能が標準かつ無償で利用できるからだ。IEモードでは、IE専用ページ/アプリのURLを事前にリストアップして登録することで、エンドユーザーがそれらをMicrosoft Edgeで開いたとき、自動的にIEモード(MSHTMLエンジン)で開くように設定できる。
IEモードを利用したMicrosoft Edgeへの移行については、まずMicrosoftの「Internet Explorer から Microsoft Edge への移行ガイドライン」を一読するとよいだろう。
IEモードそのものについては、Microsoft Docsの「Internet Explorer (IE) モードとは」の他、以下の記事も参考にしていただきたい。
■関連リンク
■この記事と関連性の高い別の記事
■更新履歴
【2022/01/19】Windows 11のリリース後の情報を反映しました。
【2021/06/30】IEモードやMSHTMLエンジンのサポート期限、およびWindows 11の関する解説を追加しつつ、全面的に改定しました。
【2021/05/21】サポート終了スケジュールの図表で、Windows 10(LTSB/LTSC以外)のIEサポート終了日が2022年6月に前倒しされたことを反映しました。
【2021/05/19】IEからEdgeへの自動転送について追記しました。
【2020/08/26】Microsoft 365でのIEのサポートが2021年8月で終了するとの発表や、Chromium版EdgeのIEモードなどの最新情報を反映しつつ、全面的に改訂しました。
【2019/09/18】Windows Server 2012+IE11やWindows 10 Enterprise 2019 LTSC、Windows Server 2019など最新情報を反映しました。
【2017/08/15】サポート終了日の一覧表を追記しました。Windows Server 2016など最新情報を反映しました。
【2015/12/14】Windows 10に対応しました。
【2015/03/11】初版公開。
Copyright© Digital Advantage Corp. All Rights Reserved.