I&Oリーダーは、いつでもどこでもワークロードを展開できる柔軟な戦略を必要としている。
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ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。
ITインフラは、オンプレミスでアプリケーションとワークロードをサポートしてきたが、クラウドやエッジ、データセンター、またはその組み合わせによって「どこでもインフラ」をサポートするように進化してきた。この変革が進む中、インフラとオペレーション(I&O)のリーダーは、未知の要素を考慮した設計をし、急速な変化への柔軟な対応ができるようにしなければならない。
「多くの企業では、ITインフラがさまざまな方向に同時に拡大し、ハードウェアやソフトウェア、サービス、プロバイダーが複雑に絡み合った構造になっている」と、Gartnerのアナリストでディスティングイッシュト バイスプレジデントのデイヴィッド・カプッチオ(David Cappuccio)氏は指摘する。
「I&Oチームはこの構造を再設計し、ITによってビジネスにどのように価値をもたらすかを見直す時期に来ている」(カプッチオ氏)
新しいインフラ戦略は、「IT部門は、自社の将来の要件を把握していなくても、アプリケーションやワークロードを必要な場所に迅速に展開できなければならない」という現実に適応しなければならない。
I&Oリーダーにとって困難な課題の1つは、今後数年間のビジネスにおいて、ITに何が求められるかの見通しを立てることだ。物理的なインフラ要件に注目するのではなく、ビジネス成果の達成に向けて設計し、インフラをどのように提供するかを見直すとよい。そのためには、分からない要素が幾つかあることを認識する必要がある。
・どこでITが必要になるか分からない
ワークロードの配置戦略は、ビジネスニーズとビジネス価値に左右されるようになっている。ワークロードは、顧客との親密度を高めるために特定地域への配置が必要になる可能性がある。また、高可用性をサポートするために特定のプロバイダーの利用が必要になる可能性や、データ所在地の規制やコンプライアンス問題に対応して、複数の国への展開が必要になる可能性もある。ITインフラ戦略では、展開場所の柔軟性を確保しなければならない。
・どの時点でどれだけ必要になるか分からない
インフラの直線的な拡大(もしくは普及)パターンは、もはや有効ではないと考える必要がある。その大きな理由は、企業が、進化するビジネスニーズに基づくインフラ提供パターンに移行していることにある。迅速なスケールアップとスケールダウンを可能にすることが不可欠だ。
・いつまで必要か分からない
ワークロードとビジネス要件によっては、インフラノードが数年、数カ月、あるいは数時間必要になる場合もある。こうしたノードポイントやそれらを対象とするワークロード、アプリケーションの要件と種類を定義することは、複雑さを軽減したり、管理が困難な単一用途ソリューションの増加を回避したりする上で非常に重要になる。
・コストを最小化する必要がある
どのサイトでも、ワークロードの要件が変われば、物理要件が変わる可能性がある。迅速なスケールアップやスケールダウンを実現するには、オンデマンド、または使用量に応じて割り当てるモデルが効果的だ。
・ソリューションを必要な場所に迅速に展開する必要がある
I&Oチームは、市場機会をいち早く捉えることやビジネスの要求を満たすことを目的として、ソリューションを迅速に展開する必要がある。各分野で最良のものを組み合わせるベストオブブリードソリューションを設計、導入する従来のモデルは、アジャイルインフラの実現を妨げる。
・ダウンタイムは、取締役会レベルの問題になる場合がある
多くの顧客向けワークロードにおいて、ダウンタイムとリスクは、展開モデルを決める際の重要な検討事項になる。今日の世界では、イライラした顧客がソーシャルメディアで不満をぶちまけることがある。そうなれば、1対1の顧客サービスの問題が、例えば1対1万人のメディアで拡散され、企業の評判に悪影響を与える可能性がある。
・既存のスタッフとスキルを活用して仕事をする必要がある
採用難に直面していない組織でも、新しい人材を迎え入れるには、非常にコストと時間がかかることがある。ワークロードを迅速に開発、展開する必要があるダイナミックな環境では、既存のスタッフとスキルが最も重要な要素となる。自動化の知識を体系化し、古い慣習を排除し、スキルを共有、開発し、進化させるための実践的な学習環境を実現するには、組織的な学習が不可欠だ。
インフラの提供戦略と、I&Oがビジネスにもたらす価値を再検討する際は、これらの要素をそれぞれ考慮するとよい。
これらの未知の要素を考慮した上で、ビジネス価値をさまざまなインフラノードタイプに論理的にマッピングし、ワークロード配置戦略のベースラインを作成する。
その際には、それぞれの場所やノードタイプごとに、利点と問題点を判断する。ビジネスパートナーとの連携や、これらのパートナーによる関与を通じたビジネスインパクトとビジネス価値にも焦点を当て、各カテゴリーの重み付けをする。次にその例を示す。
・リスク
このワークロードに障害が発生した場合、ビジネスや顧客にとってどのようなリスクがあるか? 他のワークロードへの連鎖的な影響はどうなるか?
・パフォーマンス
このワークロードは、クエリやビジネスインテリジェンス、分析、高度な調査業務で求められるような高いパフォーマンスを必要とするか?
・規制
データの所在地や主権に関する法律が、ワークロードをどこに置くべきかを定めているか? 監査やコンプライアンス上の問題から、ワークロードをオンプレミスに置き続ける必要があるか?
個々のアプリケーションやワークロードについて検討する際に、こうしたビジネスドライバー(ビジネスを左右する要因)を考慮すれば、インフラノードをワークロードタイプにマッピングするのに役立つ。これらのノード定義を作成し、それぞれのコアアーキテクチャを定義することで、I&Oチームは、ビジネスニーズの変化に応じて参照できる、高レベルなガイドラインを作成できる。
新しいビジネスワークロードをどこにでも迅速に展開する必要がある場合、これらのテンプレートが既に定義されていれば、ビジネスニーズをノードの提供タイプにマッピングすることで、I&Oチームはこの必要性を満たせる。
出典:Design IT Infrastructure Strategies Flexible Enough for the Unknown(Smarter With Gartner)
Senior Public Relations Specialist
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