2021年のDBMS市場――成長が続くオープンソースDBMSGartner Insights Pickup(269)

Gartnerのデータベース管理システムチームには、よく「オープンソースDBMS(OSDBMS)を検討すべきか」という質問がある。今回は、OSDBMSの進化と市場価値について考えてみよう。

» 2022年08月19日 05時00分 公開
[Merv Adrian, Gartner]

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 Gartnerのデータベース管理システム(DBMS)チームに非常によく寄せられる問い合わせの1つは、簡単に言えば、「オープンソースDBMS(OSDBMS)を検討すべきか」というものだ。

 過去2年間のチームへの問い合わせのうち、ユーザー企業からのオープンソースについての問い合わせは全体の3.6%を占めた。私たちはいつもこう答える。「はい、検討すべきです。ただし条件があります。商業的にサポートされていることと、要求通りのパフォーマンスを発揮できるかをPoC(概念実証)でテストし、要件を満たすかどうかを確認できることです」

 だが、OSDBMSについて問い合わせて来るのは、ユーザー企業だけではない。投資家は、OSDBMSが商業的に存続が可能かどうかを知りたがっており、新しい機会を探っているベンダーはしばしば、オープンソースを新製品の基盤に据えようと考える。理由は違うものの、彼らは「OSDBMSは商業的に重要な、興味を持つべき市場なのか」という同じ疑問を持っている。

OSDBMSは、市場の一大勢力ではなさそうに見える。だが、具体的な数字は把握しにくいものの、大きなお金が動く分野となっている

 2021年に3500万ドル以上の売上高を計上したDBMSベンダーのうち13社は、主にOSDBMSベースの商用製品を、コミュニティーエディションとともに提供している。その内訳は、Aerospike、Cloudera、CockroachDB、Couchbase、Databricks、Datastax、EDB、HPE、MariaDB、MongoDB、Neo4j、Pivotal Greenplum、Redisだ。この13社の2021年の売上高を合計すると、少なくとも31億ドルに達する。これは同年のDBMSの世界売上高(795億ドル)の3.9%に当たる。

 13社の合計売上高の半分以上を、ClouderaとMongoDBの2社が占めている。実際、両社とも主力DBMS製品で、オープンソースのコミュニティーエディションを積極的に推しているとは考えられないが、オープンソース版を提供している。

 「MongoDB Community」は、ソースコードが公開されており、無料で利用できるMongoDBのエディションだ。「CDH」は、「Apache HBase」を含むClouderaの100%オープンソースのプラットフォームだ(Clouderaの売上高は、DBMSのみによるものではないが、Gartnerは同社をOSDBMSベンダーのリストに含めている)。HPEもHBaseをサポートしているが、顧客には「HPE Ezmeral Data Fabric Database」をApache HBase APIとともに使用することを勧めている。他に、MongoDBとApache HBaseをベースにした製品を提供しているベンダーはほとんどない。ただし、これらのAPIは広くサポートされている。

 OSDBMS市場の5割未満を占める他の多くの小規模ベンダーは、人気の高い4大OSDBMSである「Cassandra」「MySQL」「Postgres」「Redis」の独自バージョンや、これらほど知られていないOSDBMSの自社バージョンを提供している。これらは専業ベンダーと考えられる。

 だが、規模的にはるかに大きいものの、定量化するのが困難なOSDBMSサービスの売上高もある。DBMS市場全体でも上位を占める大手クラウドサービスプロバイダー(CSP)がクラウドサービスとして提供する、OSDBMSの独自バージョンの売上高だ。

 Amazon Web Services(AWS)は、「Amazon RDS for MySQL」「Amazon RDS for PostgreSQL」「Amazon ElastiCache for Redis」「Amazon Keyspaces(for Apache Cassandra)」などを販売している。

 Googleは、「Cloud SQL for MySQL」「Cloud SQL for PostgreSQL」「Memorystore for Redis」などをラインアップに加えている他、Google Cloud Partner Servicesを通じて――例えば、パートナーのDataStaxが「DataStax Astra DB for Apache Cassandra」などを提供している。

 Microsoftは、「Azure Database for MySQL」「Azure Database for PostgreSQL」「Azure Cache for Redis」「Azure Managed Instance for Apache Cassandra」などを提供している。

 MySQLの開発元であるOracleは、MySQLの商用版の売上高は公表していない。MySQL Databaseから直接OLTPやOLAPワークロードを実行できる高パフォーマンスの「MySQL HeatWave Database Service」をOracle Cloudで提供しており、新リリースでは機械学習(ML)機能も統合している。このサービスはMySQL APIを採用しているが、オープンソースではない。

 IBMのポートフォリオには、「IBM Cloud Databases for DataStax」「IBM Cloud Databases for MySQL」「IBM Cloud Databases for PostgreSQL」「IBM Cloud Databases for Redis」などが含まれる。「IBM Cloud Pak for Data」もOSDBMSオプションを提供している。

 商用OSDBMSベンダーのエンタープライズエディションと同様に、CSPのOSDBMSサービスは、コミュニティーエディションを拡張する特別な機能が追加されていることが多い。それは、クラウドネイティブ機能だ。OSDBMSサービスの付加機能としてのクラウドネイティブ機能では、ストレージエンジンやスタック制御などが利用されており、他のクラウドサービスとガバナンス、さらにはセマンティクスを共有する機能の導入も進んでいる。

 最近公開した非リレーショナルDBMSに関する記事で、大手CSPの非リレーショナルDBMSサービスの売上高合計は、非リレーショナルDBMSの専業ベンダーの売上高合計をはるかに上回るとみられることに言及した。同様に、大手CSPのOSDBMSサービスの売上高合計は、独立系ベンダーのOSDBMSの売上高合計を優に超える可能性がある。

 全体的に、OSDBMSの売上高は把握しにくいものの、着実に成長し続けており、年々、DBMSの多様な分野に進出している。OSDBMSはそれ自体としても、拡張製品のコンポーネントとしても成功している。その影響とインパクトは、今後も数年にわたって増大する見通しだ。データ管理スタックの分割が進み、分割された構成要素がオープンソース製品に取って代わられていくからだ。

出典:DBMS Market Transformation 2021: OSDBMS Advances(Gartner Blog Network)

筆者 Merv Adrian

VP Analyst


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