ムーアの法則減速で「システム設計は新時代に突入」、Googleが考える次のインフラハードウェアとは“マルチブレーン”サーバ構想、ルートオブトラスト測定の「Caliptra」など

Googleは「Open Compute Project(OCP)」のイベント「2022 OCP Global Summit」で、OCPの活動における同社の新しい重要な貢献や、オープンハードウェアエコシステムへのサポートを紹介した。

» 2022年10月21日 12時15分 公開
[@IT]

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 Googleは2022年10月19日(米国時間)、Open Compute Project(OCP)のイベント「2022 OCP Global Summit」で講演し、サーバ設計、トラステッドコンピューティング、信頼性の高いコンピューティング、サステナビリティ(持続可能性)に関するOCPの活動における同社の新しい重要な貢献や、オープンハードウェアエコシステムへのサポートを紹介した。

 OCPは、スケーラブルなコンピューティングにとって最も効率の良いサーバ、ストレージ、データセンターなどのハードウェアを設計、提供するためのエンジニアコミュニティーだ。

 Googleは、現在のシステム設計を取り巻く状況について、以下のような見解を示した。

 「コンピューティングの需要が拡大を続ける一方で『ムーアの法則』の減速により、CPUの性能、消費電力、メモリやストレージのコスト効率の改善は、いずれも頭打ちになっている。信頼性やセキュリティなどの新たな課題も現れている中で、サーバやデータセンターインフラの設計においては、モジュール化、異種混在化、分散化、ソフトウェア定義化が進んでいる。これに伴い、分散システムもマイクロ秒規模のI/Oに対する最適化や、低レイテンシとアクセラレーターに最適化された新しいプログラミングモデルの定義が求められ、新時代に突入している」

 Googleは、新しいカスタムシリコンアクセラレーター(TPU《Tensor Processing Unit》、VCU《Video Coding Unit》、IPU《Infrastructure Processing Unit》)、新しいハードウェアやデータセンターインフラ、新しい分散システムやクラウドソリューションなど、システム設計のイノベーションにより課題とチャンスに対応してきた。これらへの対応は、業界全体で取り組むことも極めて重要だと考え、OCPの活動にも積極的に参加してきた。

 OCP Global SummitでGoogleが発表した内容は以下の通り。

サーバ設計

 Googleは“マルチブレーン”サーバのビジョンを共有し、従来のサーバ設計を、ホストコンピューティング、アクセラレーター、メモリ拡張トレイ、IPUなどにまたがる、よりモジュール化された分散システムへと変える。

 Googleは、全てのOCPパートナーと取り組みの成果を共有する。この取り組みには、DC-MHS(Datacenter-ready Modular Hardware System)によるモジュール化されたハードウェア、OpenBMCとRedFishによる標準化された管理、標準化されたルートオブトラスト(信頼の基点:RoT)、標準化されたインタフェース(CXL、NVMeなど)が含まれる。

トラステッドコンピューティング

 今後のシステムには、ルートオブトラストが不可欠になる。Googleは、消費者向けデバイスなどのルートオブトラストとなるシリコンチップの設計である「OpenTitan」のオープンソース化などにより、透明性のあるベストインクラスのセキュリティに貢献してきた。コンフィデンシャルコンピューティングにおける将来のイノベーションや、パッケージやシステムオンチップ(SoC)レベルでの認証を必要とするさまざまなユースケースに目を向けている。

 Googleは、AMD、Microsoft、NVIDIAといった他の業界リーダーとともに、ルートオブトラストのための再利用可能なシリコンレベルのIPブロックである「Caliptra」を、OCPに寄贈した。Caliptraは将来、CPU、GPU、SSDなどのSoCに統合されることが想定されている。今後数カ月間にCaliptraの初期コードをリリース予定で、OCPコミュニティーが機能強化を施す見通しだ。

信頼性の高いコンピューティング

 Googleは、大規模システムの信頼性の課題に対処するため、AMD、ARM、Intel、Meta、Microsoft、NVIDIAとともに、OCPに「Server-component Resilience Workstream」を新設した。このWorkstreamを通じて、サイレントデータエラーや破損に関する一貫した指標を作成し、業界で広く追跡できるようにする。

 また、テスト実行フレームワークおよびスイートも寄贈し、欠陥のあるデバイスを含むテスト環境を利用できるようになる。これにより、産業界と学界にわたる幅広いコミュニティーが、シリコンの欠陥とサイレントデータエラーへの対処することを可能にする。

エコシステムのサステナビリティ

 Googleは、エコシステム全体の重要な理念として、環境サステナビリティをサポートするOCPの新しい取り組みへの支持も発表した。2007年からカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出をゼロにすること)を実現し、2017年からは再生可能エネルギーによる電力のみを使用しており、2030年までに全ての事業とバリューチェーンでネットゼロ排出を達成するという野心的な目標を掲げている。

 また、業界で最もクリーンなクラウドとして、顧客のカーボンフットプリント(二酸化炭素の排出量)の追跡と削減および大幅なエネルギー削減の達成を支援してきた。これらのベストプラクティスをOCPと共有し、より広いコミュニティーと協力して、この重要な分野におけるサステナビリティの測定と最適化方法の標準化に取り組んでいく。

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