「うちの会社のあのやり方は間違っている」「こうすればもっとうまくいくのに」――と、Slackや居酒屋でポソポソと愚痴を言ったことはないだろうか。だが、そんなことをしても何も変わらない。会社を変えよう、良くしようと思うのなら、お作法に従って正しいアクションを取るべきなのだ。
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プロジェクトや組織が誤った方向に動いている気がする。
そんな経験はないだろうか。しかし特に何もしない。そういう実態はないだろうか。「何か行動を起こすと角が立つし、組織を動かすのは面倒なことだ。どうせ組織が変わらないなら転職でもした方がマシだ」――それがエンジニアの本音かもしれない。
しかし、言われたことをやるだけのエンジニアでは、仕事に退屈しないだろうか。ビジネスサイドへも提案できるハイブリッドなエンジニアになれば、主体的に仕事に取り組め、より楽しく働ける。
エンジニアとしてビジネスサイドに携わっていく方法の一つとして、企画を上げていく方法があると私は考える。
「私はいつも意見を言っている。けれども、会社は聞く耳を持たないんだ」という声が聞こえてきそうである。だが、少し待ってほしい、あなたはこんな方法で意見を表明してはいないだろうか?
こういう方法は居酒屋で愚痴っているのと大して変わらない。
会社に意見を検討してもらうためには正規のルートに乗せる必要がある。ルートは通常、「発議、提案→承認→実行」という流れになる。場合によっては、発議の前にネマワシをするとよいだろう。利害関係者に「今度こういう提案をするつもりだ」と言っておくだけでも構わない。
提案の場として、多くの企業では、定例会議があるはずだ。議長を担当する人か上長に提案の時間をもらおう。定例の会議がない場合は、別途時間をとってもらう必要があるかもしれない。
提案のひな形は、以下のような形式が一般的だろう。
場合によっては、3C分析やSWOT分析などのビジネスフレームワークを組み込むのもよい。
企画を提案するときのコツと注意点を列挙しよう。
まずは、何でも提案できるわけではないと認識することだ。組織の方針に反していたり、方針に合わなかったりする意見はそもそも採用されない。自身の裁量の範囲内での提案から始めるのがよいだろう。
独り善がりにならないことも大切だ。独り善がりな意見の例として、これまでの決定のいきさつをよく調べずに、理想論を語るというものがある。現在動いている方法には、何らかのいきさつが必ずあるものだ。必ずしも最適な状態ではないとしても、現在の状況についても理解を示そう。
独り善がりな提案の例をもう1つ。あるエンジニアは、メンバーの構成やスキルセットを考えずに、自分が使いたいはやりのフレームワークの利用を提案した。結果はお分かりだろう。技術スタックの選定はさまざまな条件が絡み合うため、難しいものなのだ。そもそも、その技術の採用は顧客のためになるのだろうか。
企画サイドや営業サイドを巻き込む場合には、エンジニア的コミュニケーションを取らないように注意しよう。
エンジニアは批判したり批判されたりすることに慣れている。エンジニアが間違うと、場合によっては人命や顧客の財産に影響が及ぶことがあり得るため、ためらいなく批判を行う文化があるからだ。しかし、企画サイドや営業サイドの人たちは、批判されることにあまり慣れていない。リスペクトを忘れないように気を付けよう。
他にも、課題を解決するために自分から動く、変化に見合うメリットを併せて提案する、などもポイントだ。人は変化を嫌うものだ。変化に見合うメリットが提案されなければ採用されづらいだろう。
「うちの組織はトップダウンだから、ボトムアップの意見なんて求められていないんだ」と言いたい人もいるだろう。しかし、一見トップダウンに見えても、トップの意思を実行に落とせる中間リーダーの存在は極めてまれで、ボトムアップの余地がある。そういうことができる人材をトップは求めているものだ。
こういった提案や実行の経験は、キャリアアップやキャリアチェンジの際に大きな武器にもなる。提案できるエンジニアをめざそう。
Convergence Lab. 代表取締役CEO
豊橋技術科学大学大学院博士後期課程単位取得後退学。博士(工学)。AIスタートアップや大手ITベンダーを経て、2020年5月より現職。大手ITベンダーのAI導入支援や、AIスタートアップのプロダクト開発支援に携わる。
AI、ディープラーニングに関する国内、国際学術会議の論文多数掲載(Google Scholar)。博士(工学)。ATR-trek、富士通を経て、現在はConvergence Lab.の代表として多数のAI案件を手掛ける。著書:『現場で使える!Python深層学習入門』(翔泳社)
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