Intelが96%の精度で「ディープフェイク」を見破る技術を製品化 その仕組みとは「血流」を分析し、数ミリ秒で結果を返す

Intelは、96%の精度でフェイク動画を検出できる「FakeCatcher」技術を製品化したと発表した。この技術を用いたIntelのディープフェイク検出プラットフォームは、数ミリ秒で結果を返すという。

» 2022年11月18日 10時00分 公開
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 Intelは2022年11月14日(米国時間)、「責任あるAI(人工知能)」(Responsible AI)の取り組みの一環として、96%の精度でフェイク動画を検出できる「FakeCatcher」技術を製品化したと発表した。Intelのディープフェイク検出プラットフォームは、数ミリ秒で結果を返す世界初のリアルタイムディープフェイク検出器だとしている。

「FakeCatcher」のインフォグラフィック(提供:Intel) 「FakeCatcher」のインフォグラフィック(提供:Intel)

 FakeCatcherは、Intel Labsのシニアスタッフリサーチサイエンティストのイルク・デミ氏が、ニューヨーク州立大学ビンガムトン校のウマー・シフチ氏と共同で設計した。Intelのハードウェアとソフトウェアを採用したこのディープフェイク検出器はサーバ上で動作し、Webベースのプラットフォームが検出器とのインタフェースとして機能する。

 両氏のチームは、AIモデルの変換および最適化機能を提供する「Intel Distribution of OpenVINO Toolkit」を利用して、顔やランドマークの検出アルゴリズムを用いたAIモデルを実行した。

 コンピュータビジョンブロックは、マルチスレッドソフトウェアライブラリ「Intel Integrated Performance Primitives」とリアルタイム画像、動画処理ツールキット「OpenCV」で最適化された。推論ブロックは、ディープラーニングを高速化する「Intel Deep Learning Boost」(Intel DL Boost)とIntelプロセッサの拡張命令セット「Intel Advanced Vector Extensions 512」(Intel AVX-512)で最適化され、メディアブロックは拡張命令セット「Intel Advanced Vector Extensions 2」(Intel AVX2)で最適化された。

 両氏のチームは「Open Visual Cloud」を利用して「Intel Xeon スケーラブルプロセッサ」ファミリー向けの統合ソフトウェアスタックを提供した。Open Visual Cloudは、メディア、分析、グラフィックス、没入型メディアのための一連のオープンソースソフトウェア(OSS)スタックであり、商用の既製x86 CPUアーキテクチャによるクラウドネイティブデプロイに最適化されている。

 Intelのリアルタイムディープフェイク検出プラットフォームは、第3世代Intel Xeon スケーラブルプロセッサ上で最大72種類の検出ストリームを同時に実行できる。

 ディープラーニングベースの検出器の多くは、生データを見て不正の兆候を見つけ、動画のどこが問題なのかを特定しようとする。これに対し、FakeCatcherは、ビデオピクセルに見られる微細な「血流」を評価することで、実際の動画から、映っている人物が本物であることを示す手掛かりを探す。

 人間の心臓が血液を送り出すと、静脈の色は変化する。FakeCatcherは血流のシグナルを顔全体から収集し、アルゴリズムを用いて時空間マップに変換する。そしてディープラーニングを用いて、動画が本物か偽物かを瞬時に判別する。

コンテンツの信頼回復を支援

 ディープフェイク動画は脅威を増しており、調査会社のGartnerによると、企業はサイバーセキュリティソリューションに最大1880億ドルを支出する見通しだ。また、こうしたディープフェイク動画をリアルタイムで検出するのは難しい。検出アプリケーションに動画をアップロードし、分析結果が出るまでに何時間もかかる。

 ディープフェイクによる詐欺は、メディアの信頼低下などの悪影響を及ぼす。FakeCatcherは、ユーザーが本物と偽物のコンテンツを区別できるようにすることで、信頼回復を支援する。

 IntelはFakeCatcherの用途例として、以下を挙げている。

  • ソーシャルメディアプラットフォームが、ユーザーによるディープフェイク動画のアップロードを防止するため使用する
  • 国際的な報道機関が、改変された動画を不用意に拡散しないため使用する
  • 非営利団体が、誰もがディープフェイクを検出できるようにするため使用する

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