シングルテナント専用のIaaSを提供する「Azure Dedicated Host」で、仮想マシンをホストする物理ハードウェアの再起動オプションが正式にサポートされました。
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「Microsoft Azure」や「Amazon Web Services(AWS)」「Google Cloud Platform(GCP)」などのパブリッククラウドの利点の多くは、クラウドベンダーの顧客が同じコンピューティングリソースを共有するという「マルチテナンシー」に大きく依存しています。クラウドベンダーは、同じ物理ハードウェアを複数の顧客で共有することにより、利用可能なリソースを最大限に活用でき、「規模の経済」によって低コストで高品質なサービスを提供できます。
一方、マルチテナンシーはクラウドベンダーがリスク低減のために多大な投資をしているにもかかわらず、潜在的なセキュリティリスクとコンプライアンスの懸念が残り、それが顧客要件や法規制、ソフトウェアのライセンス要件によってはパブリッククラウドの利用を妨げる一因になることもあります。
2019年12月から一般提供されている「Azure Dedicated Host」は、1つ以上のAzure仮想マシン(Azure VM)をホストするためのシングルテナント、つまり顧客専用の物理サーバを提供するものであり、コンプライアンス要件やライセンス要件への対応を容易にします。AWSは「Amazon EC2 Dedicated Host」、GCPは「Sole-tenant nodes(単一テナントノード)」として、同様のサービスを提供しています。
Azure Dedicated Hostは、1台以上の物理サーバ「ホスト」で構成される「ホストグループ」から成り、顧客はホストグループ内の任意のホストにAzure VMをデプロイして実行できます(画面1〜3)。
また、通常のAzure VMをホストに移動することも可能です。このホストは顧客専用の物理ハードウェアであり、ホストレベルで他の顧客から分離され、コンピューティングリソースが他の顧客と共有されることはありません。パブリッククラウド上のプライベートクラウドと考えてよいでしょう。ホストOSの更新やハードウェア/ソフトウェアの再起動など、ホストレベルの管理はAzure側が行いますが、顧客がメンテナンス操作のタイミングを制御できます。
Azure Dedicated Hostは、ホストをプロビジョニングするとすぐに課金が始まる「Dedicated Host SKU」に応じた料金と(SKUによってデプロイ可能なVMシリーズが決まります)、ホスト上にデプロイした実行中のAzure VMレベルで課金されるOS/ソフトウェア(Windows Server、Linux、SQL Server、SAPなど)の料金で利用できます。実行可能なVMの上限は、ホストで利用可能な仮想CPU(vCPU)と、VMに割り当てるvCPUの数で決まります。
Azure Dedicated Hostは東日本/西日本を含む多くのリージョンで提供されていますが、利用を開始する前にAzureサブスクリプションに課せられている「クォータ」の上限数を確認してください。通常、Azure Dedicated Hostには、リージョンのvCPUの合計、専用のvCPU(Dedicated vCPU)、ホストとなるVMシリーズにおけるvCPUのクォータの増加要求が必要です。
例えば、Dsv3_Type1の場合は64、Dsv3_Type2の場合は76、Dsv3_Type3の場合は80のvCPUを利用可能でなければホストを作成できません。現在のクォータは、Azureポータルの「サブスクリプション」ブレードの「使用量+クォータ」ページで確認、および増加リクエストを行うことができます。
Azure Dedicated Hostでは、2022年12月15日にそれまでプレビュー機能として提供されていた「ホストの再起動」オプションが一般提供となりました。
ホストに対するより多くの制御機能を提供することで、ホストレベルでのトラブルシューティング(ホストの再起動によるAzure VMの正常性の回復など)が可能になります。ホストを再起動すると、そのホストで実行中のVMもそのまま再起動されます。再起動後、VMは同じ物理ハードウェアに残り、ホストIDやアセットIDは維持されますが、ゲストOSはリセット(突然の電源断)されることに注意してください(画面4)。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP 2009 to 2022(Cloud and Datacenter Management)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
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