Windows PCのセキュリティと安定性を維持するために、毎月1回のWindows Updateは欠かせません。Windows Updateで問題が発生しない限り、更新プログラムをインストールして再起動すれば、すんなり終わります。毎月の定例行事みたいなものなので、皆さん慣れたものでしょう。でも、Windows Updateだけちゃんとやっておけばいい、というわけでもありません。
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「Windows Update」「Microsoft Update」は、長年の間、Windows OSの更新プログラムだけでなく、Microsoft製品の更新プログラムも提供してきました。
例えば、10年ほど前には、WindowsやWindows Serverだけでなく、「Microsoft Office」や「Internet Explorer」の更新プログラム、Microsoftサーバ製品の更新プログラム、「Windows Defender」の定義ファイル、これら全てをWindows Updateでインストールできました。
Windows Updateは「Windows 95/98」の時代にWebアプリ(Webサイト)として登場し、その後、「Windows Vista」でOSの「コントロールパネル」に統合され、「Windows 8/8.1」で「コントロールパネル」と「PC設定」アプリの両方からアクセスできるようになり、「Windows 10」で「設定」アプリに完全に移行しました。
また、Windows 10からは、通常の更新プログラム(品質更新プログラム)に加えて、年に複数回、Windowsの新バージョン(機能更新プログラム)がWindows Updateを通じて提供されるようになりました。Windows 10が登場してしばらくは、毎月、複数回更新プログラムが提供されることはよくあったので、また“更新プログラムが来た”と振り回されたユーザーも多いのではないでしょうか。
その後、Windows Updateは、毎月第2火曜日(米国時間)にリリースされるセキュリティ修正を含む「累積更新プログラム」(Bリリース)と、その翌週以降にリリースされる「オプションの更新プログラム」(累積更新プログラムのプレビュー、Cリリースとも呼ばれます)のサイクルに落ち着き、通常は毎月1回、BリリースをWindows Updateでインストールしておけばよいようになりました。そして、「Windows 11」登場以降、機能更新プログラムも1年に1回のサイクルに落ち着きました。さらに、Microsoftは2023年4月から、CリリースをWindows 10の最新バージョンおよびWindows 11にのみ、第4火曜日(米国時間)にリリースするように変更しました。
一方、Windows Updateから離脱していったMicrosoft製品(およびサードパーティー製品)も存在します。かつて、「Windowsインストーラー」(MSI)形式で提供されていたMicrosoft Officeアプリは「クイック実行方式」(Click-To-Run:C2R)に移行し、現在、Microsoft Officeアプリ(リテール製品)および「Microsoft 365」アプリ(サブスクリプション製品)は、どちらも、アプリに組み込みの更新機能により、Officeコンテンツデリバリーネットワーク(officecdn.microsoft.com)から更新プログラムを受け取るようになっています。
Windows標準のWebブラウザであった「Internet Explorer」は、新しいChromiumベースの「Microsoft Edge」に完全に置き換わりました。Microsoft Edgeは、Microsoft Edge Updateによって自動または手動で更新され、Windows Updateを使用しません(企業の場合はWindows Server Update Services《WSUS》を通じて更新を配布できます)。また、Windows 8で新たに登場した「ストアアプリ」(ユニバーサルWindowsプラットフォーム《UWP》アプリ)は、ストア(現在のMicrosoft Store)からインストールし、更新バージョンもストア経由で受け取ります。
Office/Microsoft 365アプリ、Microsoft Edge、ストアアプリについても、更新プログラムによって重要なセキュリティ修正が行われます。Office/Microsoft 365アプリはWindowsのBリリースと同じサイクルで、Microsoft Edgeはより頻繁なサイクルでセキュリティ修正を含む更新プログラムが提供されます。ストアアプリでは、2023年3月末に「Snipping Tool」アプリの脆弱(ぜいじゃく)性が修正されました。
これらのアプリは、いずれも自動更新機能により、適切なタイミングでバックグラウンドで更新され、アプリが使用中であれば通知されるはずです。しかしながら、自動更新機能がちゃんと機能しているとは限りません。
例えば、稼働時間が短いPCの場合、自動更新で更新されることなく、長い時間が過ぎてしまうことがあるでしょう。めったに使用しない仮想マシンのゲストOSの場合も同様です。定期的に、最新バージョンになっているかどうか確認することをお勧めします。Windows UpdateのBリリースのインストールに合わせて、1カ月に一度確認するくらいでよいと思います。
Office/Microsoft 365アプリの場合は、任意のアプリを起動して「ファイル」メニュー→「アカウント」→「更新オプション」→「今すぐ更新」(Outlookの場合は「ファイル」メニュー→「その他」→「Officeアカウント」にあります)をクリックします(画面1)。
Microsoft Edgeの場合は、「…」(設定)メニュー→「ヘルプとフィードバック」→「Microsoft Edge」をクリックするか、アドレスバーに「edge://settings/help」と入力します(画面2)。ストアアプリの場合は、「Microsoft Store」アプリを開き、「ライブラリ」→「更新プログラムを取得する」をクリックします(画面3)。
なぜ、Windows以外のアプリが自動更新されているかどうか確認することをお勧めするのかというと、筆者がメインで使用しているWindows 11 バージョン22H2のデスクトップPCは、以前から、「Microsoft Store」アプリを開いてアプリの更新を開始しても、「保留中」や「ダウンロード中」や「Wi-Fiへの接続待機中」(ただし、このPCではWi-Fiは不使用)のまま、まったくダウンロードが進まないことがよくあったからです。
このように挙動するのはメインで使用しているこのデスクトップPCだけなのです。筆者はこのPCを毎日「休止状態」にして電源をオフにし、翌日、電源をオンにして作業を再開しているのですが、「休止状態」から復帰して稼働中のときに、この現象が発生します。作業を中断して再起動すれば、再起動後のアプリの更新は問題なく進むのです(画面4)。
この問題を解消できないかどうか、ここ数日、いろいろと条件を変えて試してみました。その結果、少し前に「Hyper-V用にでも」と追加で接続していた
USBタイプのLANアダプター(手元にあった余りものの)を取り外すか、そのネットワークアダプターを「無効」にすると、問題が発生しないことが分かりました。
このLANアダプターは、Hyper-V専用にしていたつもりでしたが、ホストと共有(管理オペレーティングシステムにこのネットワークアダプターの共有を許可する:オン)する設定となっており、意図せず、同じLANに2つのLANアダプターでマルチリンクした状態になっていました。その状態がアプリの更新のダウンロードに何らかの影響を与えていたようです。Hyper-V仮想スイッチでLANアダプターをホストと共有しないように設定し直したところ、今のところ問題は再発していません(画面5)。
ちなみに、ストアアプリの自動更新は、「タスクスケジューラ(taskschd.msc)」の「\Microsoft\Windows\InstallService」にある「ScanForUpdates」で制御されています。少なくとも1日(8万6400秒)に1回、更新プログラムがないかどうかチェックされ、存在する場合はキューに入れられ、その後、自動的にダウンロードとインストールが行われるようです。その動作ログは「イベントログ(eventvwr.msc)」の「アプリケーションとサービスログ\Microsoft\Windows\Store/Operational」ログ(Microsoft-Windows-Store/Oparational)に記録されます。
通常は、自動更新がうまく機能していることを確認できたのであれば、自動更新に任せきりでよいと思います。しかし、筆者はWindowsも、その他のアプリも自動更新には任せず、ストアアプリ以外はリリース情報を確認してから、手動で更新するようにしています。ストアアプリについても、メインで使用しているPCについては、数日おきに更新を確認しています。
そんな中、最近気になるのは、Microsoftが“アプリをリリースするのに備えておくべき品質のハードルが低過ぎる”のではないかということです。出来上がったらすぐにリリースし、問題が報告されたら、また修正すればいいという感じなのです。「最近のアプリの開発スタイルそのもの」といってしまえばそれまでですが、その仕組みに甘え過ぎのような気がしてなりません。結果として、アプリの更新プログラムのリリースが多くなっているように感じます。
例えば、MicrosoftはMicrosoft Edgeのメジャーバージョンを、同じエンジンを搭載している「Google Chrome」と同じ4週ごとにリリースしていますが、Google Chromeと比較して、マイナー更新のリリースが多過ぎる事実があります。
例えば、バージョン110の場合、Google Chromeが主にセキュリティ修正のために4バージョンリリースされたのに対して、Microsoft Edgeは8バージョンリリースされました。実に倍のマイナーリリースであり、多い分は、Microsoft Edgeにだけ影響するセキュリティ修正や、パフォーマンスとバグ修正(リリース情報は“さまざまなバグとパフォーマンスの問題を修正しました”のひと言)です。手動で更新している場合、数日おきに更新バージョンがやってくるので、ウンザリします。
MicrosoftはWindows向けのBリリースと同じタイミングで、セキュリティ修正を含むOffice/Microsoft 365アプリの更新プログラムをリリースしますが、コンシューマー向けOffice/Microsoft 365アプリの既定の「最新チャネル(Current Channel)」には、さらに多くのリリースがあります。
それは新機能を含む新バージョン(機能更新プログラム)が、より短いサイクル(1カ月に1回以上)でリリースされるからです。機能更新プログラムの翌週に、セキュリティ更新ということもよくあります。筆者は使い慣れた機能しか使用せず、新機能にあまり興味はないので、毎月1回のリリースしかない「月次エンタープライズチャネル(Monthly Enterprise Channel)」で利用しています。
ストアアプリを毎日更新してみれば、Microsoft製の同じようなアプリが頻繁に更新されているのを目にするでしょう。筆者は使用しないストアアプリは可能な限りアンインストールしていますが、それでも「Microsoft ヒント」「Microsoft To Do」「問い合わせ」「スマートフォン連携」「Microsoft People」など、ほとんど利用していない、あるいはアンインストールできないアプリの更新が、場合によっては数日おきにあります。
アプリの一覧には表示されませんが、「XBox Game Bar Plugin」と「Webメディア拡張機能」は毎日のように更新されているのを目にします。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP 2008 to 2023(Cloud and Datacenter Management)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
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