AIを使えば、人間はほとんど何もせず、サクッと同人誌ができるのでは!? 実際に試してみました。
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こんにちは! 暑くなってきましたね。ビールが飲みたい!
と思って居酒屋に入り、メニューを開いたら……。
「永遠のお通し 800円」(何も出されませんが、料金が課金されます)。
なんだこれは!? 800円もする「無」。ひどい。
もっとまともなのはないのか!? メニューをたどると……
「落胆の餃子 500円」(餃子〈ギョーザ〉の皮だけ。中身は空洞です)
皮だけかよ!!!! てか、顔みたいなの、何? 怖いんですけど。
……これらはChatGPTが考えた、「絶望の居酒屋」メニューです。
私は「絶望の居酒屋」をテーマに、ChatGPT(GPT-4)にメニューを考えさせる、という遊びを個人的にやっていました。
最初はChatGPTが考えたテキストだけのメニューを見て、その姿を想像して楽しんでいたのですが、先日、AIの同人誌イベントに参加するに当たり、このメニューに画像生成AIで絵をつけて編集し、本の形にしてみました。
AIを使えば、人間はほとんど何もせず、サクッと同人誌ができるのでは!? と期待したのですが、意外とそうでもなく……。
「絶望の居酒屋」に至るまで、筆者とChatGPTは試行錯誤しました。最初は「カレー店」「和食店」などを想定し、「絶望的な」メニューをChatGPTに考えさせていました。
ChatGPTから出た案は、カレー店なら「絶望の火山」(超辛口のカレーで、食べると口の中が火山のように燃え上がる)、和食店なら「哀愁の刺し身」(とても希少な魚種を用いた刺し身の盛り合わせ。その希少さから絶望的ともいえる一品)など。
うーん、悪くはないんですが「絶望」というほどでもないし、あまり面白くない。そこで「もっとネガティブに 本当の意味での絶望を」と、ハッパをかけてみました。
すると出てきたのは「空虚のお造り」(刺し身のプレートが出されますが、実際には何も乗っていません。食事の欠如からくる絶望感が広がります」など。これを見て筆者は「いいじゃん! そういうのでいいんだよ」と可能性を感じました。
少し趣向を変えて「絶望の居酒屋」メニューをリクエストしたところ「孤独の枝豆」( 1つだけ枝豆がついてきます。一粒だけでその存在感が絶望的です」「無の生ビール」(グラスは出されますが、中身は空っぽ)などと出てきました。そうそう、それ!
ただ、ChatGPTの発想は「あるべき○○がない/足りない」に偏りすぎてワンパターンです。そこで「何もないだけでは面白くない。『虚無』『何もない』以外の視点から絶望を考察してやり直して」とリクエスト……したけれど、どうやっても、「○○がない」という視点から離れてくれませんでした。このあたりがChatGPTの発想の限界だったようです。
さながら筆者が編集者、ChatGPTがライター、というイメージ。筆者が手を替え品を替えてAIに質問しながら、限界まで発想を引き出していった、というところでしょうか。
次に、ChatGPTが作ったメニュー案を、Midjorney/にじジャーニーを使ってイラストにする作業にとりかかりました。
ChatGPTの文章を英語に翻訳してMidjorneyに入れ、画像生成させるだけだから簡単! と思っていたのですが、これがなかなか難儀で。日本特有のメニューを、正確に絵にしてもらうのも難しかったんです。
例えば「唐揚げ」。機械翻訳だと「Japanese fried chicken」と翻訳されるのですが、それをそのままMidjorneyに入れても、ケンタッキーのフライドチキンのような、唐揚げと似て非なるものや、なぜか中華風の三重塔の画像などが出力されます。
「幻の焼き鳥」(焼き鳥は一切ついていない空っぽの串)も、そのまま翻訳してMidjorneyに入れてみたのですが、どうやっても肉がついてしまい、「串だけ」ができない。生成AIがそもそも、「焼き鶏の串だけ」という絵を学習していないのかもしれません。
そこで発想を転換。絵が再現できなかったメニューは、生成できた絵を見て人力でメニュー名を考えることにしました。例えば、「幻の焼き鳥」を生成しようとしてできた、肉が縦横に串刺しになっている画像を、「焼き鶏串」(串は抜けません)というメニューにする、などです。
また、ChatGPTの提案から私が発想を広げ、さらにAIに描かせてネタを深めるというやり取りもしてみました。ChatGPTが提案した「素の麺だけのなにもかかってない冷やし中華」というメニュー、筆者は「麺ではなく、ゴムだったらもっと絶望的だろう」と考え、「皿に載ったゴムバンド」をにじジャーニーで生成してみたところ、なぜかゴムバンドに美少女の絵が添えられたので、「絶望のパスタ〜美少女を添えて」(パスタに見せかけたゴムバンドです)というメニューが完成しました。
筆者は、手で絵を描いて同人誌を作った経験もありますが、“AI同人誌”はかなり手軽に作ることができました。文章や画像のアイデアさえあれば、手を動かしてくれるのはAI。アイデアを用意し、アウトプットにツッコミをいれていくだけで、コンテンツができあがります。
ただ、大本となるアイデアは人力ですし、AIの出力がしっくりこなければ、人力で修正したり、別の方向性を考えたりする必要があります。思ったほど「全自動」というわけにはいきませんでした。
生成AIはよく、「副操縦士」(Co-Pilot)と呼ばれます。人間が操縦士であり、あくまでもサポートしてくれる役割、というイメージのようです。
筆者が今回、同人誌を作ってみた感想は、「人間が主・AIが副」とはちょっと違いました。むしろAIが操縦士、人間が副操縦士というか、AIの創作を人間がサポートしていく…「AIが作家、人間が編集者」というイメージでした。また、本来、孤独な作業である創作が、AIと「一緒に」作ることで、行き詰まりが打開できるという印象も受けました。
筆者の同人誌は、6月半ばに行われたAIオンリーの同人誌即売会「AIけっと」で頒布しました。こぢんまりしたイベントでしたが活気があり、AIで創作を楽しんでいる人の熱気を感じました。次のAIけっとは2023年11月に行われるようです。あなたも“AI同人誌”を作ってみませんか?
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