Microsoft、開発者向け仮想ワークステーション「Dev Box」を提供開始 開発ツール、料金の詳細は?「Windows 365」を基盤に採用

Microsoftは、「Microsoft Dev Box」の一般提供を開始した。開発者のユースケースと生産性に最適化された、すぐにコーディングを開始できるクラウドベースの仮想ワークステーションに、開発者がセルフサービスでアクセスできるAzureサービスだ。

» 2023年07月13日 08時00分 公開
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 Microsoftは2023年7月10日(米国時間)、「Microsoft Dev Box」(以後、Dev Box)の一般提供を開始したと発表した。Dev Boxは、開発者のユースケースと生産性に最適化された、すぐにコーディングを開始できるクラウドベースのワークステーションに、開発者がセルフサービスでアクセスできるAzureサービスだ。

開発者に最適化された仮想ワークステーション

 Dev Boxは、2022年5月の「Microsoft Build 2022」で発表された。Microsoftはそれ以前にも、クラウドを利用して開発者の生産性や満足度を高めるサービスとして、2016年に「Azure DevTest Labs」、2019年に「Visual Studio Codespaces」を導入している。これらには、それぞれ以下のような特徴と課題があり、Microsoftはこれらの課題を克服するサービスとして、Dev Boxを投入した。

Dev Box(提供:Microsoft) Dev Box(提供:Microsoft)

Azure DevTest Labs

  • 特徴:開発チームがさまざまな開発やテストのユースケース向けにテンプレート化された仮想マシン(VM)を作成できる
  • 課題:永続的な事前構成済みの開発環境を作成したいという要望が多かったが、こうしたカスタムソリューションをDevTest Labs上で実現するには、追加のガバナンスと管理機能の構築に多大な労力が必要だった

Visual Studio Codespaces

  • 特徴:開発者が「Visual Studio Code」(VS Code)から、コンテナとLinuxをベースにした事前構成済みの開発環境を数秒で立ち上げることができる。そうしたスピードや機動性から人気を呼び、現在も「GitHub Codespaces」として存在している
  • 課題:VS CodeとGitHubをサポートしていたが、開発者が携わるプロジェクトは多岐にわたるため、他の統合開発環境(IDE)、ソースコード管理システム、各種ツールのサポートを求める要望が寄せられた。エンタープライズ対応の管理とガバナンスを要求するニーズも高かった

 Microsoftはこれらの課題を踏まえ、以下の要件を満たし、開発者に最適化された新しい仮想ワークステーションを提供する必要があると判断した。

  • エンタープライズ対応のセキュリティ、コンプライアンス、コスト管理機能
  • 開発ツールが統合されたクラウドベースの高パフォーマンス
  • 事前に構成されたプロジェクト固有のリソースへのセルフサービスアクセス

 Microsoftは、既に提供していたクラウドPCサービス「Windows 365」を、新しいソリューションの基盤として採用した。Windows 365は、パーソナライズされたWindowsデスクトップ、アプリ、設定、コンテンツを、Microsoftクラウドからあらゆるデバイスに安全にストリーミングするものだ。「Microsoft Intune」と完全に統合されているため、IT管理者はクラウドPCを物理デバイスとともに管理できる。

 Windows 365をベースに、開発者に最適化された機能を利用できるクラウドベースのワークステーションを提供するサービスが、Dev Boxだ。

開発者に最適化された機能

 MicrosoftはDev Boxで、開発者に最適化された以下のような機能を利用できるようにした。

  • プレミアムSSD:ビルドの際に、ストレージの読み書き速度がパフォーマンスのボトルネックにならないように、プレミアムSSDを提供している
  • きめ細かな構成とデプロイ:開発ワークステーションでは、複雑なプロジェクトやツールセットに起因する、長いデプロイ時間や構成エラーが大きな問題となる。Dev Boxでは、チームがプロジェクトごとにイメージとネットワーク構成を整理でき、開発リーダーやIT管理者が1つのプロジェクトについて、複数のワークステーション構成を事前に設定できる。そのため、開発者は新しいワークステーションが必要になるたびに、IT部門に問い合わせる必要がない。タスクに合わせてワークステーションを選択し、素早く作業を開始できる
  • 専用の開発者ポータル:開発者はプロジェクトベースのワークステーションに素早く簡単にアクセスできる。また、「Azure Deployment Environments」を組み合わせて使用し、任意の開発段階のための環境を迅速にデプロイすることもできる

 さらに、Microsoftは2023年5月開催の「Microsoft Build 2023」で、Dev Boxの以下のような機能強化も発表している。

  • 「Visual Studio」との連携向上:Dev Boxの作成とログインに使用したIDに基づき、Dev BoxでVisual Studio 2022を起動すると、自動サインインできるようになった。また、テーマカラーなどのローミング設定もすぐに適用されるようになった
  • Configuration as Code(CaC)によるカスタマイズ機能(プレビュー段階):この機能により、開発リーダーがDev Boxの構成をよりきめ細かく制御したり、Dev Boxのプロビジョニングを既存のGitフローに関連付けたりできる

柔軟な料金設定

 Dev Boxは、当初は純粋な従量課金制の料金体系が計画されていた。だが、これはDev Boxのパートタイム利用には適していたものの、フルタイム利用の場合、料金の変動が大きくなる可能性があり、企業にとってコスト管理がしにくいという問題があった。

 そこでMicrosoftは、さまざまなユースケースに対応するため、Dev Boxのフルタイム利用は、予測可能な月額料金制を導入するとともに、月々の上限額を設定した従量課金制も維持することとした。

Dev Boxの料金体系(提供:Microsoft) Dev Boxの料金体系(提供:Microsoft)

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