IDCは世界における量子コンピューティング市場予測を発表し、量子コンピューティングに対する顧客の支出額は2022年の11億ドルから2027年には76億ドルに成長すると予測した。
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IDCは2023年8月17日(米国時間)、世界における量子コンピューティング市場予測を発表し、量子コンピューティングに対する顧客の支出額は2022年の11億ドルから2027年には76億ドルに成長すると予測した。この予測には、サービスとしての基本的な量子コンピューティングだけでなく、サービスとしての量子コンピューティングを可能にするものや隣接するものも含まれている。
今回発表した予測は2021年に発表されたIDCの量子コンピューティング予測よりもかなり下方修正されている。この間、量子コンピューティングに対する顧客の支出は、マイナスの影響を受けている。その要因としてIDCは、量子ハードウェアの開発が予想以上に遅れていること、潜在的な投資収益率が遅れていること、エンドユーザーにとって短期的により大きな価値を提供すると期待される生成AI(人工知能)など他の技術の出現などの技術的理由、金利やインフレ率の上昇、景気後退の見通しなどのマクロ経済的理由を挙げている。
IDCは「量子コンピューティング市場は、量子的な優位性をもたらす主要な量子ハードウェアの開発が発表されるまで、成長が鈍化し続ける」と予想している。「それまでは、サービスインフラやプラットフォームとしての量子コンピューティングの成熟と、量子技術に適した性能集約型コンピューティングワークロードの拡大が、成長の大半をけん引するだろう」(IDC)
IDCはまた、量子コンピューティング市場への投資は2023〜2027年の予測期間中に年平均成長率11.5%で成長し、2027年末には164億ドル近くに達すると予測している。これには、公的機関や私的機関による投資、テクノロジーベンダーやサービスベンダーによる内部投資(研究開発費)、ベンチャーキャピタルやプライベートエクイティファームによる外部資金が含まれる。特に注目されているのは、世界の政府機関が量子コンピューティングへの関心を高めている分野で、14カ国(13カ国と欧州連合)が複数年にわたって量子研究に取り組むことを発表しており、量子コンピューティング研究のために数十億ドルの資金が投入される予定である。
量子コンピューティングの研究開発に割り当てられる数十億ドルによって、近年、ハードウェアとソフトウェア、そして新しいエラー緩和と抑制技術が進歩した。これらの進歩は、現在のNISQ(Noisy Intermediate-Scale Quantum Computer)アルゴリズムを使えば、近い将来、量子の優位性を実現できるかもしれないという臆測を呼んでいる。長期的にはこのような投資の結果、IDCは今日の科学者やエンジニアが直面する最も複雑な問題を解決できる大規模量子システムが実現され、予測期間の終わりには顧客支出が急増すると予想している。
IDCのエンタープライズ インフラストラクチャ プラクティスでリサーチマネジャーを務めるヘザー・ウェスト氏は、次のように述べている。
「量子コンピューティングを巡っては、いつ量子コンピューティングが量子的な優位性をもたらすのか、どのようなユースケースで、いつ量子コンピューティングが可能になるのか、といった誇大宣伝が盛んに行われてきた。今日の量子コンピューティングシステムは小規模な実験にしか適していないかもしれないが、その進歩は時を経ても休むことなく続いている。組織は、将来的に量子コンピューティングに対応できるように、今、投資することをちゅうちょすべきではない」
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