AWSは、AIとクラウドを活用して社会課題の解決に取り組む中堅中小企業に関するレポートを発表した。中堅中小企業がクラウド主導の技術を採用することで、2030年には医療、教育、農業の分野全体で年間総額1兆9000億円相当の生産性向上効果と520万人の雇用が生み出されるという。
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アマゾン ウェブ サービス ジャパン(以下、関連企業を含む総称として「AWS」と表記)は2023年10月19日、従業員250人未満の中堅中小企業(Micro Small & Medium Enterprises:MSME)のAI(人工知能)とクラウドの活用に関するレポート「日本においてクラウド主導経済が現実に:中堅中小企業を通じてクラウドが経済と社会に与えるインパクトとは」を発表した。
調査は、経済協力開発機構(OECD)の「クラウド導入レベル」の定義を用いて実施した。例えば「基礎レベル」はWebメールサービスやクラウドストレージなどの技術を指す。レポートでは「2030年には全企業の90%が少なくとも基礎レベルのクラウド技術を導入することになる」と予測している。
2023年現在の状態でいえば、基礎レベルの技術を利用している日本企業の割合は68%。ただし、基礎レベル以上(CRM<Customer Relationship Management>やERP<Enterprise Resources Planning>などの『中レベル』、AIや機械学習などの『高レベル』)については導入割合が低い。例えば、2023年現在、AIソリューションを活用している日本企業の割合は4%となっている。
AWSは「OECD加盟の先進国と比べると中レベル、高レベルの技術導入率ははるかに低い。日本企業には、クラウド技術の可能性を最大限に引き出すために、クラウド導入を進展させる大きな機会がまだ残されている」と分析している。
レポートによると、MSMEがクラウドを活用することで経済と社会に目に見える効果がもたらされるという。AWSはその理由として「オンライン医療相談の促進、教育へのアクセスの改善、精密農業の強化がクラウドによって可能になる」と説明している。医療、教育、農業の分野全体では年間総額1兆9000億円相当の生産性向上効果と520万人の雇用が生み出されるという。
MSMEのクラウド導入を妨げる主な障壁は、サイバーセキュリティの課題や組織文化、ITインフラへのアクセスとデジタルスキルの欠如などだ。こうしたMSMEのクラウド導入を加速させるために重要な推奨事項として「クラウドが戦略的なビジネスニーズをどう合理化できるかを特定する」「業界と政府の支援について評価する」「クラウドを活用した従業員のスキルアップと教育を実施する」「データとセキュリティポリシーを見直す」「企業全体のクラウド移行戦略を策定する」という5つを挙げている。
アマゾン ウェブ サービス ジャパンの瀧澤与一氏(執行役員、パブリックセクター技術統括本部 統括本部長)は、「MSMEは、イノベーションを支える重要な存在であり、医療や教育のデジタルサービスへのアクセスを改善するなど、社会の課題に対処する上で重要な役割を果たす。生成AIなどの高度なクラウド技術の導入を加速化し、経済的、社会的メリットを速やかに可能にするために、AWSは政府や教育機関、業界と協力して支援する」と述べている。
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