今後、従来のビジネスを変えるテクノロジーディスラプション(創造的破壊)がさまざまな市場で起こるだろう。ITリーダーはこうした動向に精通し、それらがもたらす脅威と機会を理解することが重要だ。
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今後数年の間に、さまざまな市場で従来のビジネスを一変させる可能性を秘めた多くのテクノロジーディスラプション(創造的破壊)が起こるだろう。ITリーダーはこうした動向に精通し、それらがもたらす脅威と機会を理解することが重要だ。
今はまだ、こうしたデジタルディスラプションの一部は、はるか先のテクノロジーや絵空事に思えるテクノロジーから生じると予想される。一夜にして大きな変化が起こるわけではない。だが、ディスラプションを初期段階で無視すると、通常、その発展サイクルの後の段階で参入する場合の戦略コストや財務コスト、存続コストが高くついてしまう。
ITリーダーは、以下の4つの主要なテクノロジーディスラプションに備える必要がある。
メタバースは人間のエクスペリエンスを仮想化し、没入型のデジタル環境を提供する。ビジネスのさまざまな側面(財務モデル、売買、組織のスタイル、コラボレーティブなエクスペリエンスなど)にディスラプションをもたらす。仮想現実(VR)がこのディスラプションの中核であるため、メタバースを懐疑的に見ていると足をすくわれる恐れがある。VRは、メディアやエンターテインメントからビジネス上のやりとりまで、現実世界の多くの側面を包含し始めているからだ。
ITサービスベンダーが業務エクスペリエンスにおけるVRのビジネス機会を捉えるには、プロセスやシステム、エクスペリエンス、インフラの再構築によって新たなVRの世界を実現し、最適化する方策を追求する顧客を支援する、コンサルティングおよび開発サービスの提供に力を注ぐべきである。
例えば、オフィスを縮小した組織では、可用性が高く安全なVR環境が必要になる。なぜなら、スタッフが働き、顧客と触れ合う場となるからだ。市民に不可欠なサービスを提供する公共機関は、それらのサービスに簡単にアクセスできるようにする必要がある。VRを活用して物理的な部品を設計、製造しようとしているメーカーにおいては、テクノロジー的にアジャイルでない企業に対しテクノロジーリーダーが、新たなアプローチをリードする必要がある。
デジタルヒューマンは、ますます本物の人間に近づいている。すぐに対応できる態勢にあり、画面越しに相手とやりとりし、直ちにサービス関連の問題を処理したり、顧客サービスを提供したりできる。デジタルヒューマンソフトウェアが自然言語処理やRPA(ロボティックプロセスオートメーション)ツールと統合されるにつれて、デジタルヒューマンはますます多くのプロセスのワークフローで存在感を増していきそうだ。
コンサルティングリーダーは単独で、そして組織の他チームのリーダーと連携して、顧客がデジタルヒューマン労働力を活用するためのアプローチの考案に力を入れなければならない。サービスデリバリーリーダー(特に、ビジネスプロセスアウトソーシングプロバイダーの)は、サービスデリバリー業務にデジタルヒューマンを展開する戦略を策定する必要がある。
自律分散型組織(DAO)は、ブロックチェーン(コミュニケーションを追跡するための安全なデジタル台帳を提供する)上で運営されるデジタルエンティティだ。従来型の管理を人間がすることなく、他のDAOやデジタルエージェント、ヒューマンエージェントに加え、企業とビジネス上のやりとりができる。DAOは以下のようにディスラプションをもたらす。
IT部門は、この考え方に精通する必要がある。なぜなら、あっという間に拡散するデジタル特有の性質から、異例な速さで発展し、通常のビジネスのディスラプションにつながる可能性があるからだ。
またIT部門は、DAOが解決策となる問題――つまり、既存の組織モデルの在り方に対する多くの従業員の不満や幻滅という問題の根本原因を分析する必要もある。
さらにIT部門は、DAOベースのサービスデリバリーモデルが現在の既存アプローチと共存する可能性を評価しなければならない。
ITにおけるコンポーザビリティ/ディスポーザビリティ(モジュール化とモジュールの機動的な組み換え/使い捨て化)の考え方が、急速に取り入れられつつある。CIO(最高情報責任者)は、テクノロジーイノベーションを加速させ、ユーザーの要求に応えるために、テクノロジーを交換して入れ替えられるようになっている。
使い捨てが可能なテクノロジーは、あらゆるテクノロジーにとってディスラプションだ。だが、消費者/顧客の要求を考えれば、このテクノロジーの使用は避けられない。このディスラプションが影響を与える対象の例として、以下が挙げられる。
ITリーダーは開発方法論や、製品やサービスを開発する際の基本アーキテクチャの選択を見直さなければならない。直接的なテクニカル担当リーダーは、さまざまなコンポーネントテクノロジー間の「交換と入れ替え」を促進するアーキテクチャレファレンスモデルを作成するとともに、長期的な戦略策定が特定のテクノロジーに依存することのリスクと限界を自社が理解するよう導く必要がある。
ITリーダーはこれらのディスラプションに備え、それらが与え得る影響を認識しておかなければならない。
出典:Organizations must watch four technology disruptions(Gartner)
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