Gartnerはクラウドコンピューティングがビジネスに果たす役割を予測した。2023年時点では“Technology Disruptor”(テクノロジーの破壊者)であるクラウドは、2028年までには“Business Necessity”(ビジネスに不可欠のもの)に進化するという。
この記事は会員限定です。会員登録(無料)すると全てご覧いただけます。
Gartnerは2023年11月29日(米国時間)、2028年までにクラウドコンピューティングは“Technology Disruptor”(テクノロジーの創造的破壊者)から、ビジネス競争力を維持するための必須の要素になるとの予測を発表した。
パブリッククラウドサービスへのIT支出は衰えることなく増加し続けている。2024年には、パブリッククラウドサービスに対する世界のエンドユーザーの支出は総額6790億ドルに達し、2027年には1兆ドルを超えると予測されている。
Gartnerの特別バイスプレジデントアナリストであるミリンド・ゴヴェカル氏は次のように述べる。
「企業は、イノベーションを促進し、市場に破壊をもたらし、顧客維持を強化し競争力を高めるために、クラウドテクノロジーに積極的に投資している。多くの企業がクラウドの技術的優位性を生かし始めている。とはいえ、クラウドのビジネス変革支援能力を最大限引き出せた企業はごく少数に限られる。このため、企業はいま、クラウドを利用して人工知能(AI)による新たな破壊の波を起こし、大きなビジネス価値を引き出そうとしている」
2023年現在、ほとんどの企業はクラウドをテクノロジープラットフォームとして考えている。2023年、企業はクラウドコンピューティングを“Technology Disruptor”として、あるいは機能を実現する手段として利用している。Gartnerは2028年までに企業の50%以上が業界のクラウドプラットフォームを活用してビジネスイニシアテチブを加速させると予測している。2028年には、ほとんどの企業がビジネス上の必要性からクラウドを活用するようになると推測されている。
上図「1」の“Technology Disruptor”としてクラウドを利用している企業は、変革におけるその潜在能力を活用して、非クラウドのデータセンター指向のコンピューティングスタイルとテクノロジーに革命を起こしている。このことをゴヴェカル氏は「企業がデジタル変革の歩みを進める中で、クラウドへの移行が重要な意思決定ポイントになる」と述べている。
「2」の“Capability Enabler”(能力を促進するもの)としてクラウドテクノロジーを採用している企業は、その潜在能力を利用して、クラウド以前には実現が困難だった弾力性、迅速な継続的インテグレーション/クラウドデリバリー(CI/CD)、サーバレス機能、AIを組み込んだAPIやプロセスなどの新しいケイパビリティを実現している。これらの新機能を活用するために、組織はスキル開発への投資、業務サイロの解消、自動化をシームレスに導入するためのチーム間コラボレーションの促進などの要素を慎重に評価する必要がある。
今後数年間で、クラウドコンピューティングは上図「3」の“Innovation Facilitator”(イノベーションの推進者)から「4」の“Business Disruptor”(ビジネスの破壊者)、そして最終的には「5」の“Business Necessity”(ビジネスに不可欠のもの)へと進化し続けると予測される。
クラウドコンピューティングがイノベーションの推進者となることで、組織はその基盤となるプラットフォーム技術を利用して、相互接続、スケール、集約、分析機能を提供することで、プラットフォームビジネスのコンセプトを広く普及させることができる。
「クラウドプロバイダーのエコシステムを活用することで、組織は革新的な製品やサービスを導入できる。例えば、タイヤメーカーによる中古車の不正防止や、製薬会社によるクラウドベースの機械学習を活用した迅速なワクチン開発などである」とゴヴェカル氏は述べている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.