BCP対策、「システムやサービスを導入する」以外に進められることは? ガートナーが提言「考慮すべきリスク」の明確化も重要

ガートナージャパンは、企業が事業継続計画の策定や見直しのために押さえておくべき3つのポイントを発表した。同社は「本番サイトから離れた別サイトでの災害復旧策やその必要性の確認を忘れないようにすることがポイントだ」と述べている。

» 2024年03月27日 08時00分 公開
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 ガートナージャパンは2024年3月25日、企業が事業継続計画(BCP)の策定や見直しのために押さえておくべきポイントを発表した。「事業の優先順位付け」「事業を停止させない暫定運用の策定」「できることとできないことの整理」の3点だ。

画像 プレスリリース

1.事業を優先順位付けして合意を形成する

 企業の予算や要員は有限であるため、全ての問題に完全な形で備えることは難しい。そのため、ガートナージャパンは「危機が発生したときには、事業への影響が大きいものから優先的に対処する姿勢が必要だ」と指摘している。

 ガートナージャパンの矢野 薫氏(シニアディレクター アナリスト)は、「BCPが不十分、あるいは長期間更新されていない場合には、まず『業務がわずかに中断しただけでも対外的に大きな影響を与える事業』を洗い出し、それらの現在の優先順位を緊急対策本部の構成メンバーと再確認することが重要だ」と述べている。

2.完全ではなくても事業を継続させる手順を策定する

 レジリエンスを高めるためには、完全な形ではなくても業務を続け、事業を止めないようにすることが重要だ。事業を停止させるリスクには、IT障害や自然災害、セキュリティ、パンデミック(世界的大流行)、政情不安などが挙げられる。

画像 BCPで取り扱うリスクの例(提供:ガートナージャパン

 矢野氏は「現在、業務の多くは複雑なエコシステムの中にあり、高度なテクノロジーに大きく依存しているため、企業にとって、最新のビジネスやテクノロジー環境に合わせた暫定手順の策定や見直しが急務の課題になっている」と述べている。

3.「できること」と「できないこと」を整理する

 ガートナージャパンの山本琢磨氏(ディレクター アナリスト)は、「BCPを支えるITで考慮すべきことは3つ。システムやサービスの継続的提供、早期リカバリー、新しいサービス作りと新興テクノロジーの活用だ。少なくともこの3つが実現できなければ、IT部門としての責任を大きく問われる」と述べている。

システム/サービスの継続的提供

 ガートナージャパンは「システムやサービスを継続的に提供する鍵は、ニーズに基づいた可用性を備えることだ」としている。現時点で想定されている可用性やリカバリーの仕様について状況を把握しておくことが重要だ。特にリカバリーについては「本番サイトから離れた別サイトでの災害復旧策やその必要性の確認を忘れないようにすることがポイントだ」と述べている。

早期リカバリー

 リカバリープロセスを正しく実行できるように準備を整える必要がある。クラウドサービスを利用する、リカバリー計画を整理する、定期的な訓練を実施するなどだ。ガートナージャパンは「訓練で見つかった問題点から見直しを進めることが有効だ」と指摘している。

新しいサービス作りと新興テクノロジーの活用

 早期に復旧するだけでなく、新たなサービスや仕組みを即座に作りたいというニーズが生まれる可能性があるため、ローコード開発基盤や非常時のコラボレーション手段についての検討を進める必要がある、とガートナージャパンは語る。またその際、「これまで使っていないテクノロジーについての可能性を探ることも必要だ」としている。

 山本氏は「変化への俊敏な対応を本格的に目指すに当たっては、『できること/できないこと』を単純に棚卸しするのではなく、ITに対する過剰な期待や誤解を解消するための議論を進めていくことが求められる」と述べている。

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