自然言語の曖昧さを「数学的」に回避 自動運転の安全対策の一環としてNIIが発表自動運転車の“危険シナリオ”をSTLで定式化

NIIは、ISO 34502で示された自動運転車の「危険シナリオ群」について、その意味を数学的に定式化したと発表した。危険シナリオの曖昧さを回避し、危険シナリオを用いた安全性評価タスクの自動化と効率化を実現するとしている。

» 2024年04月19日 08時00分 公開
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 情報・システム研究機構 国立情報学研究所(NII)は2024年4月10日、自動運転車の安全性保証の枠組みである国際標準「ISO 34502」で示された「危険シナリオ群」を数学的に定式化したと発表した。研究を担当したのは、NIIの蓮尾一郎氏(アーキテクチャ科学研究系教授)と京都大学大学院情報学研究科の和賀正樹氏(助教授)らの研究グループ。

カギは「数学的な意味が定義された言語」

 従来、危険シナリオは英語などの自然言語で記述されており、解釈の違いが生じる恐れがあった。これを「STL(シグナル時相論理)」という形式の言語にすることで「危険シナリオを用いた安全性評価タスクの自動化と効率化を可能にした」としている。

画像 STLによる数学的定式化の例(提供:NII

 ISO 34502は、日本自動車工業会の取り組みを起源とする安全性保証の枠組み。自動運転車の動作を「認知」「判断」「動作」の3段階に分け、各段階での危険要素を同定し、それらを組み合わせて「危険シナリオ」として列挙。危険シナリオの状況下で適切な安全行動をとれるかどうかを評価することで、自動運転車の安全性を検証できる仕組みだ。

 だが、例えば「『強引な割り込み』はどこまでが“強引”に当たるのか」など自然言語は受け手によって解釈が異なるため、大規模応用が難しかったという。また、危険シナリオが生じるような走行状況をシミュレーションするテストデータや、それらの状況での安全性評価タスクを実行するソフトウェアをシナリオごとに作成しなければならず、多大な労力がかかっていた。

 同研究グループは、ISO 34502の危険シナリオ群をSTLによって数学的に定式化することで、こうした課題を解決した。STLで扱う語彙(ごい)にはそれぞれの意味が数学的に定義されている。つまり、STLの記述に変換すれば自然言語で記載された危険シナリオであっても、その意味を数学的に解釈、確定できる。定式化に当たっては、蓮尾氏らの研究グループが開発中の対話型ツール「STLデバッガ」を用いて、記述した数学的内容がISO 34502の意図に合致していることを確認しながら作業を進めたという。

画像 「STLデバッガ」のスクリーンショット(提供:NII

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