IDCは世界の企業ITインフラ市場のレポートを発表した。企業ITインフラ支出全体の7.8%を占めたのは「構造化データベース/データ管理」の分野だが、支出が急上昇していた分野が2つあった。
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IDCは2024年5月2日(米国時間)、2023年下半期における世界の企業インフラ市場動向の追跡レポート(Worldwide Semiannual Enterprise Infrastructure Tracker)を発表した。以下、ワークロード分野別支出状況、サーバやストレージなど製品カテゴリーごとや地域ごとの違いを紹介し、今後5年間の予測も示す。
企業ITインフラ支出のうち最も大きかったのは「構造化データベース/データ管理ワークロード」だった。企業が構造化データベースやデータ管理のワークロードをサポートするために、コンピュート(計算処理)とストレージ(データ保存)のハードウェアインフラに費やした金額は72億ドルに上り、これは企業ITインフラ支出全体の7.8%に相当する。
高水準の支出にもかかわらず、「構造化データベース/データ管理ワークロード」に対する支出は、前年同期(2022年下半期)と比較して1.3%減少した。他の分野が全体的に伸びているにもかかわらず、この分野は支出が減少した数少ないワークロードの一つとなった。
2023年下半期に支出が急上昇したワークロードは、「業界特化型ビジネスアプリケーション」で、前年同期比36.6%増だった。また、2023年下半期に増加し、前年同期比26.6%増となったのが、「AI(人工知能)ライフサイクル」のワークロードへの支出だ。「AIライフサイクルのワークロードへの支出」は支出総額66億ドルとなり、支出全体の7.2%を占める2番目に支出額の大きなワークロードとなった。「クライアントコンピューティング」への支出は、前年同期比22.6%増となり、2022年両期の低迷から力強い回復を見せた。
その他、「開発ツール/アプリケーション」は前年同期比で17.8%の成長、「テキスト/メディア分析」は前年同期比で16.6%の成長、「ビジネスインテリジェンス/データ分析」は前年同期比で15.3%の成長、「エンジニアリング/技術ワークロード」も前年同期比で11.4%の伸びを示し、いずれも2023年下半期に2桁の伸びを記録した。
ワークロードの支出プロファイルは製品カテゴリーによって異なる。ODM(Original Design Manufacturer) Direct(※)の場合、最も支出が多かったのは「コンシューマー向けデジタルサービス」のワークロードで、2023年下半期には28億ドルとなり、ODM支出の10.6%を占めた。OEM(Original Equipment Manufacturer)サーバでは、「AIライフサイクルへの支出」が39億ドルで、シェア7.6%となり、主要ワークロードだった。OEMストレージでは、「構造化データベース/データ管理」ワークロードが24億ドルで支出の16.6%を占めた。
(※)ベンダーから依頼を受けた生産企業が設計開発から製造まで請け負い、完成品を納めてベンダーが自分のブランドで販売すること
同様に、ワークロードの優先順位は地域によって異なる。南北アメリカ大陸では、「AIライフサイクル」ワークロードへの支出が31億ドルでトップとなったが、アジア太平洋地域(日本と中国を除く)、中国、欧州/中東/アフリカ(EMEA)では、「構造化データベース/データ管理」ワークロードへの支出がトップとなった。それぞれの地域の支出額は、アジア太平洋地域が11億ドル、中国が23億ドル、EMEAが9.9億ドルだった。
企業のワークロードがクラウド環境に移行し続けている。そうした中、IDCは共有インフラ(パブリッククラウドサービスを提供するためのハードウェア基盤)および全てのワークロードを対象とした専用インフラへの投資は、今後5年間で2桁のペースで成長すると予想している。IDCの予測は以下の通り。
「デジタルサービス」と「AIライフサイクル」への支出を筆頭に、5年間の年平均成長率(CAGR)が12.8%になる。2028年までにクラウドと共有環境における「デジタルサービス」の支出は165億ドル、「AIライフサイクル」の支出は116億ドルに達し、5年間のCAGRはともに15%に達する。
年平均成長率12.9%で、「構造化データベース/データ管理」に続き「AIライフサイクル」が最も急成長するワークロードとなる。5年間の年平均成長率は「構造化データベース/データ管理」が8.8%、「AIライフサイクル」が18.8%の見込み。「AIライフサイクル」は、2028年までに49億ドルに達し、支出額第2位のカテゴリーを維持する。
今後5年間で、クラウドネイティブのワークロードに対するコンピュートとストレージシステムの支出は、従来のワークロードをサポートするインフラよりもはるかに速く成長する(年平均成長率14.0%対8.4%)。
今後5年間で年平均成長率4.1%の成長を達成する。5年間の年平均成長率が「非構造化データベース」で12.8%、「テキスト/メディア分析」で11.8%、「AIライフサイクル」が9.0%で、最も急速に成長するワークロードとなる。とはいえ、「構造化データベース/データ管理」「コンテンツアプリケーション」「ビジネスインテリジェンス/データ分析」が2028年までに支出の24%を占めるのに対し、「非構造化データベース」「テキスト/メディア分析」「AIライフサイクル」を合わせた同年の支出は15%にとどまる見込みだ。
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