ABI Researchは、AIチップセットの出荷が2030年に13億個に達すると予測した。本記事では同社が予測したAIチップセットの今後について紹介する。
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ABI Researchは2024年5月7日(米国時間)、AI(人工知能)チップセットの出荷が2030年に13億個に達するとの予測を発表した。
予測によると、スマートフォンやPCのベンダーは、オンデバイスの生成AIに重点を移しているという。ABI Researchは「ベンダーは、これまでクラウドに限られていた推論ワークロードの処理を、ローカルで実行できるチップセットに多大なリソースを投入している」と述べている。
これにより、スマートフォン、PC産業におけるAIチップセットの出荷と収益の成長が見込まれ、タブレットやゲーム機にも拡大し、2030年には13億台以上の出荷に達するという。
ABI Researchのインダストリーアナリスト、ポール・シェル氏は「スマートフォン市場では、VivoやSamsungのようなメーカーがヘテロジニアスAIチップセットの実装を開始し、自社のデバイスに生成AIアプリケーションを展開できるように投資している。一方、チップベンダーのQualcommやMediaTekは、アプリケーション開発を始めるための開発者向けツールや最適化ツールを推進している」と説明している。
PC市場でも同様のことが当てはまるという。AMDやIntelのようなチップベンダーがPC向けにヘテロジニアスAIチップセットの出荷を開始している。一方で、PCメーカーとMicrosoftのようなISV(独立系ソフトウェアベンダー)が協力し、最適化されたAIソフトウェアが構築されている。
「エコシステムのあらゆる方面が、低遅延でデータプライバシーを保つAIアプリケーションの可能性に期待を寄せている。AIアプリケーションはクラウドを超えて拡張可能だが、現在はまだ初期段階にとどまっている」とシェル氏は語る。
ABI Researchは、CPU、GPU、NPU間でワークロードを分散できるヘテロジニアスAIチップセットが、生成AIやマルチモーダルAIなど、今日の多様なAIワークロードに取り組む上で非常に効果的なアーキテクチャだとしている。そして、こうしたシステムがデバイス市場全体で加速度的に採用されることになると予測している。
また、ABI Researchは、PCにおけるより要求の厳しいオンデバイスAIワークロードは、NVIDIAのRTXやAMDのハイエンドRadeonハードウェアのようなGPUカードによって対処されていると対応されていくだろうと指摘する。ヘテロジニアスシステムの外部に存在するこれらのチップセットは、今後もAIの構成要素として残り続けると結論付けている。
ABI Researchは、個人用および業務用のオンデバイスAIが潜在能力を発揮できるようになるために、IntelのAI PCアクセラレーションプログラムや、Apple、Googleなどのベンダーによるアプリケーション開発インセンティブが実を結ぶ必要があるとする。それでこそ、消費者や企業顧客は追加コストを支払う価値が納得できるからだ。
「ABI Researchでは、生産性の高いAIアプリケーションは、スマートフォン、ノートPC、デスクトップPCのリフレッシュサイクルを短縮し、タブレットやゲーム機における他のAIアプリケーションと同様に、この需要の上昇をもたらすインセンティブを提供できると考えている」(シェル氏)
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