人間性で勝負します。
この記事は会員限定です。会員登録(無料)すると全てご覧いただけます。
エンジニアの皆さんは、AI(人工知能)を日常業務にどれぐらい使っているでしょうか?
私はフリーライターなのですが、仕事にAIが欠かせなくなっています。「AIがないころはどうやって仕事していたんだっけ?」と思うほどです。主に使っているのは、文章作成能力の高い「Claude 3」です。
最近使い始めて驚いたのは、“AI検索”サービス「Perplexity AI」(パープレキシティ AI)でした。まさに、Web検索に置き換わりそうなサービスです。
Perplexity AI(以下、Perplexity)は、質問に対して、チャット形式で回答してくれる生成AIです。このサービスがスゴいのは、Web上の最新情報をクロールして、その結果を参照リンク付きで出してくれること。時事問題について概要をつかみたいときなどにとても便利です。
例えば「2024都知事選の代表的な候補者と争点は」と聞くと、最新のニュース記事や各候補の公式サイトを引用しながら、政策を箇条書きで比較してくれます。
東京都知事選挙については各社が熱心に取材していますので、Web記事を探せば似たような記事はたくさんあります。そうした記事をまとめてPerplexityが回答を作っているのですが、新聞記事よりPerplexityによるまとめの方が、正直、読みやすい。
新聞記事は長文で表現が煩雑だったり、公平性のために各候補について均等に記述しようとしたりします。その結果、読みづらくなることもあります。
また、候補者メインの記事、争点メインの記事などはあるのですが、「代表的な候補者と争点だけ」を簡潔にまとめている記事を、私は見つけきれませんでした。個々の検索ニーズにジャストな情報を、Perplexityなら一瞬で出してくれるのです。
Perplexityも生成AIなので、事実と異なる間違いを提示する「ハルシネーション」が起きることもあります。回答をうのみにするのは危険ですが、回答の参照元リンクを表示してくれるので、心配なときはリンクからソースを確かめられます。
引用元も確かめつつ、回答をうのみにしないことや、「間違いがあるかもしれない」という前提で読むことで自衛できるだろうとは思います。とはいえ、人間が書いた記事や検索結果にも間違いが含まれていることはありますから、「AIだから人間よりも危険!」と主張するのもおかしいかな、とも。
もう一つ気になったのは、時々、引用元の記事の内容をまるまるコピーしているのではないか、と思える回答があることです。モラルの面でも著作権の面でも問題ではと思っていたら、米国ではメディアから名指しで非難される事態になっていました。
情報の正確性や著作権などの問題は山積しているものの、これらの問題がクリアになっていけば、AI検索は明らかに便利ですから、普及していく可能性は高いように思います。
そうなったとして、どんな未来があるでしょうか? 人々は求めている答えにすぐにたどり着けるようになり、社会が動くスピードはさらに加速するでしょう。また、情報の出し手は、検索エンジン最適化(SEO)のように、AI検索エンジンに拾われやすい情報をWebに公開しよう、という動きが出るかもしれません。
それ以前に私が心配してしまったのは、自分の仕事の将来でした。
私はIT分野をメインにしているライターですが、専門知識は深くありません。取材内容を読みやすくまとめる能力の方に自信があります。
でも正直、Perplexityほど読みやすくまとめる自信はないし、読者のニーズ(質問)に合わせて記事を変えることも不可能です。読者個々の「知りたい」に合わせた記事を作る力やスピードは、AIにはまったく及びません。
「まとめる力」をAIに任せるとして、残るのは、一次ソースから情報を取る取材力と、その記者ならではの人間性かもしれません。AIの回答はあくまでフラットで無機質ですが、記者には肉体と生きている社会、それに基づく視点があります。
情報をまとめるだけの仕事は、人間がやる必要がなくなってくるかもしれない。それに代わって、肉体を使って一次ソースに取材することや、視点を持って「自分ならでは」の記事を出していくことが、これからの記者の役割になるのかもしれませんね。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.