日本一創業しやすい街を目指した炭鉱の街、飯塚――デバイスの多様化とAIの進化で新たな取り組みへe-ZUKAスマートアプリコンテスト

かつての炭鉱の街、飯塚は大学誘致とITを核とした産業振興策に取り組み、産学官連携の下、「日本一創業しやすい街」を目指した。大学の学園祭と一体開催されてきた歴史あるアプリコンテストからは多くのベンチャー企業も生まれたが、デバイスの多様化やAIの進化もあり、そのあるべき姿を模索する。

» 2024年07月26日 20時30分 公開
[浅井英二@IT]

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 かつて日本最大の炭田を擁した筑豊は、ベストセラー小説にも舞台として描かれているため、多くの人が郷愁を持って思い浮かべることができるだろう。主人公は戦後の荒々しい気風(きっぷ)の中にも人間味が息づく筑豊から青春を歩み始める。1970年代半ばには全ての炭鉱が閉山したが、幾つかの遺構が今日にその面影を残している。石炭の採掘に伴って生じた捨石を積み上げて築かれたボタ山はその危険性もあって他の地域では取り崩しが進められてきたが、筑豊炭田の中心だった福岡県飯塚市には、その美しさから「筑豊富士」と呼ばれるボタ山が残る。JR飯塚駅から望むそのボタ山は、高さはゆうに100メートルを超え、にわかには人工のものとは思えないほどだ。

筑豊富士(ボタ山)

 「飯塚は面白い」と話すのは、画像AI技術を強みとする研究開発型のベンチャー企業、fumeの代表、鵜狩慧久氏だ。この地の九州工業大学(以下、九工大)情報工学部に在学中から個人事業主として活動し、2019年に飯塚市主催のe-ZUKAスマートフォンアプリコンテストでグランプリを受賞、同市からのオフィス提供を受けてさらに研究開発を進め、2023年2月には株式会社としてfumeを設立した。ちなみにグランプリに輝いた「mindPump for Travel」は、ある単語を入力すると、樹木が成長して枝葉が伸びていくように関連する単語が次々と表示される仕組み。マインドマップのようなユーザーインタフェースを持ち、自然言語処理(AI)の力を借りながら旅のアイデアを次々と膨らませていけるスマホアプリで、「誰にでも分かりやすく、共感してもらえ、より多くの人の役に立つものを目指した」(鵜狩氏)。そうしたソフトウェア開発への取り組みは今も変わらないという。

mindPump for Travelのスクリーンショット

 「石炭鉱業はかつての先端かつ基幹となる産業だった。飯塚にはその炭鉱遺構が市内各地に残されている」と鵜狩氏。鹿児島から九工大に進学した鵜狩氏もその歴史に引かれ、訪ねて回ったという。

大学誘致で再び街に活力を

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