ブラウザ内でPostgresのWASM版を利用できる「postgres.new」を発表 Supabase全てのクエリをブラウザ内で直接実行 基盤技術に「PGlite」を採用

Supabaseは、AI支援を利用しながら、ブラウザ内で直接動作する「Postgres」データベースを即座に幾つでも起動し、サンドボックスとして使用できる「postgres.new」を発表した。

» 2024年08月15日 08時00分 公開
[@IT]

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 Supabaseは2024年8月12日(現地時間)、AI(人工知能)支援を利用しながら、ブラウザ内で直接動作する「Postgres」データベースを即座に幾つでも起動し、サンドボックスとして使用できる「postgres.new」を発表した。このPostgresデータベースは近いうちに、Amazon Web Services(AWS)のオブジェクトストレージサービス「Amazon S3」にデプロイ(展開)できるようになる見込みだ。

postgres.newの画面(提供:Supabase) postgres.newの画面(提供:Supabase)

 PostgreSQL(Postgresとも呼ばれる)はオープンソースのリレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)。SupabaseはPostgresの表記のみを使用している。Supabaseは、GoogleのモバイルおよびWebアプリ開発プラットフォーム「Firebase」に代わるオープンソースプラットフォーム「Supabase」を提供するシンガポールの新興企業だ。

 postgres.newでは、データベースが大規模言語モデル(LLM)と組み合わされており、以下のようなことが可能だ。

  • ドラッグ&ドロップでCSVファイルをインポートし、即座にテーブルを生成
  • レポートの生成とエクスポート
  • チャートの生成
  • データベースダイヤグラムの作成

 これらは全てブラウザ内でローカルに完結する。Supabaseは「postgres.newは、PostgresとAIチャットbot『ChatGPT』を組み合わせて、単一のインタフェースで利用するようなものだ」と述べている。

 Supabaseは、postgres.newを発表したブログ記事で公開したデモ動画で、以下のようなユースケースを紹介している。

  • 素早くクエリを実行して可視化したいCSVファイルをpostgres.newにインポートし、データベースのようにSQLクエリを実行する
  • ChatGPTの助けを借りてSQLを作成しているが、正しく動作するかどうか確認したい。そこでpostgres.newで実際のデータベースに対して、作成したSQLを実行する
  • サイドプロジェクトに取り組んでいて、データベースを作成する時が来た。postgres.newを用いて希望を記述するだけで、AIがER(エンティティ関係)図の作成やSQLの移行を肩代わりしてくれる

全てのクエリをブラウザ内で直接実行 postgres.newの基盤技術「PGlite」とは

 postgres.newでは、全てのクエリがブラウザ内で直接実行される。リモートのPostgresコンテナやWebSocketプロキシは存在しないという。

 これは、英国の新興企業Electric DBのElectricSQLチームが数カ月前にリリースした、「PGlite」を用いて実現されている。PGliteは、PostgresのオープンソースのWebAssembly(WASM)ビルドであり、TypeScript/JavaScriptクライアントライブラリにパッケージングされている。

 PGliteを使用すると、追加の依存関係なしにブラウザ、Node.js、BunでPostgresを実行できる。そのため、PGliteがフルバージョンのPostgresデータベースよりも適していると考えられるさまざまなユースケースがある。その中には、ユニットテストとCI(継続的インテグレーション)テスト(PGliteの起動、終了が非常に高速であることを利用する)、ローカル開発(フルPostgresの代わりにPGliteを使うことによる開発環境の簡素化)、リモート開発またはローカルブラウザ内のWebコンテナ(PGliteが非常に軽量であることを利用する)などが含まれる。

postgres.newの開発目的

 Supabaseは、主に以下の目的を実現するために、postgres.newを開発したと説明している。

AI主導の開発

 従来の製品やサービスにおけるPostgresとAIのやりとりを見直し、PGliteをLLM(現在はGPT-4o)と組み合わせ、LLMが権限の制限やユーザーの確認なしで、PGliteを完全に制御できるようにする。Supabaseは、これにより、AIがより効果的に機能するとしている。

Postgresのサンドボックス化

 PGliteはブラウザで実行されるため、高速であり、使い捨て可能だ。この特徴を利用して、PGliteを数多く繰り返し起動し、慣れ親しんだPostgresインタフェースでデータ分析できるようにする。

極めて安価なデータベース

 PGLiteはまだ初期段階にあるが、Amazon S3への保存と読み出しが可能な安価なデータベースを多数起動できる可能性がある。これを可能にし、Supabaseコミュニティーで見られるさまざまなユースケースをカバーする。

今後の計画

 Supabaseは、早期かつ頻繁なリリースを目指しており、以下のような機能を今後提供する計画だ。

  • データベースをAmazon S3にデプロイし、インターネット上のどこからでもアクセスできるようにする(当初は読み取り専用)
  • 「Microsoft Word」ドキュメント、画像(画像埋め込み経由)など、サポートするファイル形式を追加する
  • クラウド開発プラットフォームの「CodeSandbox」と同様に、独自のURLを用いて他のユーザーとデータベースを共有できるようにする
  • PGliteデータベースは現在、IndexedDBに保存されているが、ホストファイルシステムに直接ファイルを保存できるようにする
  • データベースのpg_dumpを実行し、任意のPostgresデータベースに復元できるようにする

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