用語「ASI(人工超知能)」について解説。AGI(汎用人工知能)が人間と同等の知能を持つのに対し、ASIはそれを超えて、人間をはるかに超える知能を持ち、あらゆる分野で最も優れた能力を発揮するAIのことを指す。また、ASIは自律的に自己改善を行う特徴を持つとされている。
人工超知能(ASI:Artificial Superintelligence、または超知能:Superintelligence)とは、人間の知能をあらゆる分野で超越し、自己学習を通じて自律的に成長し続ける人工知能(AI)のことを指す。ASIは、人間をはるかに上回る知的能力を持つため、科学、技術、芸術など多岐にわたる分野で画期的な発明や発見をもたらす可能性がある。その結果、人類の仕事や生活から社会の構造まで、これまでにない劇的な変化を遂げると予測されている。
似た概念に「汎用(はんよう)型のAI」を意味する「AGI」がある。AGI(Artificial General Intelligence:汎用人工知能、直訳するなら「人工汎用知能」)とは、特定のタスクに限定されず、複数の知的活動(タスク)を人間と同等にこなせるAIのことを指す。AGIが人間の知能と同等であるのに対し、ASIはその知能をはるかに超え、あらゆる面で人間を凌駕(りょうが)する点で大きく異なる(図1)。
かつて(2021年以前)、「AGI」という用語は、「特化型AI」との違いを明確にするためによく用いられていた。特化型AIとは「特定のタスクを専門的に処理するAI」のことであり、従来のAIはそのほとんどがこのタイプのAIだった。例えば「写真画像から人物を認識するタスク」を専門的に処理するAIなどが、特化型AIの一例だ。
これに対し、(2021年以前の)一般的な日本人が思い描いていた“AI”とは、あらゆる知的活動(タスク)を人間と同等レベルで行う「ドラえもん」のようなAIだった。このようなAIを「特化型AI」と明確に区別するために、「AGI」という用語が定義されていた。
しかし、2022年以降の生成系AI(GenAI、生成AI)の登場により、「特化型AI」から「AGI」へとAIが進化する“中間の過程”に「生成AI」が加わった。生成AIは、テキストや画像、音声などに対して複数のタスクを処理できる“進化上の中間的なAI”として位置付けられる(と筆者は考えている)。
さらに、2023年以降、この3段階の進化の先に「ASI(人工超知能)」が加えられて、新たに議論され始めた。例えば、OpenAIは2023年5月22日に「超知能のガバナンス」という記事を発表し、次のように述べている。「現状からすると、今後10年以内(2032年まで)にAIシステムがほとんどの分野で専門家のスキルレベルを超え、今日の最大手企業と同程度の生産活動を実行できるようになる」という考えを示し、「AGIよりも大幅に優れた能力を持つ将来のAIシステムであるASIについて考える時期が来た」として、ASIに対する研究と議論を呼びかけている。
まとめると、AIの進化は次の4段階に分類される(※これは筆者の認識であり、人や組織によって見解が異なる可能性がある)。
ちなみに、AIがさらに優れたAIを再帰的に創造していくことで、人間を完全に超える圧倒的に高度な知性が生み出されるとする「シンギュラリティ(Singularity:技術的特異点)」と呼ばれる仮説も、ASIに関連する。ASIは、このシンギュラリティの先にあるAIと見なせる。2021年以前では、「シンギュラリティは2045年に到達する」と言われていたが、今では「かなり早い段階で(OpenAIの記事例では2032年までに)シンギュラリティに到達してASIに進化する」と考える人や企業が増えてきている。
以上、ASIの利点を中心に説明してきたが、懸念点も多く存在する。例えば、AIがASIに進化した場合、その制御が人間の手に負えなくなるリスクがある。制御不能に陥った場合、人類に大きな脅威を与える可能性があり、このリスクについての議論が今後ますます重要になると考えられている。
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