調査会社のABI Researchは、調査レポート「グリーンで効率的なデータセンター運営のための戦略的冷却技術」を公開し、2030年までにDCオペレーターが冷却だけで900TWhのエネルギーを消費すると予測した。
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調査会社のABI Researchは、2024年11月7日(米国時間)、調査レポート「グリーンで効率的なデータセンター運営のための戦略的冷却技術」を公開し、2030年までにデータセンター運営者が冷却だけで900テラワット時(TWh)のエネルギーを消費すると予測した。
データセンターの冷却と世界の動向について、同社は下記のように予測している。
デジタル化、人工知能(AI)、自動化により、データセンター(DC)のITインフラに対する要求が増加し、効果的な冷却ソリューションの必要性が高くなっている。コンピューティング能力の向上に伴って発生する熱が増大するため、パフォーマンス、安定性、機器の寿命を維持するために、冷却能力の大幅な増強が求められている。
世界のデータセンター数は2023年の1万978カ所から2030年までに倍増する見込みだ。2023年には、データセンター運営者が冷却だけで消費したエネルギーは300TWhに達しており、この数値は2030年までに3倍に増加、年平均成長率(CAGR)は15%になると予測されている。この予測は、新旧のデータインフラに対する電力供給と冷却の課題がいかに深刻であるかを浮き彫りにしている。
アイルランドのダブリンにあるGoogleデータセンターに対する開設計画却下やドイツでの規制措置は、データセンターがもたらすエネルギーと持続可能性の課題が増大していることを示している。データセンターの影響を軽減するために、エネルギー、水、物理的空間、炭素排出量に対する規制だけでなく、再生可能でカーボンフリーなエネルギー源を導入する緊急性が高まっている。
ABI Researchの持続可能技術担当シニアアナリストのリティカ・トーマス氏は次のように述べている。「冷却負荷だけでもデータセンターのエネルギー消費の最大40%を占めている。効果的な冷却戦略には、電力使用効率(PUE)、水使用効率(WUE)、熱管理を最適化し、運用コストを削減するために、技術に依存しない包括的なアプローチが求められている。エネルギー集約的なAIデータセンターでは、事業者は環境と社会への負荷を最小限に抑えるデータセンター運営や、環境影響の評価、再生可能エネルギーの活用などの対応に迫られている」
エネルギー効率指令(EED)、データセンター向け欧州行動規範(EU DC CoC)、アメリカ暖房冷凍空調学会(ASHRAE)規準、ISO 50001エネルギー管理システム、シンガポールのグリーンデータセンター標準などによって、データセンター運営者はエネルギーや水の使用、二酸化炭素排出量の規制圧力を受けている。トーマス氏は次のように語る。「冷却コストは運営者が対処しなければならない大きな間接費となっている。汎用(はんよう)型のアプローチでは、データセンターの規模、場所、インフラのニーズ、コスト、地域の規制、ワークロードなど、効率的な冷却ソリューションを設計するために不可欠な要素を考慮できない」
「データセンター運営者は先を見越して、インフラレベルでCarrier Global Corporation、Danfoss、Daikin、Johnson Controls、Rittal、Schneider Electric、STULZ GMBH、Trane、Vertivなどの企業から提供されるハイブリッドおよびモジュール型の冷却技術を導入しており、Green Revolution Cooling、Iceotope、LiquidStack、Submerといった企業からの機器レベルの液体冷却や浸漬冷却ソリューションと組み合わせて使用されている」(トーマス氏)
「2024年現在のデータセンター冷却ソリューションは、高いハードウェア効率、AI駆動の監視、予測メンテナンス、DCIM(データセンターインフラ管理)/BAS(ビルディングオートメーションシステム)のシームレスな統合を提供し、IT機器の寿命を延ばし、エネルギー使用量を削減している。運用コストの削減、環境影響の報告、炭素削減、効率的な冷却は、今後の持続可能なデータセンター成長に不可欠だ」とトーマス氏は結論付けている。
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