「経営幹部の99%がAI投資を推進」 それでも現場のAI導入が鈍化する3つの要因とは? Slack調査半数近くが「業務でのAI利用を知られたくない」そのワケは?

Slackは世界中のデスクワーカーを対象にした調査「Workforce Index」の2024年秋版を公開した。経営幹部がAI投資を積極的に推進する一方、AIの導入率は鈍化していたという。

» 2024年12月07日 08時00分 公開
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 Salesforce傘下のSlackは2024年11月12日(米国時間)、世界15カ国の1万7000人以上のデスクワーカーを対象に実施した調査「Workforce Index」の2024年秋版を発表した。

 同調査はオーストラリア、ブラジル、カナダ、フランス、ドイツ、インド、イタリア、日本、オランダ、シンガポール、スペイン、スウェーデン、スイス、英国、米国の1万7372人を対象に、Qualtricsの管理下で行われた。SlackやSalesforceの従業員や顧客は調査対象に含まれていない。

 同調査では、「週30時間以上の勤務を行い、『データを扱う仕事、情報を分析する仕事、創造的思考を伴う仕事』のいずれかに従事している回答者や、経営幹部、中級管理職、専門職といった役職者をデスクワーカーとして定義している。

経営幹部の99%がAIに全力投球も、導入率は鈍化

 調査によると、経営幹部の99%は2024年にAI(人工知能)に投資する予定と回答しており、72%が重要な投資対象と位置付けている。ほとんどの経営幹部(97%)はAIを事業運営に導入することの緊急性を認識している。

 デスクワーカーのAI導入率が2023年9月から2024年3月にかけて20%から32%まで増加した一方、過去3カ月間のAI導入率の伸びが鈍化した国もある。フランスではAIの使用経験があるデスクワーカーは31%から33%、米国では32%から33%とそれぞれ1〜2ポイントの伸びにとどまった。

デスクワーカーにおけるAI導入率の変化(提供:Slack) デスクワーカーにおけるAI導入率の変化(提供:Slack)

 AIに対する期待も冷めつつあり、世界全体では6ポイント低下した(47%から41%)。この傾向に拍車を掛けているのが米国だ。過去3カ月の間にAIが仕事をこなしてくれることに期待していると答えたデスクワーカーの割合は9ポイント低下(45%から36%)した他、フランスでも期待率が12ポイント低下(53%から41%)した。また、日本と英国でも期待率が低下していたという。

AI導入鈍化、3つの要因

 Slackはこれらの調査結果を踏まえ、企業のAI導入が失速する阻害要因を次のように考察している。

要因1:AI利用に対する抵抗感

 会社でどのようなAIの使用が許可されているのか、多くのデスクワーカーは把握できておらず、AIの職場での使用が、社会的/職業的にどのくらいの範囲で許容されるのか、デスクワーカーの見解は割れている。

 メッセージの作成、新しいアイデアのブレインストーミング、データ分析、コードの作成といった、職場でよく行われる11のタスクのリストを提示したところ、デスクワーカーの半数近く(48%)が、「(上記のうち少なくとも一つに)AIを使用していることを上司に知られるのは気が引ける」と回答した。

 また「自分がAIを使用していることを上司に知られるのは抵抗がある」理由は以下の通り。

  • AIの使用が不正行為のように感じられる(47%)
  • 能力不足と判断される恐れがある(46%)
  • 怠惰な印象を与える恐れがある(46%)

 「会社の方針でAIの利用が推奨されていない、または許可されていない」という理由は最も少なかった(21%)。Slack Workforce Labの責任者であるクリスティーナ・ジャンザー氏は「企業のリーダーは、AIを導入するに当たって、『仕事を速く、効率的に片付けられるかどうか』という実務的文脈だけでなく、『AIを使ったことを知られたら、周りの人にどう思われるか』という社会的文脈を考える必要があると認識すべきだ」と述べている。

要因2:AIは「言われているほどすごくない」という認識

 デスクワーカーが最も望んでいるのは、AIの活用により、自身の時間を有意義な活動に集中させてくれることだ。

 「AIが最も適している一般的な仕事は何か?」という質問では、「管理タスク(87%)」が最も多く、「中核的な仕事プロジェクトの支援(80%)」「革新的または創造的なプロジェクト(81%)」と続いた。

 しかし、AIはより多忙な仕事を招き、1日の仕事量が全体的に増える可能性をデスクワーカーは懸念している。

 「もしAIがあなたの仕事時間を週に数時間節約してくれるとしたら、理想としてはその時間をどのように使いたいか?」という質問では、「仕事以外の活動に使いたい」が最も多く、次いで「学習やスキルアップに使いたい」だった。

 「AIによって週に数時間、仕事の時間を節約できるとしたら、現実的にはその時間を何に使うだろうか?」と質問したところ、「より多くの管理タスク」が最も多く、次いで「既存の主要プロジェクトへのさらなる取り組み」と回答した。

 ジャンザー氏は「デスクワーカーは、AIで時間を節約することで、かえって仕事の負担が増えるのではないかと懸念している。しかし、企業のリーダーは従業員がより短時間で多くの仕事をこなすことを期待している。この結果は、リーダーにとっては『生産性』の意味を見直す機会に、従業員にとっては仕事の量だけでなく質も高めるきっかけになるだろう」と述べている。

要因3:AI利用のためのトレーニング不足

 2024年8月の時点で、自分がAIに精通していると考えるデスクワーカーは7%だった。大半のデスクワーカー(61%)は、AIの使用方法に関する学習に費やした時間が5時間未満で、30%は自主的な学習や試行錯誤も含め、AIに関するトレーニングを一切受けていないと回答している。

 「デスクワーカーの半数近く(45%)は、AIの使用に関して明確な許可を得ていない。AI投資を推進するなら、AIの利用が許可される範囲(Permission)を明確に定め、従業員に対する教育(Education)とトレーニング(Training)を実施する必要がある」と、Slackは述べている。

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