DevOpsコラボレーション強化ガイド 9つの実践的なヒントを紹介成功するDevOpsはチームワークに優れている

TechTargetは「コラボレーションによってDevOpsを改善する方法」に関する記事を公開した。DevOpsで重要なのは、ツールや個人の頑張りではなく、コラボレーションだ。本稿では、DevOpsにおいてコラボレーションが重要な理由と、コラボレーションの効果を高めるためのヒントを紹介する。

» 2024年12月26日 08時00分 公開
[Stephen J. BigelowTechTarget]

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 TechTargetは2024年11月6日(米国時間)、「コラボレーションによってDevOpsを改善する方法」に関する記事を公開した。

画像 コラボレーションによってDevOpsを改善する方法(提供:TechTarget)

 DevOpsは、これまでプログラマー、テスター、運用チームを分断してきた従来のサイロ構造を取り払い、企業がより迅速に反復とイノベーションを実施できるようにする。だが、最新のツールや手法が多くのメリットをもたらすとしても、DevOpsの成功は人と人とのコラボレーションにかかっている。プロジェクトの機能目標やパフォーマンス目標を実現するために、ソフトウェアプロジェクトマネジャー、利害関係者(ステークホルダー)、開発チーム、運用チームが緊密に連携しなければならない。効果的にコラボレーションしなければ、DevOpsは失敗に終わるだろう。

DevOpsとは

 DevOpsは、ソフトウェア開発(Dev)とIT運用(Ops)を融合した概念だ。DevOpsの目的は、DevとOpsの両機能を単一のチームや機能に統合することではなく、ソフトウェアプロジェクトのライフサイクル全体を通じて、開発チームと運用チームの協力を促進する建設的な方法論や一連の実践方法を確立させることにある。DevOpsを適切に実装し育てることで、ソフトウェア開発、デプロイメント、継続的な管理の効率と速度が上がり、継続的な反復(イテレーション)、デリバリー、改善が絶え間なく実施されるアジャイルな職場文化を育むことができる。

画像 DevOpsは、継続的インテグレーション、開発、デリバリー、デプロイ、フィードバックが繰り返される「終わりのないループ」と捉えることができる

 つまり、DevOpsは具体的な形を持たない。ソフトウェアツールや製品のように購入やインストールが可能なものではない。DevOpsは共に考え、共に働くための方法論だ。DevOpsの実践は、企業ごとの規模、構造、ニーズに応じて多様な形を取ることができる。

DevOpsにおけるコラボレーションの重要性

 先に述べたように、DevOpsの成功はチーム間のコラボレーションにかかっている。DevOps環境をしっかりと実装、育成すれば、次のようなさまざまな重要なメリットが得られる。

生産性

 コラボレーションによって、チームメンバーはより迅速かつ効率的に連携して作業ができるようになる。迅速に作業できれば、チケットの解決やスプリントなどの厳しい締め切り期限を守れるようになる。また、DevOpsは、ワークフローや複数のプロジェクトをより効率的に処理する新しい方法をチームに提供する。

市場投入までの時間短縮

 生産性が上がることで、開発したプロダクトを素早く市場に投入できるようになる。DevOpsチームは、新製品や更新を従来のソフトウェア開発手法よりも迅速に、しかも欠陥の少ない形で提供できるようになる。最終的には、組織の市場競争力の向上につながる。

品質

 コラボレーションによってソフトウェアチーム、運用チーム、ビジネスチームは、合理的な目標を設定し、顧客のニーズと期待に関する知識を共有できる。また、技術的な制約内で運用し、問題や課題を特定し、連携して障害を克服できる。こうした点は全て、ソフトウェアの品質向上につながる。

イノベーション

 DevOpsをはじめとするアジャイル開発パラダイムが持つ迅速な反復性によって、失敗を恐れない姿勢を育むことができる。独創的な新しいアプローチ(ソフトウェアの新しいアルゴリズムやデプロイメントの新しい方針など)を試すことは、簡単でコストもかからない。コラボレーションはイノベーションの触媒になることが多く、市場で自社製品を際立たせる機能や特徴につながる可能性がある。

 これらの広範な「DevOpsの利点」は定量化が難しい場合もあるが、成功を収めるためにはDevOpsの実践が欠かせない、技術的およびビジネス上の目標は多数存在する。例えば以下のような目標だ。

継続的アプローチ

 継続的インテグレーション(CI)や継続的デリバリー(CD)、または継続的デプロイメント(CD)といった開発手法は、洗練されたワークフローと強力なコラボレーションに依存している。信頼性の高いCI/CD環境をサポートするには、DevOpsのコラボレーションが欠かせない。

パフォーマンスと信頼性

 アプリケーションなどのソフトウェアは、高負荷時にも良好なパフォーマンスを発揮し、何らかの理由で「中断」したとしても最小限に抑える必要がある。これを維持するには、開発者と運用チームが密接に協力し、パフォーマンスデータやログデータを共有し、コードを適切に変更、更新して実行環境へソフトウェアをデプロイする必要がある。

自動化

 DevOpsの反復的な特性は、開発、テスト、デプロイメントのサイクルに関わる多くの日常的な作業を、自動化技術によって自動化できるかどうかに左右される。開発やデプロイメントがサイロ化された環境では、自動化の価値も実用性も大幅に低下する。自動化が効果的で有益であり続けるためには、強力なコラボレーションが不可欠だ。

Infrastructure as Code(IaC)

 DevOpsがもたらすワークフローとコラボレーションの強力な支援は、IaC(Infrastructure as Code)のような高度なソフトウェア駆動型インフラ技術の基盤としても重要だ。IaCを利用すれば、プロビジョニングや構成を従来の手作業による手法ではなく、ソフトウェア(Microsoftの「PowerShell」スクリプトのような自動化ツールなど)を使ってITインフラの仕様を決め、プロビジョニングできる。IaCの適切な実装と保守には、コラボレーションが不可欠になる。

監視

 アプリケーションのパフォーマンスと健全性のデータを収集するには、ソフトウェアによる計測が必要だ。従来、モニタリングは手動で実施されるプロセスだったが、DevOpsにおけるコラボレーションは、モニタリングやログツールの標準化と自動化を可能にするワークフローを定義するのに役立つ。これによって、製品品質を向上させることができる。

ガバナンス

 データ収集と収益創出のためにソフトウェアを利用する企業が増えるにつれ、コーポレートガバナンスと規制順守の重要度が増している。DevOpsのコラボレーションは、チーム間の連携を強化し、製品開発と技術インフラをビジネスニーズに合わせて調整できるようにする。その結果、企業はソフトウェア製品の開発、デプロイ、管理、保守の方法を細部まで把握できるようになる。

画像 自動化されたコード準備からCI/CDパイプライン、オーケストレーション、モニタリング、フィードバックに至るまで、コラボレーションはDevOpsのあらゆる要素を支える原動力だ

DevOpsにおけるコラボレーションを改善するための9つのヒント

 DevOpsでは、コラボレーションの障害(文化が変わることへの抵抗や自動化によって生じるボトルネックなど)に直面することがある。また、コラボレーションの機会が増えると、ガバナンスの複雑化やセキュリティの新しい脆弱(ぜいじゃく)性といった新しい課題が発生する可能性がある。

 DevOpsにおけるコラボレーションのリスクを最小限に抑え、障害を克服し、メリットを最大限に高めるために、以下の9つのヒントを活用してほしい。

1.コラボレーションの文化を育む

 「サイロの解消」は難題かもしれないが、DevOpsのコラボレーションを成功させるためには欠かせない。多くの企業は、単純なプロジェクトで新しいプラクティスやワークフローを開発することから始め、その後徐々にコラボレーションの機会を広げている。DevOpsは共同作業における方法論であり、障壁を取り除き、相互支援を強化することを目的としている。しかし、DevOpsの文化を正しく育むには、組織全体がDevOpsを受け入れ、支えていく意志を持たなければならない。経営陣の支援が欠けていたり、既存の企業文化からの抵抗があると、DevOpsの取り組みの利益と効果が制限される可能性がある。

2.方法論の洗練度を高める

 DevOpsは、アジャイルの方法論に基づいており、コラボレーション、柔軟性、改善を促進することを目的としている。だが、ビジネスの規模、種類、ニーズを問わず使える“唯一の方法論”は存在しない。チームの中でコラボレーションや対話をしながら、特定のビジネスに合わせてDevOpsパラダイムの適応性や洗練度を高める機会を見つけ出すことが重要だ。そうすれば、ビジネスとその固有のニーズに応じて、より迅速かつ効率良く成果を生み出すことができるだろう。

3.職務と職責を定める

 コラボレーションとは、全てのことに全員が関与することではない。重要なのは各チームの職務と職責を明確にし、各チームがどのように連携すべきかを定めることだ。例えば、プロジェクトマネジャーは顧客のニーズやプロジェクトの目標を理解し、それをチームが実行できるアクションに落とし込む。ソフトウェアチームは要件をコードに変換する。運用チームは本番環境で結果を展開して監視する。逆に、開発者が新しいプロビジョニングツールを選定したり、システム管理者がソフトウェアアルゴリズムを設計したりすることは適切ではないことが多い。

4.トレーニングと共有のメカニズムを築く

 開発チーム、運用チーム、ビジネスチームの間にクロストレーニングや情報共有セッションの機会を設けるべきだ。クロストレーニングのメカニズムには一般的に「ワークショップ」「トレーニングセッション」「非公式なランチ」「ラーニングミーティング」が含まれる。こうした機会は、チーム間の幅広い交流を促し、他のチームのニーズ、能力、制約を理解するのに役立つ。各当事者が相手の視点を理解すれば、コラボレーションの質が高まる。

5.自動化によって生じる複雑さを抑える

 DevOpsによって日常の業務サイクルのスピードを上げられる。ただ、DevOpsに用いるワークフローや自動化によって、それまでの開発サイクルやデプロイサイクルが複雑になる可能性がある。DevOpsを実践するに当たって、プラクティスやツールで新たなボトルネックを作ったり、DevOpsのパラダイムが約束する柔軟性を制限したりしないように注意が必要だ。自動化とポリシーをコラボレーションよりも優先させてはならないということだ。

6.セキュリティのリスクに対処する

 コラボレーションをするためには、チーム間で作業を共有する必要がある。ここでいう「作業の共有」には、ソフトウェアのさまざまなコンポーネントやビルドへのアクセスを相互のチームメンバーに許可するということも含まれる。だが、許可されていない従業員がワークフローや製品にアクセスできてしまうと、セキュリティの問題が生じる場合がある。そのため、ビジネス部門やテクノロジー部門のリーダーは、DevOps環境を構築するときに、プルリクエスト、ロールベースのアクセス制御や、セキュリティと共有ワークフローに関する問題に対処する必要がある。

7.適切なガバナンスを確保する

 企業は、自社のソフトウェア製品の結果に対する最終責任を負っている。そのため、ソフトウェアの品質基準、デプロイ基準、モニタリングと報告の要件が重視される。だが、コラボレーションが盛んな環境では、責任範囲の特定が難しくなることがある。仕事の透明性やコラボレーションが高まるにつれ、ビジネス部門のリーダーにとってはガバナンスを正しく確保することが重要になる。

8.互換性のあるツールを選ぶ

 DevOpsにおいてコラボレーションは重要だが、開発、デプロイ、モニタリング、コラボレーションにおいて互換性のあるツールを選ぶことも同じくらい重要だ。ツールを正しく選択すれば、ワークフローと自動化を効率化しつつ、セキュリティとガバナンスもサポートできる。ツールの選択を誤ると、ボトルネックやセキュリティ上の脆弱性を生む可能性がある。DevOpsで利用されるツールには以下のようなものがある。

  • バージョン管理機能を備えたコードリポジトリ(例:「Git」)
  • コンテナツール(例:「Kubernetes」や「Docker」)
  • チームコラボレーションツール(例:「Microsoft Teams」や「Slack」)
  • プロジェクト管理ツール(例:「Jira」や「Trello」)
画像 リーダーシップは、DevOpsの利点を伝えることで、組織全体の支持を得るとともに、チーム間のコラボレーションを促進しなければならない

9.具体的な成果を評価し最適化する

 企業は、コラボレーションとDevOpsがビジネス上どの程度のメリットをもたらすかを把握したいと考えている。そのためには、多様な指標に基づいてコラボレーションの取り組みを継続的かつ定期的に評価する必要がある。

 その基準には、プロジェクト経験に基づく改善提案のような裏付けの乏しい主観的な基準もあれば、ヘルプチケットの解決数やバグの修正数といった具体的な成果を特定する客観的な基準もある。こうした主観的評価や客観的評価を利用することで、企業はコラボレーションやDevOpsの取り組みを改善するための提案を行い、実施することが可能になる。

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