「APIテストを生成AIでレベルアップさせる」には何に注意し、何を準備しなければならないのか効果的な生成AI活用のための6つのポイント

TechTargetは2025年1月16日、「APIテストでの生成AI利用」に関する記事を公開した。生成AIは、高度なAPIテスト手法の開発において大きな可能性を秘めているが、効果を最大化するにはコツがいる。

» 2025年03月28日 08時00分 公開
[Priyank GuptaTechTarget]

この記事は会員限定です。会員登録(無料)すると全てご覧いただけます。

 TechTargetは2025年1月16日(米国時間)、「APIテストでの生成AI利用」に関する記事を公開した。

画像 APIテストに生成AIを利用する長所と短所(提供:TechTarget)

 生成AIは、高度なAPIテスト手法の開発において大きな可能性を秘めているが、持続可能で長期的な導入を実現するには、適切なツールの活用方法を模索し、試行錯誤する時間が必要になる。短期的には、生成AIツールを補助的な形で導入することで、チームはその能力やバイアスをより深く理解できるようになり、結果としてテスト全体の効率を向上させられる可能性がある。

APIテストの基本をおさらい

 APIは、Webアプリケーションにおける構成性(Composability)、再利用性(Reusability)、統合(Integration)の基盤となる。APIは、成熟したエコシステムの中で、データ交換と機能拡張のための標準化された手段を提供する。そのため、APIを包括的にテストする場合、開発者は複数の複雑な側面に対処する必要がある。主に対処が必要になるのは、次のような側面だ。

  • 後方互換性とAPIのバージョン管理
  • データ依存関係と仕様(コントラクト)順守
  • テストデータの管理と進化
  • データ生成と複雑なシナリオのプログラム作成
  • 環境の一貫性(パリティ)と設定管理
  • 密接に統合されたAPIのロックステップ(同期)テスト
  • サードパーティーとの統合テスト
  • パフォーマンステストと負荷テスト

 これまでのテスト手法では、データセットを静的に生成し、応答の妥当性を検証する方法を取っていた。こうしたテスト手法は一般的に効果はあるが、APIの複雑な相互作用や応答から生じる想定外の機能への配慮が十分にできない可能性があった。

 例えば、APIの中には国や地域ごとに異なるバリデーション(検証)ルールを適用するものがある。連続するイベントが順番通りに発生しない場合(つまり、時系列が乱れた場合)に動作が変わるAPIもある。このような変動要素に対応するには、環境、ユーザー、パフォーマンス、スループットなどの要因についてより精密にシミュレーションし、より正確なテスト結果を得るとともに、想定外の問題を事前に特定する必要がある。

APIのテストに生成AIを利用するメリット

 ツールや計画が適切であれば、大規模言語モデル(LLM)や「ChatGPT」、さらに「GPT」モデルを基盤とした「RestGPT」のようなアプリケーションを利用して、新たなテスト手法を創造的に構築できるようになる。

 生成AI技術を効果的に導入するには、コンテキストに応じた構成、質の高い学習データ、カスタマイズされたテストパラメーターが重要となる。以下では、生成AIがもたらす新たなメリットと潜在的な利益を概説している。チームが手動作業と自動化のバランスを最適化する際に役立つはずだ。

データ管理

 言語モデルは、APIのコントラクト、データ型、シナリオに基づいて動的にテストデータを生成できる。これによって正常終了するケースだけでなくエラーケースも含めた広範なカバレッジを実現し、事前生成(preemptive)とアドホック(ad hoc)の両方のデータを生成できる。

応答とコントラクトの妥当性検証

 言語モデルはAPIのレスポンスを検証できる。生成AIは「JSON」や「XML」などの複数のデータフォーマットや「HTML」「REST」「SOAP」といった標準(規約)にも柔軟に対応できる。複数のバージョンにまたがってテストを処理することで、旧バージョンとの互換性も確認できるようになる。

広範なシナリオカバレッジ

 生成AIは、テストシナリオの初期リスト作成、カバレッジの不足部分の特定、既存のテストセットの補強などに利用できる。エッジケース(極端なケース)のカバー範囲を広げるだけでなく、APIの進化に伴いテストスイートを評価、拡張することも可能だ。これによって、手作業による介入を最小限に抑えながら、包括的なテスト環境を構築できる。

 さらに、APIの複数バージョンや異なるAPIの利用者、その他の複雑なシナリオに対応するデータやレスポンスを、コンテキストに応じて自動生成できる。この機能によって、手動でのデータ作成やテスト実行にかかるコストを削減できる。

自動化の強化

 生成AIのデータ生成と検証機能を利用すれば、APIテストの自動化をさらに強化できる可能性がある。特に、相互依存するシステム間でのロックステップAPIオーケストレーション(同期的なAPI呼び出しの自動実行)にも対応できる。動的かつ複雑な環境では、生成AIが一貫性のあるデータソースとして機能し、統合システムの信頼性を確保するためのテストデータを提供できる。

脆弱(ぜいじゃく)性の特定

 APIのコンテキスト、アプリケーションの役割、ユーザー、アクセス権限を生成AIに包括的に理解させることで、データ漏えいや権限昇格(Privilege Escalation)といったセキュリティ問題を特定できるようになる。適切に構成されたリクエストを作成し、必要な制御や検証が不足している箇所を発見することで、セキュリティを強化することができる。

進化に伴うコストの低減

 APIのバージョンが上がって利用者層が拡大してくると、後方互換性の確保やエラーチェックのために数十のバージョン、数百のシナリオを検証する必要が出てくる。こうした検証では、バージョンやシナリオごとにデータの生成と検証が必要となり、多大なコストと時間を要する。

 生成AIを活用することで、シナリオ作成やデータ生成、検証を効率化し、これらのコストを大幅に削減できる。さらに、反復的で単調な作業に費やす時間を減らし、チームは組織に直接的な価値をもたらす業務に集中できるようになる。

APIのテストに生成AIを利用する際の問題点

 APIテストに生成AIを使うことで多くのメリットが得られる。だが、生成AIにも限界はある。一部のトレードオフ(利点と欠点のバランス)については明確に認識できるものの、生成AIはまだ発展途上の技術であり、今後の統合プロセスにおいて予測しきれない影響が生じる可能性もある。

組織的な知識の喪失

 テストハーネス(テスト実行環境)を構築、運用するチームは、業務を通じてシステムの機能、エッジケース、システム内のデータ相関についての知識を蓄積している。しかし、自動化ツールに過度に依存してしまうと、経験を重ねることでしか得られない組織的な知識を失ってしまう恐れがある。こうした知識が不足すると、機能上の問題が起きたときに、徹底的なテストや時間のかかる非効率なコードレビューが必要になる。結果として、テストの柔軟性や問題解決のスピードが低下する可能性がある。

信頼性のばらつき

 生成AIの応答は一貫性に欠けることがあり、その結果、特定のテストケースにおける実行経路やアウトカム(結果)が変動し、“偽陽性”や“偽陰性”が生じる可能性がある。結果が予測不能だと、既存のセーフティネットの信頼性と有効性に対する信頼が揺らぎかねない。

専門スキルの必要性

 生成AIの動作(回答)は、プロンプトエンジニアリングによって大きく変わる。逆に言えば、プロンプトの設定が適切でないと、問題が発生した際に適切な対処ができない。このような状況では、専門家の助言が必要だが、プロンプトエンジニアリングの専門知識を持つ人材の確保、育成、維持は難しく、コストもかかる。AI活用の効果を最大限に引き出すには、適切なスキルを持つ人材をどう確保するかが重要になる。

リソースの大量消費

 生成AIは計算リソースを大量に消費する。特に、リアルタイムでAIを呼び出しながらテストを実行する場合、その負荷はさらに増大する。コストとリソース消費を抑えるためには、テストデータやシナリオを事前に調整し、AIの使用頻度を最適化するといったバランスの取れたアプローチが必要となる。

コンプライアンスの問題

 金融や銀行業界のように厳格な規制やコンプライアンス要件が求められる分野では、ソフトウェア開発ライフサイクル全体を通じて意思決定プロセスを説明できるようにしておく必要がある。生成AIを利用する場合もそれは同様だ。

 しかし、生成AIの説明可能性(Explainability)や透明性に関する疑問は残っている。そうした中で、完全に自動化されたAPIテストを導入するのは難しい。また、サードパーティーがホストするAIモデルを利用することで、機密データや知的財産が意図せず漏えいするリスクも懸念されている。

 これらの要因を考慮すると、特定の業界では生成AIの使用を慎重に進める必要があり、明確なセキュリティポリシーの策定が不可欠と言える。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

スポンサーからのお知らせPR

Test & Tools 記事ランキング

本日月間

注目のテーマ

4AI by @IT - AIを作り、動かし、守り、生かす
Microsoft & Windows最前線2025
AI for エンジニアリング
ローコード/ノーコード セントラル by @IT - ITエンジニアがビジネスの中心で活躍する組織へ
Cloud Native Central by @IT - スケーラブルな能力を組織に
システム開発ノウハウ 【発注ナビ】PR
あなたにおすすめの記事PR

RSSについて

アイティメディアIDについて

メールマガジン登録

@ITのメールマガジンは、 もちろん、すべて無料です。ぜひメールマガジンをご購読ください。