エンジニアとして長く活躍したい。それは、多くの人が望んでいることでしょう。そのために大切なこととは、一体何なのでしょうか?
最近、複数の「中堅・ベテランで活躍しているエンジニア」たちと話す機会がありました。それぞれの個別具体的な話は避けますが、エンジニアだったら誰もが知っているであろう日本のIT政策に関わるような機関で働いている責任者や、聞けば誰もが知っているであろう企業の情報システム部門のマネジャーのような方々です。
「責任者」「マネジャー」という言葉に、「現場を離れた人」といった印象を抱く方もいるかもしれません。しかし、彼らはいまもエンジニアリングの最前線で働く人々です。かつ、日々多くのエンジニアと接しています。
それぞれが働いている業界は全く異なり、話す機会も別でした。しかし、「長く活躍できるエンジニア」の話になった時、その内容が驚くほど一致していました――。
今回は「長く活躍できるエンジニア」にとって大切なことをお話しします。その話は、大きく分けると2つに大別できます。1つ目は、エンジニアとして仕事をする上での「視点」。もう2つ目は、関係者と接する時の「言葉遣い」です。
1つ目の「視点」について。
ある情報システム部のマネジャーは次のように言っていました。「多くのエンジニアは、技術的なことだけがエンジニアの仕事だと思っています。もちろん、技術的なことも大切です。しかし、エンジニアとして大成するためには、技術的なこと以上に、業務や経営(ここでいう経営とは、会社の方向性のこと)に対する深い理解が必要です」
この話を聞いた時、僕は、若かりし時の自分を思い出しました。プログラマーだった僕は、技術的なことに強いこだわりがありました。コードの書き方はもちろん、効率面やメンテナンス面などについても、「いかに美しく書くか」“だけ”にこだわっていました。もちろん、プログラムを書く上では、業務のことも多少は知る必要はあります。顧客から課題をヒアリングし、それを解決するためにはどうすればいいのか? も考えます。ですが、視点が業務よりも技術に向いていました。
なぜ、技術的なことだけでは大成できないのか? それは、業務の深い理解がないと、「そもそも、なぜこの業務はこうなっているのか?」「業務における、構造的な問題があるのではないか?」といった、業務そのものの目的や意味まで視点が広がらず、全体を最適化できないからです。
マネジャー氏は、こう続けます。
「エンジニアは、『このプログラムをどのように実装するか』といった、個別具体的な内容と、『この業務の目的や意味は何か』『他の業務との相互関係性は何か』といった抽象度が高い内容との間を行ったり来たりしながら仕事をします。技術的な視点に加えて、業務の深い理解が必要なのは、そのためです」
2つ目の「言葉遣い」について。
あるIT部門の責任者は次のように言っていました。「エンジニアの中には、IT業界にいないと分からない横文字を多用する人がいます。エンジニア同士の会話なら、むしろ専門用語を使った方が速く理解できる場合が多くあります。ですが、全ての人が専門的な知識を有しているわけではありません。『この人は優れているな』と思う人は、相手に合わせて、相手が分かる言葉で説明します。仕事をスムーズに進めるためには、相手に理解してもらったり、巻き込んだりする必要があるケースも多いからです」
自分の若かりし時を振り返ると、これも痛い指摘でした。「虚勢を張る」ではありませんが、若い頃はむしろ好んで、専門的な横文字を使っていたような気がします。
もっとも、だから僕はエンジニアとして大成しなかったのかもしれませんが(笑)。
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