少し話は変わるのですが、僕は以前プログラマーでした。最初に学んだのはアセンブラです。それからC言語、その後C++やJavaに移って……というプログラマー歴です。
ちなみに、(もうほとんど覚えていませんが)アセンブラはホント難しかったです。それに比べたらC言語はずいぶん楽になりました。C++やJavaは、オブジェクト指向を理解するのが難しかったけれど、難しいところを乗り越えたらすごく楽しかったです。
そう思うと、人間が理解しやすくなったCやC++、Javaのような高級言語は、いまでいうところのノーコードみたいなものなのかもしれませんよね。
とはいえ、どんなに簡単になったとはいえ、プログラミングに関して何の知識もない一般の人から見たらプログラミングは難しい。そう考えると、業務知識があれば誰でも簡単にアプリケーションが作れるノーコード開発ツールは、画期的といってもいいのかもしれません。
逆に、あえてプログラミングをせずに「ノーコード開発ツールで回せる」ように、改めて業務をモデリングし直すのも、アリなのかも。複雑なアプリケーションよりも、誰でも理解できるシンプルな仕組みの方が効率が良いし、メンテナンス性も高いじゃないですか。
ただ、ノーコード開発ツールを使うにしても、プログラミングの知識があった方が「断然いいな」とも思っています。
僕はkintoneを日常的に使っていますが、「プログラミングの観点から言えば、○○ができるはずだけど、ノーコードではどうかな?」って考えることがよくあります。データの構造やプログラミングの視点から、ノーコード開発ツールを使う。そうすると、ツール自体に関する細かなことをそれほど知らなくても、少し触れば「あ、やっぱりこうすればできるんだ」と、先を読みながら使いこなせるから、断然理解が早い。
これは、プログラミングの経験があるからこそだと思っています。
ちなみに、世の中には複数のクラウドソーシング(不特定多数の人に業務を委託する)サービスがありますが、先日検索してみたら、ノーコード開発ツールの案件も結構あるんですね。そういう意味では「プログラマーがいなくてもよくなった」のではなく、「エンジニアが活躍できる『ノーコードという新たな分野』が生まれた」と言えそうです。
このように考えると、「ノーコードによってプログラマーはいなくてもよくなるのか?」という問いに、「そんなことはない」と、僕は言いたい。
どんなにノーコード開発ツールが多くの業務改善を担うことになったとしても、深いレベルでの知識を持っていた方が問題解決しやすいし、基礎的な知識があるからこそ、簡単なツールをより使いこなせるようになる。そういう意味では、プログラマー……というより、ソフトウェアエンジニアはこれからも必要とされるでしょう。
もっとも、よく考えてみたら、プログラマーの仕事は「コードを書くこと」ではなく、「ソフトウェアで問題を解決すること」や、「仕事や日常をもっと簡単に、便利にすること」です。それはなくなるはずがありません。
ノーコード開発ツールに限らず、これからも新たなツールは出てくるはず。そうしたときに、いままでの技術「だけ」にしがみつくのではなく、取りあえず使ってみたり、新たな可能性を探ったりする。そうしたマインドがあれば、これからも活躍できるエンジニアになれるのだと思います。
さぁ、自信を持って歩んでいきましょう!
しごとのみらい理事長 竹内義晴
「仕事」の中で起こる問題を、コミュニケーションとコミュニティーの力で解決するコミュニケーショントレーナー。企業研修や、コミュニケーション心理学のトレーニングを行う他、ビジネスパーソンのコーチング、カウンセリングに従事している。
著書「Z世代・さとり世代の上司になったら読む本 引っ張ってもついてこない時代の「個性」に寄り添うマネジメント(翔泳社)」「感情スイッチを切りかえれば、すべての仕事がうまくいく。(すばる舎)」「うまく伝わらない人のためのコミュニケーション改善マニュアル(秀和システム)」「職場がツライを変える会話のチカラ(こう書房)」「イラッとしたときのあたまとこころの整理術(ベストブック)」「『じぶん設計図』で人生を思いのままにデザインする。(秀和システム)」など。
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