「オフィス出社の方が生産性は高い」「生産性の定量分析は良いことばかり」は間違い? 生産性に関する“4つの神話”がGartnerの調査で判明従業員の生産性に期待を寄せるCEOが増加

Gartnerは2025年3月26日、従業員の生産性に関する提言を発表した。人事部門のリーダーは従業員の生産性に関する4つの誤解に対処する必要があるという。

» 2025年04月16日 08時00分 公開
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 Gartnerは2025年3月26日(米国時間)、従業員の生産性を妨げている誤った“神話”として「AI(人工知能)を活用するとすぐに生産性が向上する」などの4つを示し、これらの神話に対して人事部門のリーダーが採るべき対策を紹介した。

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 Gartnerによると2025年以降、企業成長の原動力として従業員の生産性に期待を寄せるCEOが増加している。こうした中、人事リーダーは、企業の成長目標の達成を阻む可能性がある「生産性に関する新たな4つの誤解」に対処する必要があると、同社は指摘している。

もはや“神話”とも言える「4つの重大な誤解」とは

 Gartnerは2024年11月に、CEOや上級経営層450人以上を対象にアンケートを実施。それによると企業経営と成長の妨げとなっている最大の課題は「人材および労働力」(23%)と「企業文化および人材マネジメント」(13%)だった。

 同社は、ナレッジワーカー(知識労働者)の生産性を評価するための実用的な2つの指標を特定しており、それによって売り上げ、収益性、ブランド評価といったビジネス成果が向上することが分かっている。Gartnerが特定した指標とは、従業員が質の高い仕事を期間内に一貫して実施すること(つまり、従業員の効率性)と、成果に直結し、企業の優先事項に沿った業務に従業員が時間とスキルを割くこと(つまり、従業員の価値創造)だ。

 こうした成果を実現するためには、人事部門は「生産性に関する4つの新たな誤解(神話)」に取り組む必要がある。

神話その1:「生産性向上は人事部門の仕事ではない」

 2024年12月にGartnerが実施した、ナレッジワーカーのマネジャー(1900人以上)を対象にした調査によると、人事部門が直接関与することで、従業員の生産性が最大11%向上することが分かった。企業における生産性向上の取り組みにおいて、人事部門が従業員のパートナーとして積極的に関与するには、以下の4つの取り組みが重要になる。

  1. 人事戦略に「生産性の向上」を盛り込み、意思決定に関与する立場を確保する
  2. 部門横断的な生産性向上のためのコラボレーションの機会を見つける
  3. 生産性向上の取り組みに伴い発生する人材のトレードオフを経営幹部に説明する
  4. 生産性戦略に従業員のニーズを取り入れる

神話その2:「AIを使えばすぐに生産性が向上する」

 多くのリーダーが「生成AIは成長と生産性の原動力になる」と期待している。だが、Gartnerが3400人以上のナレッジワーカーを対象にした2024年12月の調査では、生成AIツールを頻繁に使用し、スピードと品質の両方の向上を経験することで、生産性の向上を十分に取り込めている従業員はわずか8%に過ぎなかった。

 生成AIによって期待通りに生産性を向上させるためには、人事部門は「生成AIについての認識不足」「ばらつきのある導入」「非効果的な使用」という3つの“生産性の漏れ”をなくさなければならない。そのために人事部門は「チェンジマネジメント」(変革管理)、「人材育成」「従業員エクスペリエンス」に関する知識やノウハウを最大限活用する必要がある。

 Gartnerの推計によると、企業が生産性の漏れをなくし、従業員の生成AI利用を適切に支援した場合、生産性は最大8%向上し、生成AIによるスピードと品質の向上を経験する可能性は2.7倍に高まるという。

神話その3:「オンサイト勤務はハイブリッド勤務よりも生産性が高い」

 2024年12月にGartnerが実施した、ナレッジワーカーのマネジャー(3061人)を対象にした調査によると、「高い生産性を示した」と評価された従業員の割合は、オンサイト勤務(オフラインでの業務)とハイブリッド勤務で差は見られず、どちらも21%だった。

 Gartnerが100以上の仕事の属性について分析した結果、ハイブリッド勤務とオンサイト勤務の両方の生産性に最も良い影響を与えるのは「チーム内での支援的な文化」だということが分かった。この文化が整っていると、従業員の生産性は最大で11%向上するという。

 生産性を促進する協力的なチーム文化を作るために、人事部門のリーダーがすべきことは以下の2点だ。

  1. マネジャーが「生産性」を、前向きなチーム施策の推進力として語れる環境づくりを支援する
  2. チームが生産性の中核となる「生産性の価値観」を自ら決定し、その価値観と行動様式に沿ったフィードバックができるように促す

神話その4:「データを増やせば生産性は向上する」

 「データは有用だが、単体では不完全な情報しか得られない」と、Gartnerのブレント・キャッセル氏(バイスプレジデント)は述べている。

 同社によると、従業員の生産性を向上させるために定量的なデータに過度に依存する組織は、測定できない業務やデジタル化されていない労働を見落としやすくなる。その結果、従業員が「数値を良く見せること」を目的とした行動に走ったり、エンゲージメントが低下したりする恐れがあるという。

 人事部門は、生産性の指標に必要な内容がそろっているかどうかを確認するために、2つの行動を採る必要がある。

  1. 該当業務を最もよく理解している人物を巻き込み、生産性指標の策定に反映させる
  2. 生産性指標の解釈に現場の視点を取り入れる

 Gartnerは「生産性に関する“4つの新たな神話”の全てに対策を講じる組織は、従業員の生産性を最大35%向上させることができる」としている。これは、従業員1人1人が1日に2.8時間多く働き、年間4万7000ドル以上の追加収益を生み出すのと同じ効果に相当する。

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