AIがコードを書くことが前提になりつつある中で、エンジニアの仕事は「なくなる」のではなく、重心が移り始めています。本稿では、開発・業務改善・データ活用・基盤整備といった観点から、IT/AIエンジニアの役割を4つのロールとして整理しました。2026年を見据え、自分の価値をどこで発揮するのかを考えるための記事です。
2020年からの6年間、@ITのDeep Insiderフォーラムでは、「来年、AIはどう変わるのか」という視点で、年次のトレンド予測を行ってきました。しかし2026年を迎え、その前提は大きく変わりつつあります。AIモデルの進化は月単位・週単位で加速し、「1年先の技術を見通す」こと自体が、以前ほど意味を持たなくなってきました。
特に開発・運用・AI活用・データ分析に関わる現場のエンジニアにとって、いま重要なのは、「技術がどう進化するか」ではなく、「AIの進化によって、私たちの役割がどう変わるのか」という問いではないでしょうか。
「AIがコードを書くなら、自分の仕事はなくなるのか?」
こうした不安に対し、本稿では、2026年以降を見据え、エンジニアが目指し得る4つの新しいロール(役割)を提示します。AIを脅威として恐れるのではなく、AIを活用する流れの中で、自分たちの仕事や役割をどう位置付けるかを整理することが、本稿の目的です。
※ここでいう「私たち」とは、いわゆる「ソフトウェアエンジニア」だけを指しているわけではありません。
といった、仕事の中でAIと向き合う多くの実務者を含んでいます。Deep Insider編集部内では「現場のAI実務者」と呼んでいますが、本稿では、以降これらをまとめて「エンジニア」と呼ぶことにします。
2025年は、AIが「試験的な技術」から、「開発現場では使っていて当たり前の前提条件」へと移行した年でした。AIコーディングや自動生成の実用化が進み、開発効率は大きく向上しました。その一方で、チーム構成や役割分担を見直す動きが広がり、コードを書く行為そのものが、エンジニアの価値の中心ではなくなり始めています。
ただし、ここで起きているのは「エンジニアの仕事がなくなる」という変化ではありません。実際に起きているのは、「仕事の重心が移動している」という変化です。
確かに、従来型のエンジニア業務が相対的に縮小する可能性はあります。しかし日本の企業環境を考えれば、海外のような大規模なレイオフが一気に進むというよりも、AX(AIによる業務変革)やAI推進といった領域へ、エンジニアの役割が移っていくケースが増えるとみるのが自然でしょう。
結果として、エンジニアに求められる仕事の量が減るというよりも、担う役割の中身や重心が変わっていく。それが筆者の基本的な見立てです。
ここで重要になるのは、既存の役割やスキル、知識に執着することではなく、現在の強みを起点に、AI時代に適した役割(ロール)へと重心を移していくことです。この考えを前提に、AI時代においてエンジニアが取り得る立ち位置を、以下の図のように整理しました。
AI時代(2026年以降)のエンジニア生存戦略:4つの新しいロール以下では、この4つのロールがそれぞれ何を意味するのか、そして自分はどこに立つのかを考えながら、順に見ていきましょう。
AI時代の新しいエンジニアは、従来型のシステム開発や情報システムに閉じた存在ではなく、AI推進やAXによる業務変革など、より幅広い領域で価値を発揮していくことになります。そうした広がりの中で、「自分たちの価値をどこで発揮するか」を考えるための“フレーム(思考の整理軸)”として、ここで示す4つのロールを提案します。エンジニア個人だけでなく、チームや部署、企業全体でも参考にしてもらえればと思います。
これまでソフトウェアエンジニアとして開発を担ってきた人にとって、最も自然な進化形がこのロールです。
従来の開発スキルを土台にしながら、AI開発ツールを適切かつ効果的に使いこなし、生成したコードの品質をどう保証するかが価値になります。
社内SE(システムエンジニア)、DX/AXによる業務改善担当、あるいは現場業務に強い関心を持つエンジニアが力を発揮しやすいロールです。
現場を知っていること自体が大きな武器になります。AIを「現場で使える形」に落とし込み、業務を実際に変えていく役割です。
データサイエンティスト、ML(機械学習)エンジニア、データ分析者が中心となって担うロールです。LLMの普及により、モデルを作ること以上に「評価し、判断する」役割の重要性が増しています。
AIそのものを賢くすることが目的ではありません。AIを使った結果を正しく評価し、納得して判断できる状態を作ることに、このロールの価値があります。
情シス(情報システム)担当者、インフラエンジニア、SRE(サイト信頼性エンジニアリング)、バックエンドエンジニア、データエンジニアが中心となって担うロールです。
AI活用が広がるほど、その裏側を支えるこのロールの重要性は、確実に高まっていきます。
今後、エンジニアの役割は、大きく二つの方向へと広がっていく可能性があると私は考えています。
一つは、モデル設計やアルゴリズム、基盤技術といった領域で、これまで以上に専門性を深めていくトップ層のハイスキル人材。もう一つは、AIを前提とした環境の中で、現場に価値を届け続ける多くのエンジニアたちです。
前者には、OpenAIやGoogleのような組織でAIモデルそのものを作るエンジニアや、非常に高いスキルと経験を求められるFDE(Forward Deployed Engineer:前線展開エンジニア)といった存在が含まれるでしょう。最先端の技術を現場に持ち込み、価値につなげていく重要な役割ですが、誰もが目指すべき唯一の姿ではありません。
一方で、多くのエンジニアにとっては、AIを適切かつ効果的に活用しながら、開発、運用、業務の自動化、データ活用といった現場の課題を解決していくことが、より重要になっていくと考えられます。本稿で整理した4つのロールは、まさにこの後者で、多くのエンジニアが直面する「AIによる役割の変化」を、現場目線で想定したものです。
ただし、ここで示した4つのロールは、「これからは全員こうなるべきだ」という“正解”を示すものではありません。エンジニア一人一人の強みや関心、置かれている組織やフェーズによって、最適な立ち位置は変わりますし、ロールは固定されるものでもありません。
今回の目的は、エンジニア自身が、
を、言葉にして整理できるようにすることです。
4つのロールは、そのための“道しるべ”や、考えるための枠組み(フレーム)として捉えてもらえればと思います。
Deep Insider編集長の一色です。こんにちは。
私の観察範囲では、「従来型のコーディング作業そのものは、もはやエンジニアの役割の中心ではなくなりつつある」と考える人が、この1年でかなり増えました。コードを1行ずつ書いてロジックを組み立てる代わりに、AIを使ってコードを生成し、その流れを監視し、調整し、全体としてうまく動かす。そんな“オーケストレーター”(統括役や調整役)に近い立ち位置へと移っていく、という見方です。
本稿で整理した4つのロールは、まさにその発想をベースにしています。細かな実装作業はAIに任せ、人は「どう作るか」「どう使うか」「どこまで任せるか」を考える。その役割の置きどころが、ロールごとに少しずつ異なるだけです。
そして、この「4つのロール」に必要な知識やスキル、考え方は、2026年以降のDeep Insiderが重点的に取り組んでいくテーマでもあります。現場でAI活用を始め、継続していくために必要な情報を、これから提供していきたいと考えています。今後のDeep Insiderにも、ぜひご期待ください。
※以下は、記事の内容を踏まえて考えるための補助ツールです。使わなくても、この記事の理解に支障はありません。
あなたはIT/AIエンジニアのキャリア相談に乗るアドバイザーです。
以下の4つのロールを前提に、私の現在の立ち位置と、次に伸ばせそうな方向を整理してください。
一方的に結論を出すのではなく、質問しながら一緒に考えてください。
【4つのロール】
1. AI実装指揮官:AIを使いながら開発全体を前に進める
2. AX実務エキスパート:業務をAIでつなぎ、自動化する
3. AIデータサイエンス・スペシャリスト:AIの挙動を評価し、判断材料を作る
4. AI導入戦略家:AIを安全かつ継続的に使う基盤を整える
【私の状況】
(ここに職種、普段の業務、興味や悩みを書く)
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