「コーディングは死ぬ」「AIはソフトウェアをディスラプトする」 生成AI革命の本当の価値(2/3 ページ)

» 2026年02月10日 05時00分 公開
[三木泉@IT]

企業のAI導入は90%が失敗? 変革は始まったばかり 

 次に、企業におけるAI導入についての知見を共有したいと思います。

 まず、生成AIはインターネットと同じように、長期的かつ構造的な現象です。個人でブームが起こり、徐々に組織の間で浸透していきます。

 「企業におけるAI導入の90%は失敗している」といった報告を耳にすることがありますが、実際には組織の個人レベルで非常によく使われています。IT部門でAIを正式に採用していなくても、個々の社員はコーディングに使ったり、ChatGPTのようなツールでブレーンストーミングをしたりしています。

 次に、非常に重要なことなのですが、既にAIは幾つかの分野でトップレベルの専門家と同等、あるいはそれ以上の性能に達しています。

 Klarnaという大手フィンテック企業は、2026年初めの時点で、顧客対応チャットの約3分の2をAI経由で処理しています。これにより大幅なコスト削減が実現すると同時に、1人のカスタマーサポート担当者が対応できる件数も大きく向上しています。

 Amazonは最近の決算説明会で、非常に大規模なレガシーコードベースの移行を行ったことを明らかにしました。規模にすると、開発者4500人/年分、金額にして約3億ドルに相当します。重要なのは、「AIがレガシーコードベースを移行できる」ということ自体ではありません。人間の開発者にレガシーコードの移行作業をさせることにあまり価値はありません。本当に価値があるのは、新しいプロダクトや機能の開発です。AIは価値のない作業の負担を肩代わりすることで、開発者をより創造的で付加価値の高い仕事に集中させてくれます。

 このように、AI導入の効果は非常に大きく、既に現実のものになっているのです。

AIはソフトウェアをディスラプトする

 ここからはソフトウェアエンジニアリングに焦点を当てたいと思います。というのも、ソフトウェアエンジニアリングは、企業におけるAI活用の中で最大の分野だからです。現在、企業のAI関連支出のうち約46〜60%がソフトウェアエンジニアリング向けに使われています。

 これまでソフトウェアは、交通、宿泊、バックオフィス業務など、さまざまな産業を破壊的に変えてきました。一方で、ソフトウェア開発は、長い間ほとんど変化してきませんでした。極端に言えば、ソフトウェアエンジニアリングは1970年代にコンパイラが導入されて以来、本質的に変わっていません。

 しかし今、状況は一変しています。大手テック企業では、書かれるコードの相当な割合がAIによるものになりつつあります。実際、レガシー企業を含めた米国企業の開発者の92%が、既にAI開発ツールを使っています。

 AIによる開発ツールは、ソフトウェアエンジニアリングの歴史の中で、最も速いスピードで普及した技術だと言えるでしょう。残念ながら、私たちの知る「コーディング」という行為は死につつあり、近い将来には姿を消す可能性が高い、と言って過言ではありません。

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