生成AIによるコーディング支援が開発現場で日常化する中、新たな課題も浮かび上がっています。その詳細をまとめ、今後の開発現場、そして開発者に求められる能力・役割を考えます。
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ここ1年ほどで、生成AI(人工知能)を活用したコーディング支援は、多くの開発現場に浸透しました。コード補完や関数生成、テスト作成までをAIに任せる開発者も増え、「コーディングの速度は確実に上がった」という実感を持つ人も少なくありません。
GitLabの2025年版DevSecOps調査(世界3266人対象)では、AIツールの導入によってコーディング作業そのものは高速化したものの、開発者は平均して週に約7時間を非効率な作業に費やしていることが分かりました。GitLabはこの現象を「AIパラドックス」と呼んでいます。
背景には、部門間のコミュニケーション不足や知識共有の壁、ツール乱立によるコラボレーションの障壁といった要因があります。調査では、技術者の60%が5つ以上の開発ツールを、49%が5つ以上のAIツールを併用していました。ツール間の連携不足や設定の違いが、かえって作業の手間を増やしているとみられます。
AIコーディングが日常化する中で、もう一つ浮かび上がったのが「信頼性」の問題です。開発速度の向上を実感する一方で、AI生成コードをそのまま受け入れることに不安を感じる開発者もいるようです。
SonarSourceが2026年1月に実施した調査では、次のような結果が報告されています。
生成AIは過去のパターンを基に出力を作る仕組みのため、仕様や文脈を完全に理解しているわけではありません。構文上は正しく見えても、境界条件や例外処理、セキュリティ要件が十分に考慮されていないケースもあります。
そのため開発者は、AIの出力を精査し、テストし、必要に応じて修正する必要があります。しかし、調査では、コミット前に常に検証する開発者は48%にとどまりました。
さらに、約4割の開発者が「AI生成コードのレビューは人間によるものより手間がかかる」と感じており、検証工程が新たなボトルネックになりつつあることが分かります。コーディング時間は短縮されても、レビューやテストの負担が増えているのです。
Googleは2025年12月、AI導入の成果を左右する要因を分析した「DORA AI Capabilities Model」を公開しました。レポートは、AIは組織の強みだけでなく、機能不全をも増幅させると指摘し、成果を上げるチームに共通する7つの能力を示しています。
これらを備えたチームは、AIを単なるコード生成ツールではなく、開発プロセス全体を最適化する手段として活用できているとGoogleは指摘しています。
先に紹介したGitLabの2025年版DevSecOps調査では、AIの普及によってITエンジニアの増加を見込む声が多く、76%が「AIによってコーディングが容易になるほどITエンジニアの数は増加する」と予測しています。
AIによってITエンジニアの役割が変化することについては、83%が「今後5年以内に自分の役割が大きく変わる」と考えており、「AIを採用するエンジニアは、キャリアの将来性を確保できる」と前向きに捉えている人が87%と大勢を占めています。
では、具体的にどのような役割やスキルが開発者に求められるのでしょうか。AIがコードを書く時代には、「何を書くかを決め、正しさを判断する力」が開発者の価値を左右する要素になりつつあります。
生成AIはコーディング速度を確実に引き上げましたが、その一方で信頼性や検証負担といった新たな課題も生んでいます。開発のボトルネックはコーディングからコードレビューや既存の開発プロセスとの統合に移りつつあります。
AIツールを単に導入するだけでは生産性は向上しません。チームのプロセス設計やナレッジ共有、品質管理の仕組みや体制の整備がAI活用の成果を左右します。個人レベルでも、レビュー力やテスト設計力、判断力といった上流の能力がより重要になります。
生成AIは開発業務で導入が先行しています。今回紹介した課題や今後の組織・個人に求められる能力や役割は、開発業務以外で生成AIの導入・活用が進んだ際も同様に意識すべきことになるのではないでしょうか。従来、開発者は先進技術を自身の業務で取り入れた経験を開発以外の業務の支援にも生かし、価値創造につなげてきました。生成AIでも同様に価値創造の担い手になることができるはずです。
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