全米経済研究所は、米国、英国、ドイツ、オーストラリア4カ国の約6000社の経営幹部を対象としたAI利用動向の調査結果を公表した。全体の7割が何らかのAIを導入する一方で、経営幹部の利用は週平均1.5時間にとどまっており、将来の雇用予測について経営層と従業員の間でギャップがある実態も明らかになった。
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全米経済研究所(NBER)は2026年2月、ワーキングペーパー「Firm Data on AI」(AI〈人工知能〉に関する企業データ)を公表した。
NBERは、企業のAI導入状況に関する調査は結果のばらつきが大きく、正確な実態把握が課題だと指摘。そこで同調査は、AIが企業に与える将来の影響を予測するために、自社の状況を最も把握している経営幹部の視点に注目したという。
米国・英国・ドイツ・オーストラリアの4つの研究チームが連携し、約6000社に及ぶ企業のCEO(最高経営責任者)やCFO(最高財務責任者)らに直接尋ねるアプローチを採用。AIの利用状況や、AIが雇用や生産性に与える影響について調査したという。同調査は2025年11月から2026年1月にかけて実施された(国により実施時期が異なる)。
同調査によると、4カ国平均で69%の企業が何らかのAI技術を利用している。国別では米国が78%で最も高く、英国が71%、ドイツが65%、オーストラリアが59%と続いた。企業別では、より生産性が高く、規模が大きく、給与水準が高い企業ほどAI導入率が高い傾向も見られたという。今後3年間で、75%の企業がAIを導入する見通しだ。
AIの最も多いユースケースは「大規模言語モデル(LLM)によるテキスト生成」(平均41%)で、「機械学習によるデータ処理」や「ビジュアルコンテンツ生成」(各約30%)が続いた。
回答した経営幹部はAIを週平均で約1.5時間利用していた。最も多い回答は「週1時間まで」(41%)で、「全く利用しない」回答者も28%いた。CEOはCFOや他の上級管理職よりもAI利用頻度が高く、特に2025年初頭からの1年弱で、経営幹部によるAIの平均利用時間は週0.9時間から1.4時間へと約50%増加した。
企業の90%超が「過去3年間(2023〜2025年)でAIによる雇用への影響はなかった」と回答した。
生産性についても89%が「影響なし」と回答している。従業員1人当たり売上高への影響も、平均で0.29%のプラスだった。
今後3年間(2026〜2028年)について経営幹部は、AIが生産性を平均1.4%押し上げると予測している。国別の期待値は米国(2.3%増)が最も高く、英国は1.9%増、ドイツとオーストラリアがいずれも0.9%増だった。
ただし、回答企業の60%は今後も「生産性に影響はない」と予想しており、一部企業の高い期待が平均を押し上げる形となった。
人材雇用については今後3年間で0.7%減少すると経営幹部は予測している。
雇用削減の予測は英国が最大(1.4%減)で、米国(1.2%減)と続く。同調査では、この雇用減の見通しについて、4カ国の就業者数が2億5000万人超であることを踏まえた上で「2028年までに約175万人の雇用減につながりうる」と述べている。
一方でNBERは、AI技術の開発が極めて非定常的な環境で進んでおり、将来の影響を正確に予測することは専門家であっても困難だと指摘している。調査で示されたデータは、あくまで自社の状況を最も熟知する経営幹部による「現時点での見立て」をまとめたものであり、今後のAI技術の飛躍的な進化によっては、企業にもたらす影響がこの予測から大きく外れる可能性がある点には留意が必要だとしている。
調査では、米国の個人従業員(約3000人)を対象に同一設問で調査を実施した結果も共有されている。従業員は今後3年間でAIが雇用を0.5%増加させると予測した。経営幹部が雇用削減を見込む一方、従業員は雇用創出を期待しており、認識に大きなギャップがあった。
生産性については、従業員の期待は0.9%増にとどまり、全企業の経営幹部予測(1.4%増)や米国企業の経営幹部予測(2.3%増)を下回った。
NBERは「企業におけるAI導入が着実に進む一方で、これまでの雇用や生産性に対する実質的な影響は限定的だった」と総括した上で、「急速に普及するAIが経済や労働環境に与える影響を正確に把握するためには、今回のように国際比較が可能で、かつ一貫した調査手法を今後も継続して適用することが重要だ」と結論付けている。
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