Google Cloudは、カリフォルニア大学バークレー校の学生を対象としたAI活用調査の結果を公開した。学生はAIを近道として使うのではなく、学習パートナーとして戦略的に使い分けており、過度な依存を防ぐための自律的な行動も見られたという。
Google Cloudは2026年3月26日(米国時間)、カリフォルニア大学バークレー校(UC Berkeley)のコンピュータサイエンス、電気工学、デザイン、データサイエンス専攻の学生を対象に実施した、AI活用に関する調査結果を公開した。
Google Cloudのレポート「DORA 2025」によれば、すでにテクノロジー専門家の90%が日常業務でAIを使用しているという。AIが開発の基盤となりつつある中、次世代の学生開発者は、AIとどう向き合っているのか。
カリフォルニア大学バークレー校を対象にした調査では、学生たちに見られるAI活用の傾向と、DORAの調査で明らかになったプロフェッショナル開発者の傾向が密接に一致していることが分かったという。
調査に参加したほとんどの学生がAIを「チューター」や「教師」と表現し、「アシスタント」や「生産性ツール」とは呼ばなかった。学生は課題の答えを直接求めるのではなく、自身の知識のギャップを特定し、混乱する概念を明確にし、学習プロセスを導くために使用していた。
ある学生は「教授の説明が分からない場合、AIにその概念やコードの動作を説明してもらう。プログラミング演習や実習課題の始め方が分からない場合は、AIにプロンプトを渡してどこから始めるか把握し、その後は自分自身でコードを書いてAIに添削してもらう」と説明した。
特に顕著なメリットが見られたのは、学習障害のある学生のケースだ。「学習障害がある学生は、問題を理解するのにより多くの時間が必要だ。AIは24時間対応してくれるTA(ティーチングアシスタント)のような存在だ」という声もあったという。
AIを用いた文章作成タスクにおける脳活動を測定した研究では、人間の認知的関与が弱く、内容に関する記憶や所有感が低下する「認知的負債」が生じることが指摘されている。学生たちもAIを学習手段として積極的に活用する一方で、過度なAI依存に対する不安を表明していた。
しかし、このリスクをただ受け入れるのではなく、自ら意識的に境界線を設けるという前向きな兆候が見られた。具体的には以下のような取り組みが挙がった。
「AIに『完全な答えを出さないで、正しい方向だけ示してほしい』と伝えることもある」という声もあった。DORAの調査でも、90%がAIを採用している一方で約30%がAI生成コードをほとんど信頼していないことが判明している。
同じくカリフォルニア大学バークレー校で実施された、アイトラッキング(視線計測)技術を用いた別の研究では、1〜5年の経験を持つ開発者がAIコーディングアシスタントとどのように対話するかを観察した。タスクの種類によってAIへの注意配分に明確な差が見られたという。
開発者は複雑な作業を進める際、AIの提案が正確で時間を節約できる場合でも能動的に無視していた。AIの提案を確認する行為自体が認知負荷を生じさせるため、経験のある開発者は思考が分断されることを避けるために、AIを使わないタイミングを察知していることが示唆されるという。
これらの調査結果を受け、研究チームは、AI導入に取り組むチームに対して3つの方向性を示した。
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