Microsoftのシステムが外部パッケージを実行? 依存関係混乱を巡る攻防研究者とMSRCが真っ向対立

Microsoftのシステムで、第三者が公開したnpmパッケージが実行された。研究者は重大なサプライチェーンリスクだと訴えるが、Microsoftは脆弱性ではないと判断した。なぜ同じ事実を前に評価が真っ二つに割れたのか。

» 2026年06月09日 07時00分 公開
[@IT]

この記事は会員限定です。会員登録(無料)すると全てご覧いただけます。

 Microsoftのシステムが、第三者が公開したnpmパッケージを実行していた可能性が浮上した。サイバーセキュリティ研究者のワヒード・ファヤード氏は2026年6月2日(現地時間)、「Azure Portal」に関連する調査の中で、自身が公開したパッケージがMicrosoft管理下の環境で実行されたと報告した。一方、Microsoftは、本番環境への影響はなく脆弱(ぜいじゃく)性ではないとしている。

 今回の事案は「依存関係混乱」と呼ばれるソフトウェアサプライチェーン攻撃で発生する問題だ。企業が社内専用のパッケージを利用している場合、そのパッケージ名が公開レジストリ(npmなど)で保護されていなければ、第三者が同じ名前のパッケージを登録できてしまう。するとシステムが誤って外部のパッケージを取得し、攻撃者のコードを実行する恐れがある。

MSRCは脆弱性認定せず、研究者は反発

 ファヤード氏はAzure Portal(portal.azure.com)で配信されているJavaScriptを調査する中で、「FxInternal/NetDiagnostics」という内部モジュールへの参照を発見した。同氏がnpmレジストリを確認したところ、「@fxinternal」という組織名と「netdiagnostics」というパッケージ名はいずれも未登録だったという。

 そこで同氏はまず同名のパッケージを登録し、その後、実際に取得されたかどうかを確認するため、外部に通信する機能を組み込んだ「@fxinternal/netdiagnostics」パッケージを公開した。すると公開直後、Microsoftが管理する環境からパッケージがダウンロードされ、実行されたことを示す通信を受信したという。

 通信元はMicrosoftに割り当てられたネットワーク(AS8075)で、送信された情報には実行環境のホスト名やユーザー名、ローカルの「node_modules」パスなどが含まれていたとされる。ファヤード氏はこれを「Microsoft側システムで実際にコードが実行された証拠」だと主張している。

 同氏はこの結果を「Microsoft Security Response Center」(MSRC)に報告し、外部から任意コードを実行できる可能性があることから、リモートコード実行(RCE)につながる重大な問題だと説明した。

 しかしMSRCは「FxInternal/NetDiagnostics」はAzure Portal内部で利用されるコンポーネントであり、実際の攻撃につながる脆弱性とは考えにくいと回答したという。

 その後の調査でもMSRCは判断を変えなかった。MicrosoftのIPアドレスから通信が発生した事実は認めたものの、それは本番環境や開発用ビルド環境ではなく、ソフトウェアの安全性を確認する自動化セキュリティツールによるものだったとしている。

 つまり両者の対立点は、「Microsoft側でコードが実行された事実」をどう評価するかにある。ファヤード氏は、「どの環境で実行されたかではなく、第三者が取得したパッケージ名のコードがMicrosoftのシステムで動いてしまったこと自体が問題だ」と主張している。一方MSRCは「攻撃者が本番環境や開発環境にコードを混入できたわけではなく、脆弱性とは言えない」との立場で一貫している。

Microsoft以外にも影響する可能性

 ファヤード氏は、この問題はMicrosoft内部だけの話ではないと指摘する。

 Azure Portalで公開されているJavaScriptには問題のパッケージ名が含まれているため、それらを参照する外部開発者やパートナー企業のシステムでも、設定によっては同じパッケージを取得してしまう可能性があるという。

 また同氏は「内部向けだから公開されないだろう」と考えてパッケージ名を放置することは危険だと警鐘を鳴らす。公開レジストリで名称を事前に確保していなければ、その名前を最初に登録した第三者にサプライチェーンの安全性を委ねることになるためだ。

 なお、この事案は後に「GitHub Advisory Database」に登録され、「GHSA-83x6-432q-hpcf」が付与された。分類は「Embedded Malicious Code(CWE-506)」で、重大度は9.3(Critical)と評価されている。

 今回の事案は、依存関係混乱への評価を巡って研究者とMicrosoftの見解が対立したケースと言える。ただし、公開レジストリで内部用パッケージ名を保護しておく重要性を改めて示した事例として、ソフトウェアサプライチェーンの観点から注目を集めている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アイティメディアからのお知らせ

スポンサーからのお知らせPR

注目のテーマ

その「AIコーディング」は本当に必要か?
Microsoft & Windows最前線2026
4AI by @IT - AIを作り、動かし、守り、生かす
ローコード/ノーコード セントラル by @IT - ITエンジニアがビジネスの中心で活躍する組織へ
Cloud Native Central by @IT - スケーラブルな能力を組織に
システム開発ノウハウ 【発注ナビ】PR
あなたにおすすめの記事PR

RSSについて

アイティメディアIDについて

メールマガジン登録

@ITのメールマガジンは、 もちろん、すべて無料です。ぜひメールマガジンをご購読ください。