「Splunkの良さを壊さない」の真意とは? Ciscoは買収企業をどう扱うのか「One Cisco」の下で組織を再編

Cisco Systemsは「One Cisco」の下で、複数の製品分野を横断する組織体制を構築している。2024年に買収したSplunkもその中に組み込む一方、独立性は維持する方針だ。具体的にSplunkをどう位置付けているのか。

» 2026年06月10日 16時00分 公開
[末岡洋子@IT]

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 Cisco Systems(以下、Cisco)はネットワークに限らず、さまざまな製品分野を横断した事業運営を進めている。2024年にはオブザーバビリティーやセキュリティ分野に強みを持つSplunkの買収を完了した。

 異なる事業や企業文化を抱える中で、Ciscoはどのような組織体制を構築しようとしているのか。同社でプロダクトポートフォリオ戦略担当シニアバイスプレジデントを務めるジェフ・シュルツ氏に、組織再編の実態やSplunkの位置付けを聞いた。

「One Cisco」の下に事業再編

──Ciscoはここ数年「One Cisco」という旗印の下、ネットワークやセキュリティ、オブザーバビリティー、コラボレーションといった複数の製品分野を横断的に集約し、包括的な製品群として訴求し始めています。こうした取り組みをどのように進めているのでしょうか。

ジェフ氏(以下、敬称略) One Ciscoは単なるマーケティングメッセージではありません。最高プロダクト責任者(CPO)のジーツ・パテルは2024年8月の就任後、プロダクト組織全体をOne Ciscoの方針に沿って再編し、「データセンター」「ワークプレース」「デジタルレジリエンス」の各事業部にゼネラルマネジャーを任命しました。

 例えばワークプレース事業部は、キャンパスネットワーク(オフィスなどの単一拠点内ネットワーク)やブランチネットワーク(支社や店舗などの小規模拠点ネットワーク)、コラボレーションといった複数の製品分野を横断して担当します。こうした体制の下で、Splunk製品を含む各製品において、一貫した操作や運用が可能となるように整備を進めています。

 これまで当社は「ネットワークが本業で、セキュリティやコラボレーションなどの製品も持つベンダー」だと見られてきました。今回の再編によって、プロダクト組織が複数の製品分野をまたいで、全体としての優位性を考える体制へと変わりつつあります。これに伴い、当社が提供できる価値も変わると考えています。ネットワーク以外の製品群の重要性や、各製品を組み合わせて提供する意義を、より明確に示せるようになるはずです。

──大企業では組織を再編しても、実際に一体として機能させることは容易ではありません。今回のように複数の製品分野を横断する体制を、どのように機能させているのでしょうか。

ジェフ 横断的な調整やコラボレーションは、私のチームが担っています。当社はOne Ciscoを軸に再編することで、迅速に意思決定できる体制を整えました。例えばデータセンターの事業部は必要な技術を一通りそろえていることから、部門間の調整に時間をかけることなく、市場の機会を機敏に捉えることができます。ワークプレースやデジタルレジリエンスの事業部も同様です。

 組織内にマーケティングチームを配置したことで迅速に動けるようになりましたが、マーケティングは本来、関係者やプロセスが多く、放置するとメッセージが分散しがちです。そのため製品訴求を含むメッセージングについては、各事業部門のプロダクトマーケティングチームが私と連携する体制にして、最終的には私が横断的に管理しています。プロダクトマーケティングチームは直属の組織ではないのですが、この仕組みによって各部門の発信内容に一貫性を持たせています。

 全社のプロダクト戦略を横断的に調整する専門チームも設けています。各部門はまず個別に戦略会議を開き、最終的にはCPOであるジーツの下で開催する全部門合同の会議に、検討結果を持ち寄ります。この場で部門間の認識のずれを解消しつつ、協力の機会を見いだしています。

「Splunkの独立性は維持」は本当か

──One CiscoにはSplunkも含まれているとのことでした。強いブランドとコミュニティーを持つ同社について、Ciscoの組織や戦略にどのように組み込み、その独自性をどのように維持しているのでしょうか。

ジェフ One Ciscoの考え方は、Splunk買収後の統合と独自性の両立にも生かしています。Splunkの組織全体はデジタルレジリエンス事業部の傘下に置きつつ、専任のゼネラルマネジャーの下で、マーケティングや営業の独立性を維持する体制です。これによりSplunkのブランドとカルチャーを損なわずに運営できます。チャック(CiscoのCEO、チャック・ロビンス氏)も「Splunkの良さを壊さない」と繰り返し強調しています。

 2025年の秋に開催したSplunkの年次カンファレンス「.conf25」でも、その方針が表れていました。ブランドキャラクターの「Buttercup」や、フェズという帽子が特徴的なコミュニティーの「Splunk Trust」、授賞式など、Splunkならではの文化を従来通り維持していたのです。

 一方でジーツは基調講演で、Splunkの技術も活用しながらデータ連携を実現する「Cisco Data Fabric」を発表し、Ciscoとしての戦略も打ち出しました。Splunkのブランド文化をCisco側にも取り入れる考えを示した形であり、実際にその取り組みも進めています。

──技術面では、Splunkとして独立させる部分と、Ciscoに統合する部分をどのように切り分けているのでしょうか。

ジェフ Splunkは基本的に独立性を維持しています。ただしセキュリティテレメトリー(セキュリティ監視用のデータ)やインフラテレメトリー(ITインフラ監視用のデータ)といった領域では、統合することに大きな価値があります。

 具体例がデータ連携です。Splunk製品はさまざまなデータを取り込める一方で、Cisco製品が生成するデータは膨大であり、全てをそのまま送ることは現実的ではありません。そのためCisco製品側で必要な監視データを選別し、Splunk製品に連携する仕組みの整備を進めています。

 製品として統合する取り組みもあります。「Splunk POD」は、Splunkの中核製品「Splunk Enterprise」と、Ciscoのサーバ製品「Unified Computing System」(UCS)を組み合わせた事前検証済みの製品であり、オンプレミスインフラでSplunk製品を利用する顧客向けに提供します。SplunkチームとUCSサーバチームが連携することで実現しました。

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