AI活用が進む中、データベースへの関心が高まっている。そうした中、オープンソースの高速OLAPデータベースとして利用実績を増やしているのがClickHouseだ。マツダがデータ分析の取り組みを紹介した。
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AIの社会実装が本格化し、データの重要性が増している。どれだけ優れたAIモデルが登場しても、適切なデータがなければAIの価値を引き出すことはできない。そうした背景から、あらためてデータベースが注目を集めている。
オープンソースの高速OLAP(オンライン分析処理)データベースとして利用実績を増やしているのが「ClickHouse」だ。2025年11月に現地法人として設立したClickHouse日本法人は2026年4月、東京で自社イベントを開催。自動車メーカーのマツダと、クラウド会計ソフトウェアを提供するフリー(freee)が、AI時代に求められるデータベースの役割やClickHouseをどう活用しているのかを語った。2社による講演を中心にレポートする。
オープンソースの高速OLAPデータベースとして国内でもユーザーを増やしているClickHouse。ClickHouse日本法人代表取締役社長の金古毅氏は、AIで分析するデータは新鮮ですぐに取り出して使えるものである必要があるとし、ClickHouseについては単にデータを保管・維持するためのデータベースではなく、意思決定に活用するためのリアルタイム分析プラットフォームだとした。2016年にオープンソースで公開され、2026年現在ではAmazon Web Services(AWS)、Google Cloud、Microsoft Azureの東京リージョンでフルマネージドサービス「ClickHouse Cloud」の利用も可能になっている。OpenAIやAnthropic、Tesla、eBayなど世界的な企業に加え、国内でもマツダやフリーの他、LINEヤフー、楽天グループなどで活用が進んでいる。
マツダでは、「2030経営方針」の下、「カーボンニュートラル」「電動化」「人とITの共創による価値創造」「原価低減とサプライチェーン強靭化」という4つの取り組みを推進している。このうちITの取り組みでは「DXにおける業務構造改革」と「BLUEPRINTによる組織風土改革」の2つを柱に、生成AIなどを活用して2030年にマツダの生産性を倍増させる。その取り組みの基盤となっているのがデータベースだ。
マツダでは、これまでも各部門と協力してAIを活用した生産性向上に取り組んできた。AIの活用領域が広がる中、AI関連のチームや戦略部門が一つになり、全社レベルでさらに取り組みを加速させるため、AIとデータ活用によって業務改革を推進する組織として2025年9月に「MAX」が立ち上がった。
マツダ MAXプロジェクト室リーダーを務める吉岡正博氏はこう話す。「MAXは、自動車製造における上流の企画・設計から下流の製造・販売、それを支える事務部門まで全てを対象にした組織。データベースは、このAIの取り組みを支える重要な基盤に位置付けられている」。AI活用が全社的な取り組みとなる中、日々大量に発生するデータを集約し、いかに活用できる状態にできるかが重要になる。
マツダがOLAPデータベースとして採用しているのがClikHouseだ。同社では、工場を含むさまざまな現場に設置されたIoTデバイスから日々大量のデータが収集されている。データを蓄積する基盤としてデータレイクを整備し、そのデータをデータウェアハウス(DWH)基盤で分析し、分析結果をデータマートで活用するという体制だ。データレイクやDWH、データマートは領域ごとに構築されている。MAXチームにはアプリエンジニアやインフラエンジニア、データエンジニア、データサイエンティストらが所属し、データ基盤の構築から分析、活用までを一貫して担っている。
マツダがClickHouseを採用したのは2018年だ。2016年にビッグデータ分析のためにHadoop系の分散ソリューションを導入したが、レスポンスやスケーラビリティ、コストの課題に直面していた。当時「大量のデータを蓄積することと、そのデータを高速に取り出して分析することには全く別の技術が求められると気付いた」と吉岡氏は語る。当時の分散系ソリューションでは、その両立が難しかったという。そこで解決につながる技術を調査する中で、カラムナー(列指向)データベースに着目した。その一つがオープンソースのClickHouseだった。
ClickHouseに注目した大きな理由は、パフォーマンスだという。「毎秒600万件での検索を実現している事例があることを知り、われわれのニーズにマッチすると思った。実際にテストしてみると本当に事例の通りで、『こんなに大量のデータをこんなに速く検索できるのか』と驚いた」と吉岡氏は語る。
正式に採用を決め、実際に利用してからはパフォーマンスの高さの他にもメリットを実感することになったという。その一つが、大量のデータを高効率に圧縮して格納できる点だ。「日々増えていくデータを全てためていける。データの一部を捨てるのではなく、全てを格納できるため、さまざまな用途に活用できる」という。IoTデータや業務データが増え続ける中では、保存コストを抑えながらデータを蓄積することにもつながるという。
吉岡氏は安定性も魅力の一つとして挙げる。「サポート付きの商用版ではなく、オープンソースを使い続けているが、これまで障害が起こったことは一度もない。この点だけを見ても、『本当にすごいデータベースだ』と実感している」(吉岡氏)という。
一方で、オープンソース版を利用しているため、セキュリティ対策や新機能の活用を目的に定期的なバージョンアップは欠かせない。バージョンアップに伴って標準のコンフィグのパラメーターが変更されることがあり、吉岡氏はあるとき圧縮方式の標準が変わっていたことに気付かず、運用する中で混乱したことがあったと振り返る。もっとも、そうしたバージョンアップ対応以外については問題はなく、「順調に動いている」(吉岡氏)という。
マツダがClickHouseを採用してから7年以上が経過する中、社内でのデータ活用とAI活用は着実に進んでいる。MAXチームがデータ基盤の構築と運用を一貫してサポートすることで、IoTデータやセンサーデータ、業務データなど、さまざまなデータ基盤が整備され、それらをAIで活用できるようになっている。
マツダの事例から見えてくるのは、大量のデータを蓄積しておくだけではなく、必要なときに高速に分析できるデータ基盤の仕組みも取り組みが成功を左右する要素の一つになり得るということだ。そのための要素の一つとして、マツダはデータ基盤の中にClickHouseを組み込んだ。後編では、クラウド会計ソフト「freee」を提供するフリーの取り組みを紹介する。同社は、AIの運用を継続的に評価・改善するための「LLMオブザーバビリティー」の基盤としてClickHouseを活用している。
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