Anthropicが、Claude Codeにおける「ループ」を4種類に整理して解説した。AIコーディングで何をAIに任せ、どこで止めるべきかを、初心者にも分かるようにかみ砕き、筆者なりの視点も添えて紹介する。
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AIコーディングツール「Claude Code」の開発チームが、「ループ」の使い方を解説した記事「Getting started with loops(ループ入門)」を2026年6月30日付けで公開した。最近、AIコーディングの文脈では「エージェントにプロンプト(AIへの指示文)を打つ」のではなく「ループを設計する」という言い回しを見かけるようになったが、その「ループ」が具体的に何を指すのかは、語る人によってまちまちだ。今回の記事は、そのあいまいになりがちな言葉を、4種類に整理して解説しているので紹介したい。
とはいえ、新しい機能が発表されたわけではない。この記事の価値は、これまでぼんやりと「ループ」とひとくくりにされてきたものを、起動の仕方と止まり方という切り口で分類し、共通の言葉として語れるようにした点にある。AIエージェントの自律性(人間の指示なしに自分で判断して動く度合い)を、制御しやすい4つのデザインパターン(設計の型)として言語化した、と言い換えてもよい。また、それぞれがClaude Codeのコマンドや機能と結びつけて説明されているのも分かりやすい。
元記事ではまず、ループを「停止条件(stop condition:処理を止める条件)が満たされるまで、エージェントが作業のサイクルを繰り返すこと」と定義する。その上で、次の4つの観点でループを分類している。
図に示した4種類のループは、2つの軸で見ると分かりやすい。縦軸は「指示・設定に従って動くか、AIの自律性が高いか」、横軸は「1つの作業を進めるか、作業を起動・監視するか」である。普段のやりとりである「ターンベース(Turn-based)」、完了条件を決めて自走させる「ゴールベース(Goal-based)」、一定間隔で繰り返す「タイムベース(Time-based)」、人間がリアルタイムで関与しない「プロアクティブ(Proactive)」という4つは、この2軸で整理すると違いが見えやすい。
――ここで、この4分類をどう受け止めればよいか。『Deep Insider Brief』恒例の“ひと言コメント”として、筆者の考えを先に述べておきたい。その後で、4種類のループを一つずつ、できるだけかみ砕いて整理していく。
Deep Insider編集長の一色です。こんにちは。
今回の記事で面白いのは、AIコーディングにおける「ループ」の種類を、Claude Codeですぐに試せるスラッシュコマンドや実行パターンに対応させて、かなり実務的に整理している点です。
私自身は先週公開した記事で、AIエージェント自らが内部で自律的に回す「内側ループ」と、AIエージェントの外部にあるハーネス(エージェントを動かす実行レイヤー)がスケジュールやキューを見るなどしてプロアクティブに回す(=人間のその場の指示を待たずに、必要なタスクを起動する)「外側ループ」という見方を紹介しました。今回のAnthropic記事は、その考え方ともかなり整合すると感じました。
具体的には、「ターンベース」と「ゴールベース」は内側ループに近く、「タイムベース」と「プロアクティブ」は外側ループに近いと考えられます。先ほど掲載した図に従うと、「1つの作業(タスク)を進める=目標まで続けて完了させる」サイドが内側ループ寄りで、「作業を起動・監視する=次の実行を起動し続ける」サイドが外側ループ寄りです。
もちろん、これは筆者なりの読み替えです。Anthropicの記事そのものは、「内側ループ/外側ループ」という言い方ではなく、turn-based、goal-based、time-based、proactiveという4分類で説明しています。つまり、ループの概念を別の角度から見た整理です。先週の記事で「ループエンジニアリングが少し難しい」と感じた人でも、今回のAnthropic記事の観点なら理解しやすいという場合もあるかもしれません。だからこそ、別の角度からもう一度書く価値があると思いました。
ただし今回、私が特に気になったのは、停止条件(Stop Condition)をかなり前面に出していることです。AIエージェントは、放っておくとトークン(AIが処理する文字の単位)や実行時間をどんどん消費します。だからこそ、「どこまでやったら止めるか」を先に決めておくことが大事だと思います。
一方で、/scheduleコマンドのような仕組みでは、個々のタスク(ターンベース/ゴールベースに近い内側の作業)は止まりますが、ルーティン(定期実行される処理)自体はユーザーが止めるまで動き続けます。/loopコマンドも一定間隔で処理を繰り返しますが、ローカル環境で動くため、どちらかといえば簡易的なハートビート(定期的な実行)に近い印象です。
つまり、外側の仕組みは次の実行を待ち続けるが、内側の1タスクは必ず止まる、という二層構造で理解すると分かりやすいです。いずれにせよ、前回の記事で紹介した内側ループ/外側ループという見方に、今回の4分類という補助線が加わることで、ループエンジニアリングをより多角的に捉えられるようになったと思います。こうしてループの種類をはっきり分けて考えられるようになったこと自体が、Anthropicの記事の一番の功績ではないでしょうか。
それでは、記事が挙げた4種類のループを、初心者にも分かるように順に整理していく。
最もシンプルで、普段のClaude Code利用がこれに当たる。プロンプトを1回送るたびに、AIが情報を集め、実行し、自分の作業を確認し、必要なら繰り返して、結果を返す。その後は人間が結果をチェックし、次のプロンプトを打つ。この人間とAIの1往復が基本の単位だ。
1回のやりとりでは足りない、少し複雑なタスク向け。人間が「完了とはどういう状態か」を決めると、AIはそれを満たすまで反復する。ポイントは、AIが「もう十分だろう」と勝手に早く切り上げないよう、達成したかどうかの判定を別の小さなAIモデル(評価モデル)に任せる点にある。だからこそ、テストが通る、スコアが基準を超える、といった測定できる条件を設定すると、とても効果的に働く。
作業の中身は同じで、入力だけが変わっていくような、繰り返しの作業に向く。例えば毎朝Slack(チャットツール)のメッセージを要約する、といった用途だ。あるいは、PR(プルリクエスト:コード変更の提案)にレビューが付いたり、CI(自動テストの仕組み)が失敗したりといった、外部の状況の変化に反応させる使い方もできる。
/loopコマンドは、指定した間隔でプロンプトを再実行する。ただし、これは自分のPC上で動くため、PCを閉じると止まる。クラウド側で動かし続けたい場合は/scheduleコマンドでルーティン(定期実行)にする。
ちなみに、ClaudeデスクトップアプリのClaude Code画面には「ルーチン(Routines)」という機能がサイドバーに用意されており、スケジュール実行でClaude Codeの処理を起動できる(実行はローカル/クラウドから選べる)。元記事はCLIコマンドを中心に説明しているが、画面から定期実行を作れる機能もあると覚えておくとよい。筆者もこの定期実行機能を愛用している(……いつの間にか筆者もループエンジニアリングしていました)。
元記事は/loopと/scheduleの両方を、同じ「タイムベース」に分類している。ただし本稿では、クラウドでスケジュールに従って起動する自律性の高さに注目し、まとめ図では/scheduleを次の「プロアクティブ」寄りに置いて整理した。/loopはローカルで動く簡易な“ハートビート”、/scheduleは外側ループを支える“ハーネス”、という違いを意識すると分かりやすい。
人間がリアルタイムで関与しない、最も自動化された形だ。これまでの機能に加えて、AIに許可を求めさせず自動で進める「auto mode(オートモード)」や、複数のAIを連携させる「dynamic workflows(動的ワークフロー、研究プレビュー段階)」などを組み合わせて、長時間の作業を回す。例えばバグ報告への対応なら、/scheduleで定期的に新しい報告をチェックし、/goalで「完了とは何か」を定義し、SKILL.mdで検証の手順を記し、複数のAIエージェントに調査・修正・レビューを分担させ、auto modeで止まらずに走らせる、という組み立てになる。
ループの成果は、AIそのものよりも「その周り(=ハーネス)をどう作るか」で決まる、と記事は説く。まず、品質を保つためのコツは次の通りだ。
次に、コスト(AIの利用料は「トークン」という単位で消費される)を抑えるコツはこうだ。
記事は最後に、「まず自分がボトルネック(作業の停滞点)になっている作業を1つ選び、その一部を手放せないか考えてみよう」と勧めている。目安になるのは、次の3つの問いだ。
いきなり複雑なループを組む必要はない。まずは一番シンプルな形から始め、どこで詰まり、どこでやり過ぎるかを観察しながら、少しずつ育てていけばよい。種類を知っておくことは、その第一歩になるはずだ。
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