エージェントによる業務自動化をどう実現? 「Microsoft Build 2026」で発表された多数の新技術ローカルLLM開発端末からエージェント保護のコンテナ技術まで

Microsoftは開発者向けイベント「Microsoft Build 2026」で、エージェント基盤からモデル、開発端末、量子コンピューティングまで多数の新技術を発表した。

» 2026年07月13日 13時00分 公開
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 Microsoftは2026年6月2日(米国時間)、開発者向けイベント「Microsoft Build 2026」でAIエージェント時代の開発基盤を発表した。

 同社はエージェント時代のシステム開発を「自社のドメイン知識と結び付く知能(Microsoft IQ)」「IT部門が主導権を握るセキュアな開発環境(フルスタック)」「科学研究プロセスの劇的な変革(未来の展開)」という3つの柱に整理している。

自社の知識と世界の知識をつなぐ「Microsoft IQ」

 第1の柱は、企業が知能を「所有する」ためのエージェント基盤だ。「Microsoft IQ」は、「GitHub Copilot」「Microsoft Foundry」「Copilot Studio」全体で一般提供される、文脈を把握・提供するための基盤で、エージェントが世界に関する知識と企業の知識の両方を活用できるようにする。

Work IQ

 「Microsoft 365」、組織内システム、外部ソースにまたがり、人、メール、ドキュメント、会議とそのつながりを含めて実際の業務の進め方を捉える業務インテリジェンスの基盤(2026年6月16日に一般提供開始)だ。

Fabric IQ

 構造化されたビジネスデータ全体にわたり、一貫した意味定義を提供する共有のセマンティック基盤だ。

Foundry IQ

 企業内の知識とリアルタイムのWeb情報を統合し、エージェントが最適なデータを適切に取得できるようにする制御基盤だ。

Web IQ

 モデルに依存せず、MCP(Model Context Protocol)ネイティブで設計されたAIファーストのWeb検索スタックだ。

 これらのインテリジェンスレイヤーを適用した常時稼働する自律型エージェントの例として、「Microsoft 365 Copilot Frontierプログラム」の顧客向けに業務向けパーソナルエージェント「Microsoft Scout」の提供を開始した。

 オープンソースのエージェントフレームワーク「OpenClaw」とWork IQを基盤とするScoutは、「Microsoft Teams」や「Microsoft Outlook」といった日常的なツールを活用しながら、会議の準備やスケジュール調整、日常業務を、指示を待つことなく先回りして処理する。

自社開発の7モデル群、初の推論モデル「MAI-Thinking-1」も

 第1の柱である(知能)を支える中核エンジンとしてモデルレイヤーの拡充も進んでいる。Microsoft AIの「Superintelligence Team」は、7つの新しい自社開発モデル群を発表した。

 「MAI-Thinking-1」はMicrosoft AI初の推論モデルで、エンタープライズ用途に対応したクリーンなデータを使い、蒸留をせずに一からトレーニングされた、350億アクティブパラメーター、25万6000コンテキストウィンドウの中規模モデルだ。ブラインドテストでは評価者が「Sonnet 4.6」より本モデルを好み、「SWE Bench Pro」におけるコーディング能力では「Opus 4.6」と同等の性能を示したという。現在Foundryでプライベートプレビュー提供されている。

 画像生成の「MAI-Image-2.5」は、AIモデルの性能評価プラットフォーム「Arena AI leaderboard」でテキストから画像生成で3位、画像からの画像生成では「Nano Banana Pro」を上回り2位にランクインした。現在「Microsoft PowerPoint」で利用でき、「Microsoft OneDrive」への展開を進めている(Microsoft Foundryで提供中)。

 その他、43言語で最先端精度を実現した「MAI-Transcribe-1.5」、15を超える追加言語に対応した「MAI-Voice-2」とその高速版、GitHub向けに最適化した推論型コーディングモデル「MAI-Code-1」(CopilotとVisual Studio Codeで利用可能)が加わる。MAIモデルは「Fireworks AI」「Baseten」「OpenRouter」でも利用可能になる。

 統制面では、「Frontier Tuning」がコンプライアンスの境界内で強化学習を適用し、エージェントが実際のビジネスの仕組みを学習できるようにする(プライベートプレビュー)。「Agent 365 for local agents」は「Microsoft Entra」、「Microsoft Defender」、「Microsoft Purview」を単一のコントロールプレーンに統合し、ホスト場所やフレームワークを問わず組織全体のエージェントを可視化・統制・保護する。

 新しいマルチモデル対応のエージェント型セキュリティシステム「MDASH」(コードネーム)も、100を超えるエージェントでデータフローやビジネスロジック、攻撃チェーンを推論し、悪用可能なバグを発見する(参考記事)。

シリコンからクラウドまで 「自分の方法で」構築するフルスタック

 第2の柱は、開発者が主導権を維持したままフルスタックを構築できる環境だ。中核となる「Surface RTX Spark Dev Box」はNVIDIA RTX Sparkを採用し、最大1ペタフロップのAI演算性能と128GBの統合メモリを搭載する。これによりクラウドGPU(グラフィックス処理装置)インスタンスなしに、最大1200億パラメーターのLLM(大規模言語モデル)を最大100万トークンのコンテキストで実行できるという。2026年後半に米国のMicrosoft.comで提供開始予定だ。

 OSレイヤーでは、プレビュー提供中の「Microsoft Execution Containers」(MXC)により、開発者やIT管理者がエンタープライズレベルのサンドボックスをエージェント向けに作成でき、要件を一度定義すればWindowsがあらゆる実行場所で適用する。クラウドでは「hosted agents in Foundry Agent Service」が、セッションごとに即時起動するサンドボックスや分離された実行環境、永続的なメモリを大規模に提供する。

 開発ツールでは、プレビュー提供中の「GitHub Copilot app」がエージェント型開発をネイティブなデスクトップ環境で実現し、複数のエージェントセッションを並行してオーケストレーション(統合管理)しながら、変更をレビュー、CI、マージへと進められる。各セッションは「Git worktree」を使い、作業は個別に分離される。

 プラットフォームレイヤーでは「Project Rayfin」が「Microsoft Fabric」に管理可能なBackend as a Serviceをもたらす。「Azure HorizonDB」は「Microsoft Azure」のフルマネージド「PostgreSQL」サービスとして、社内テストで同等のセルフマネージド構成と比較して3倍以上のスループットを実現したという。

未来は開発者のもの 「Microsoft Discovery」と量子チップ「Majorana 2」

 第3の柱は、エージェントが研究開発と科学の成果そのものを変えていく展開だ。一般提供を開始した「Microsoft Discovery」は、Azure上に構築された研究者向けのエージェント型AIプラットフォーム。無償で利用可能なDiscoveryローカルアプリも発表した(プレビュー、GitHub Copilotアカウントがあれば利用可能)。

 次世代の量子コンピューティングチップ「Majorana 2」は、平均キュービット寿命が20秒(最長で1分に達する場合もある)で、前世代と比較して1000倍の信頼性を実現、手のひらに収まるサイズのチップで100万キュービットの実現に向けた道筋を示した。Microsoftはエージェント型AIの活用により、2029年までにスケーラブルな量子マシンの実現を目指すとしている。

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