企業の情報システム部門が「Microsoft 365」「Microsoft 365 Copilot」を社内で有効活用するためのノウハウを解説する本連載。今回は、Copilotライセンス不要になった「Copilot ノートブック」の活用法と注意点を紹介します。
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全国1億2300万人の「Microsoft 365」ユーザーの皆さん、「Microsoft 365 Copilot」(以下、Copilot)に関する「Copilot三段活用」って知っていますか? 知りませんよね。それもそのはずです。僕が今考えたので(笑)。
Copilot三段活用は、(1)「Microsoft 365 Copilot Chat」(以下、Copilot Chat)で考え、(2)「Microsoft 365 Copilot ページ」(以下、Copilot ページ)で磨き、(3)「Microsoft 365 Copilot ノートブック」(以下、Copilot ノートブック)で育てる、という考え方です。ちょっと何を言っているのか分からない……という声が聞こえてきそうですが、この記事を読み終える頃には理解してもらえると信じて疑いません。
ちょっと謎な冒頭から始まった今回ですが、Copilot三段活用の最後となるCopilot ノートブック(英語の正式名称は「Microsoft 365 Copilot Notebooks」)、使っていますか? これは関連するファイルやメール、会議、チャットなどをまとめて、それらを基にCopilotが分析や要約、文書作成などを支援する機能です(図1)。2025年5月ごろから利用できるようになり、当時は「『Google NotebookLM』の競合か!?」と話題になりました。
Copilot ノートブックは一般提供開始からこれまで、Copilotライセンスの割り当てがあるユーザーしか利用できませんでした。2026年6月中旬からは、Copilotライセンスがなくても、Microsoft 365の対象エディションのライセンスを持つユーザー(Copilot Chatを利用できるユーザー)であれば利用できるようになったのです。
今回は、より多くのユーザーが利用できるようになったCopilot ノートブックについて、あらためてお話しします。ご紹介するのは、Copilot ノートブックの使い方だけではありません。Copilotライセンスなしでどこまで使えるのかに加えて、IT管理者なら知っておきたいデータの保存先や、ユーザーのアカウント削除時に注意したいポイントまで解説します。
Copilot ノートブックは、ファイルやメール、会議、チャットなどのコンテンツを「ノートブック」にまとめることで、Copilotによるさまざまな作業支援を可能にする機能です(図2)。ここでのノートブックとは、関連する複数のコンテンツをまとめる場所を指します。
僕はCopilot ノートブックを説明する際、よくスクラップブックに例えます。スクラップブックの場合、新聞の切り抜きや写真、メモなどを貼り付けて、テーマごとにまとめて保管します。Copilot ノートブックでは、特定のテーマに関連するコンテンツをノートブックに集約しておけば、その内容を基にCopilotが仕事を支援してくれるのです。
作成したノートブックは、他のユーザーと共有して共同利用できます。つまり人のチームメンバーとCopilotが一緒になって、ノートブックの内容を充実させるイメージです。
Copilot ノートブックの利用は、4つのステップに大別できます。
ステップ1では、プロジェクトに関連するMicrosoft 365内のファイルや会議、メール、チャットなどのコンテンツをノートブックに追加します。ステップ2では、集約したコンテンツを基に、Copilotにプロジェクトに関する質問や相談をします。Copilotはノートブック内のコンテンツを分析し、概要を作成したり、質問に回答したりしてくれます。
ステップ3では、ノートブック内のコンテンツを基に、新しい文書や資料の下書きをCopilotに作成してもらいます。例えば顧客向けプレゼンテーション資料の下書きを生成してもらうことが可能です。Copilot Chatでも文書や資料の下書きは作成できますが、Copilot ノートブックでは、ノートブックに集約したコンテンツを基にする点が大きく異なります。
個人で利用する場合は、ステップ3まででも構いません。ステップ4では、プロジェクトメンバー間でノートブックを共有することで、個人ではなくチーム全体でCopilotを活用した共同作業が可能になります。
とはいえプロジェクトメンバーとノートブックを共有するのは、使い方に慣れるまでは少し不安に感じるかもしれません。まずは個人用途でCopilot ノートブックを使い始めるだけでも十分に効果を実感できるので、どんどん試してみましょう。自分の業務で今一番ホットなプロジェクトに関するノートブックを作成し、関連する資料をガンガン放り込んでみるところから始めてみてはいかがでしょうか。
ノートブックに集約したコンテンツとは別に、既にCopilot Chatでプロジェクトに関する質問や相談をしていると、その回答がプロジェクトにとって有益な内容になることがあります。その回答に自分の考えや補足を書き加えて、最終的にノートブックにも追加したい――。そんなときに便利なのがCopilot ページです。
Copilot ページ(英語の正式名称は「Microsoft 365 Copilot Pages」)は、Copilot ノートブックの約1年前の2024年後半に一般提供が始まった機能です。Copilotの回答を編集したり、他のユーザーと共有したりしながら内容を更新できる、対話型の編集スペースとして利用できます。
イメージとしては、Copilot ページは1枚のホワイトボード、Copilot ノートブックは、そのホワイトボードを含めて資料をまとめるプロジェクトルームといったところでしょうか。実際、Copilot Chatの回答をCopilot ページとして保存すれば、そのCopilot ページもCopilot ノートブックに追加できるのです(図3)。
プロジェクトに関するさまざまなコンテンツをノートブックに集約し、プロジェクトメンバーの間でブラッシュアップすることで、ノートブックの内容はより充実します。これにより、Copilotはノートブックの内容を基に、より質の高い回答を生成してくれるようになるのです。
先ほど、Copilot ノートブックはメンバーと共有して使うだけではなく、個人で利用しても十分に価値があるとお話ししました。その具体例として、僕の利用シーンを一つ紹介します。
Copilot ノートブックには「オーディオ概要」(オーディオの概要)という機能があります(図4)。これはノートブックの内容を基に、音声による概要を生成してくれる機能です。軽作業中にオーディオ概要を再生すれば、ポッドキャストのように聞くことができます。
僕はマルチタスクが苦手で、2つ以上のことを同時にこなすのが得意ではありません。そのため当初、オーディオ概要にあまり魅力を感じていませんでした。ところが、とあるシチュエーションでオーディオ概要がドンピシャにハマった。それが出張時の新幹線移動です。
新幹線でビジネスパーソンがノートPCを広げて作業しているのは、よく見かける光景ですよね。実は僕にはそれができません。揺れる乗り物の中で文字を読むと、乗り物酔いをしてしまうからです。本や印刷した資料でも、もちろん同じ。そこでCopilot ノートブックのオーディオ概要が活躍します。
出張先では、到着してすぐに顧客との会議が始まることがよくあります。「この資料、新幹線の中で読んでおいて」と気軽に言われても、乗り物酔いをする人にとっては困りますよね。そんなときは、出掛ける前にCopilot ノートブックに資料を放り込んでおきます。後は新幹線の中でスマートフォンにイヤフォンをつないで、Copilotにオーディオ概要を生成してもらい、再生するだけです。
以前はスマートフォン版のCopilotアプリケーションではオーディオ概要を利用できませんでした。執筆時点では、少なくとも「iPhone」用アプリケーションでは利用できるようになっています。
オーディオ概要は男女2人が掛け合う対談形式なので、1人が淡々と説明するよりも退屈しにくく、気になった部分だけ繰り返し聞けば理解も深まります。「出張前に急に資料が送られてきた」といった場合でも、オーディオ概要を聞くだけで資料の要点を把握できるので、ぜひ一度試してみることをお勧めします。
良いことばかりお話ししてきましたが、「追加料金なしで利用できるなら、何か制約があるのでは?」と思う人もいるでしょう。まずCopilotライセンスがない場合は、Copilot ノートブックで「Work IQ」による機能は利用できません。Work IQとは、メールやチャット、会議、文書といったMicrosoft 365内のコンテンツの内容を基に、Copilotが仕事の状況を理解し、より適切な回答を生成できるようにする仕組みです。
Copilot ノートブックは、ノートブックに追加したコンテンツを基に回答を生成します。Work IQを使えない場合、Microsoft 365内のデータ全体を横断的には活用できません。とはいえ必要なコンテンツをノートブックに追加しておけば、大きなデメリットにはならないでしょう。
この他にも、Copilot ノートブックで利用できる機能は、Copilotライセンスの有無によって違いがあります。ここでは、執筆時点で確認できた主な違いを3つ紹介します(図5)。
1つ目は、先ほど紹介したオーディオ概要です。Copilotライセンスがない場合、テキストによる概要は利用できますが、執筆時点ではオーディオ概要は利用できません。
2つ目は、先ほど紹介した4ステップのうちステップ3の、文書や資料の下書きを作成する機能です。この機能は、Copilotライセンスがないと利用できません。ノートブックの内容を基に「Word」「Excel」「PowerPoint」の下書きを作成したい場合は、別の方法を考える必要があります。
3つ目は「リサーチ ツール(Researcher)」を利用できない点です。リサーチ ツールは、通常のCopilot Chatよりも複雑なテーマを深く調査できるAIエージェントです。Copilot ノートブックでも利用できますが、それはCopilotライセンスがある場合に限られます。
以上が執筆時点で確認できた違いですが、今後仕様が変わる可能性もあります。Copilotライセンスが必要な機能を今すぐ利用したい場合は、Copilotライセンスの購入を検討してみてもよいでしょう。
Copilot ノートブックは個人にも、チームにも役立ちますし、Copilotライセンスがないユーザーでも利用できるようになったことで、利用者はさらに増えるのではないかと思います。これは企業や従業員の生産性向上という点では歓迎すべきことです。
IT管理者の立場では気を付けたいことがあります。それは、Copilot ノートブックのデータがどこに保存されるかということです。
Copilot ノートブックのデータは「SharePoint Embedded」に保存されます。あまり聞き慣れないかもしれませんが、SharePoint Embeddedは名前の通り「SharePoint」の仕組みを利用しています。Copilot ノートブックで使用した容量は、SharePointのストレージ容量としてカウントされるので、注意が必要です。
SharePoint(厳密にはMicrosoft 365が用意するクラウドサービス版の「SharePoint Online」)では、テナント全体のストレージ容量として、基本の1TBにライセンスユーザー1人当たり10GBが加算されます。決して潤沢とはいえません。例えば「Microsoft Teams」(以下、Teams)は、共有ファイルをSharePointに保存して管理するので、Teamsの利用が進むにつれてSharePointのストレージ容量が不足することがあります。
こうした状況で、CopilotライセンスがないユーザーにもCopilot ノートブックの利用が広がれば、SharePointの容量消費はさらに増える可能性があります。既に容量不足に悩んでいるIT管理者にとっては、頭を悩ます材料が増えてしまいますね。
データ保持の観点でも注意が必要です。IT管理者が退職したユーザーのアカウントを削除すると、データ保持期間を過ぎた後、そのユーザーが所有するノートブックも消えてしまいます。そのノートブックを複数ユーザーで共有していた場合でも同様です。せっかくみんなで育てたノートブックが、意図せず消えてしまう可能性があるのです。
その理由は、Copilot ノートブックのデータ保存の仕組みにあります。先ほどご説明した通り、Copilot ノートブックはSharePoint Embeddedにデータを保存します。より厳密には、SharePoint Embeddedの「ユーザー所有コンテナ」が実際の保存先となります。
ユーザー所有コンテナとは、特定のユーザーのアカウントにひも付く保存領域です。IT管理者がユーザーのアカウントを削除すると、そのユーザーにひも付いたユーザー所有コンテナも、データ保持期間を過ぎた後に削除されます。結果として、そこに保存したノートブックも消えてしまうのです。
Copilot ノートブックの保存先やデータ保持の仕組みが気になる方は、Microsoftの公式技術情報サイト「Microsoft Learn」の「Copilot ページとCopilot ノートブックストレージの概要」も確認しておきましょう。
いかがでしたでしょうか。Copilot三段活用としてご紹介した、Copilot ChatとCopilot ページ、Copilot ノートブック。ここまでお読みいただいて、それぞれの役割や関係性をご理解いただけたならうれしく思います。
特にCopilot ノートブックは、Copilotライセンスがなくても利用できるようになりましたので、まずはご自身の業務で試してみてはいかがでしょうか。良いと思ったら、ぜひ周りのメンバーにも共有してください。Copilot ノートブックをきっかけに、僕たち人のチームに“Copilotがメンバーとして加わる働き方”を体験できるかもしれませんね。
居酒屋店員、ミュージシャン、Webデザイナーという異色な経歴から、2009〜2016年まで従業員数数千名の企業のIT部門でSharePointの運営・サイト構築を経験。その後、数社転職を繰り返しつつも自分が推しのMicrosoft 365に関連する業務を継続中。個人活動としてMicrosoft 365関連のブログ(https://art-break.net/tech/)をメインにさまざまなアウトプット活動やITコミュニティー活動を実施し、それらの活動が評価されMicrosoft MVPを8年連続受賞。
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