トヨタが「6カ月もかかっていた高性能PCの調達」を不要に 何を変えたのか?丸1日を要したPCセットアップも10分に短縮

高性能PCの調達に約6カ月、研修初日のPCセットアップに丸1日――。トヨタ自動車はこうした課題をどう解消したのか。200人超のソフトウェアエンジニア向け研修を支える仕組みを見ていこう。

» 2026年07月27日 13時00分 公開
[@IT]

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 トヨタ自動車のパワートレーン電子開発部は、車両の駆動系を制御するソフトウェアの開発を担う部門だ。同部はエンジニア育成を担当する研修部門と連携し、ソフトウェアエンジニア向けの短期社内研修「ソフトウェアブートキャンプ」で利用するITシステムの整備を支援することになった。

 これまでソフトウェアブートキャンプの受講者は、各自に割り当てられたPCに20種類以上の開発ツールをインストールする必要があり、セットアップだけで丸1日を要していた。ソフトウェアブートキャンプで利用するPCは数百台に及び、それぞれ機種や性能、導入時期が異なることから、同じ手順で設定しても想定通りに動作しないことがあったという。

 ソフトウェアブートキャンプのインストラクターは、受講者ごとのPCの動作確認や設定の調整に時間を割く必要があり、カリキュラム運営以外の業務負荷が無視できなくなっていた。カリキュラムに必要なスペックを満たす高性能PCの調達には約6カ月かかるなど、PCの確保や管理もソフトウェアブートキャンプを運営する上での課題となっていた。

PC調達を不要に、開発ツールの準備は1日→10分 トヨタは何を変えた?

 こうした課題を解決するために、トヨタ自動車はAmazon Web Services(AWS)のクラウドサービスを利用し、開発ツールをすぐに利用できる状態で提供できる仕組みを整備した。これによりソフトウェアブートキャンプの準備の負担を大幅に削減したという。その具体的な方法を見ていこう。

 トヨタ自動車はAWSの技術支援チームと協議し、仮想デスクトップをクラウドサービスとして提供するDesktop as a Service(DaaS)の活用を検討。その実現手段として、複数回の概念実証(PoC)を経て、AWSの「Research and Engineering Studio」(RES)を採用した。

 オープンソースソフトウェアであるRESは、研究・開発向けの仮想デスクトップを提供、管理する機能をそろえる。トヨタ自動車は、このRESをAWSのクラウドサービスにデプロイ(配備)する運用形態である「Research and Engineering Studio on AWS」(RES on AWS)を選択し、自社で構築、運用することにした。

 RES on AWSを利用したDaaSの実現により、トヨタ自動車は高性能PCを受講者ごとに調達する必要がなくなった。これにより、ソフトウェアブートキャンプの準備期間が大幅に短縮。インストラクターは受講者ごとのPC設定や動作確認ではなく、カリキュラムの運営や技術指導に注力できるようになったという。

 ソフトウェアブートキャンプの受講者200人超は、仮想デスクトップを起動するだけで、約10分でソフトウェアブートキャンプに必要な開発ツールを利用できるようになった。従来のようにPCに開発ツールをインストールしたり、設定したりすることなく、約2時間のオリエンテーションを受ければ、すぐにカリキュラムに着手できる。

AWSの協力を得ながら自社で構築

 RES on AWSを自社で構築し、運用するために、トヨタ自動車はまずAWSサービスの基礎知識を習得した。その後、AWSの技術支援チームから技術的な助言を受けながら構築を進めた。構築に当たっては、AWSで利用する各種リソースの構成を定義ファイルとして記述し、自動的に構築できる「AWS CloudFormation」などのAWSサービスを活用した。

 仮想デスクトップのひな型となるAmazonマシンイメージ(AMI)を作成・管理する「Amazon EC2 Image Builder」も利用し、必要な開発ツールの組み合わせやバージョンを反映したAMIを一元管理できるようにした。受講者は、そのAMIから仮想デスクトップを起動するだけで、必要な開発ツールを利用できるようになった。

開発ツールを共通化 研修で学んだ知識をそのまま製品開発に

 トヨタ自動車はソフトウェアブートキャンプだけではなく、製品開発にもRES on AWSを展開する準備を進めている。ソフトウェアブートキャンプと製品開発との間で、利用する開発ツールや設定を共通化することで、ソフトウェアエンジニアは学んだ内容をそのまま実務に生かせるようになる。同社はこの仕組みによって、人材育成と製品開発の両面でクラウドサービス活用の効果を最大化したい考えだ。AWSの国内法人であるアマゾン ウェブ サービス ジャパンは2026年6月17日に、本事例を公開した。

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