開発を進める上で欠かせないものとして、宮本氏は川邊健太郎氏からのアドバイスを挙げる。川邊氏は2026年6月までLINEヤフーの代表取締役会長を務め、退任後はAIを活用して1人で事業を立ち上げる「AIソロプレナー」として活動している。
“ハロプロ好き”を自称する川邊氏は、ハロプロ関連のイベントをたびたび訪れているという。宮本氏は、その際に川邊氏から開発に関するアドバイスを受けてきたと説明する。そうしたアドバイスの中でも、宮本氏が現在の開発で大切にしていることが3つある。
1つ目は、AIには代替できないものがあることを意識することだ。宮本氏は、ハロプロのアイドルグループ「モーニング娘。'26」のメンバーである弓桁朱琴(ゆみげた・あこ)氏が、同じくメンバーの小田さくら氏について語ったインタビュー記事の内容を見て、人間の表現はAIで完全には再現できないと感じたという。AIにソースコード生成を任せる一方で、何を作るかを決め、設計し、指示を出し、成果物を確認するのは自身の役割だと説明する。
2つ目は、セキュリティを意識することだ。API(アプリケーションプログラミングインタフェース)の利用に必要な認証用のキーなど、外部サービスへのアクセスに使う情報をAIとのチャットに入力しないことを徹底する他、開発した後のセキュリティレビューも欠かさないという。
3つ目は、1つの成果物を複数のAIにレビューさせることだ。宮本氏は、同じ成果物をChatGPTとClaudeの両方にレビューさせているという。それぞれが別の問題を指摘することがあるといい、1つの成果物を異なる観点から確認している。
開発に取り組む中で、宮本氏はAmazon Web Services(以下、AWS)の同名クラウドサービス群にも興味を持つようになった。AWSを使ったシステム設計に関する資格「AWS Certified Solutions Architect - Associate」(以下、AWS SAA)の存在を知り、調べるようになったという。
宮本氏は、オンライン学習サービス「Udemy」に登録して、AWS SAAの取得に向けた学習を始めた。学習内容はCDN(コンテンツデリバリーネットワーク)サービスの「Amazon CloudFront」と、オブジェクトストレージサービス「Amazon S3」(Amazon Simple Storage Service)を組み合わせた構成などだ。
障害発生時に別のシステムに切り替えるフェイルオーバーの仕組みや、リレーショナルデータベースと非リレーショナルデータベースの使い分けについても学んだ。学習を通じて、こうしたITインフラの仕組みについて「めっっちゃおもろいやん」「大好きすぎる」と感じるようになったという。
プログラミング経験がない人でも、AIを使って1人で開発できるようになったことについて「すごい時代」になったと宮本氏は述べる。一方でセキュリティの脅威や従量課金による想定外のコストといった「怖いこともあります」とも指摘する。
自身を「まだまだ知識不足」「自分の能力はひよこ以下」と評する宮本氏は、こうしたリスクも踏まえて、今後もAI活用に必要な学習を続ける考えだ。「まずはAWS SAA、必ず取ります」と意気込む。
宮本氏は自らの成果について、周囲の専門家の支援があってこそのものだと説明する。それでもプログラミング未経験者が、AIを使って実際にシステムを形にしたという事実は揺るがない。手を動かす作業をAIが担えるようになる中、情報システム担当者やエンジニアにとっては、AIを使って何を実現するのかを決め、その成果をどう生かすのかを考えるといった、“人間ならでは”の役割がこれまで以上に重要になりそうだ。
ITインフラ専門家の私でも、もうAIには勝てない――「Active Directory」障害対応をAIに丸ごと任せてみた結果
JR西日本は“熟練者が手書きするしかなかった車両作業計画”をAIでどう自動化するのか?
開発工数見積もりの「負担が重い」をAIで解消へ 明治安田はどう実現?Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.