アイドルグループJuice=Juiceの元メンバー宮本佳林氏が、AIを使った開発に取り組み始めた。プログラミング未経験から、自身の生配信企画を支えるシステムを自作するまでに至った。その過程で何を学んだのか。
アイドルプロジェクト「ハロー!プロジェクト」(以下、ハロプロ)のアイドルグループ「Juice=Juice」に2020年まで所属し、現在はソロアイドルとして活動する宮本佳林氏。2026年8月3日、公式ブログへの投稿で、AIを活用した開発に取り組むようになった背景を明かした。
「プログラミングの経験はゼロ」だと明かす宮本氏は、どのようないきさつで開発に取り組むようになったのか。SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)で関心を集めた“生配信システム”は、どのように開発したのか。開発に取り組む上で心掛けていることとは何か。ブログの内容を踏まえて整理する(本文中、かぎかっこで示した宮本氏のコメントはブログ原文のまま引用)。
「こんな音楽アプリがあればみんな笑顔になれるのに」――。「妄想、空想が大好き」だという宮本氏は、身近にはないけれど、あったらいいと思うアプリケーションを自分で作ってみたいと考え、開発に取り組み始めた。
当時、OpenAIの対話型AIサービス「ChatGPT」とチャットを繰り返していた宮本氏は、チャットでソースコードを書かせる方法で開発に着手。「Node.js」(JavaScriptの実行環境)を使って、実際に動作するプログラムを完成させるまでになった。
ChatGPTが出力したソースコードに修正が必要になった際、その一部だけを自力で直すことは「私には無理」だったと宮本氏は振り返る。そのため「いや!全文書き直せ」とChatGPTに指示し、ソースコード全体を再生成させながら開発を進めたという。
開発について学ぶ上で転機となったのが、電子チケットサービスを手掛けるplaygroundのシステムに興味を持ったことだ。
宮本氏は、ハロプロのメンバーや卒業生(元メンバー)らが出演するイベントに参加した際、デジタル庁のステージやブースを訪れた。そこでハロプロや、卒業生らのファンクラブ「M-line club」も利用する、playgroundの電子チケットの顔認証を試した。
顔認証の処理の速さに感心した宮本氏は「これってこういう構成で組んでるのかな?」とシステムの中身に興味を持ち、playgroundの担当者に質問した。担当者はこのことに「かなり驚いて」いた様子だったと宮本氏は説明する。これをきっかけに、同氏は同社のオフィスに招かれた。
オフィスでは、代表取締役である伊藤圭史氏らから、Webアプリケーション開発について3時間強にわたって指導を受けた。このときに学んだのが、Anysphereのソースコードエディタ「Cursor」と、GitHubの同名ソースコード共有サービス、Vercelの同名Webアプリケーション公開サービスを使った開発方法だったという。
この方法で最初に開発したのは、単純なメモアプリケーションだった。その後、学んだことをまとめるためのノートを作りながら、開発についての理解を深めていった。「playgroundさんとの出会いがなければ今の宮本はいません」と宮本氏は述べる。
開発を続ける中で、宮本氏はAnthropicの生成AIサービス「Claude」を利用するようになり、さらに同社のAIコーディングツール「Claude Code」も使い始めた。Claude Codeの活用で、開発速度が「圧倒的に」速くなったと同氏は説明する。
アイドル活動の合間に開発を効率的に進めるために、宮本氏は開発方法を工夫している。具体的には移動中の時間にスマートフォンを使い、作りたい機能や動作などを細かく決め、文章を構造化して記述できるMarkdown形式のファイル(以下、MDファイル)として仕様書を作成。帰宅後にPCを使い、そのMDファイルをAIに読み込ませて開発しているという。
宮本氏は、バイブコーディングによって複数のシステムを開発した。中でも動画共有サイト「YouTube」での生配信向けに開発した、視聴者参加型企画を支えるシステムは、SNSを中心に広く関心を集めた。2026年7月31日に約10時間にわたって実施したこの生配信では、新曲『HANAKIN』のミュージックビデオ(以下、MV)を、同氏の手元にあるものだけで再現する企画に取り組んだ(動画)。
システムには、「X」へのCD購入報告や応援ポストの数を取得する機能を実装した。その数に応じて、MVの再現に使うための衣装やグッズ、映像素材などを順次使用可能にする仕組みも用意した。元のMVと、再現した映像をAIに比較させて、再現度を自動採点する機能も組み込んだ。
実装にはClaude Codeを使用した。配信中にシステムが動かなくなる事態に備えて、各種自動処理を手動でも動かせるようにしたという。「生配信は一発勝負」なので、動かなくなることを前提に開発したと宮本氏は説明する。
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